FMEA(えふえむいーえい)情報マネジメント用語辞典

failure mode and effects analysis / 故障モード・影響解析 / エフミア / エフミー

» 2009年06月17日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 システムにおける重大な事故・危険の未然防止策を検討するため、設計段階でシステムを構成する部分(サブシステム)の故障モードを一覧表に列記し、それらが生起した場合に上位システムが受ける影響をランク付けする手法のこと。

 FMEAは、サブシステムの単一故障(不具合、機能不全、失敗)が全体システムの信頼性・保全性・安全性に与える影響を定性的に解析するもので、導き出された重要度に基づいて優先順位を定め、事前対策を施す。重大な事故につながる故障を検出できるため、製品設計・工程設計の段階でよく用いられ、品質管理での改善活動でも活用される。

 製品設計で実施するFMEAを設計FMEA(デザインFMEA、DFMEA)、製造業の生産工程などの工程設計に適用するものを工程FMEA(プロセスFMEA、PFMEA)という。ISO 9004やISO/TS 16949などの国際規格では、FMEAの活用を推奨あるいは実行を要求項目として挙げている。

 FMEAの手順は、おおよそ以下のとおりである。

解析対象の選択 対象システムの内容を把握し、その構成要素のどのレベルをFMEAの対象とするかを決定する。ブロック図を用いる場合が多い。

故障モードの列挙する システムに詳しい3〜5人程度のメンバーを集め、故障モードを挙げていく。その原因となる事象や故障メカニズムを示せれば、より理解が深まる。

故障モードが上位システムに及ぼす影響解析 故障モードが上位システムに及ぼす影響を検討し、故障等級などを与えて重要度をの順位付けを行う。影響度・発生頻度・検出度の指標を用いてリスク優先数(RPN)を算定する方法もある(FMECA)。

 これらの項目・値は、表形式のFMEAワークシートにまとめ、最後に導き出された重要度に応じて、優先順位を定めて原因を特定したり、対策を施したりしていくことになる。

 FMEAの手順やFMEAワークシートの項目については、国際電気標準会議規格「IEC 60812」が定めている。これはガイド規格であり、用途や目的によって適用分野ごとに独自の手順やシート、重要度指標が用いられる。

アイテム 機能 故障モード 推定原因 故障の影響 検知方法 故障等級 特記事項
サブシステム システム
                 
標準的なFMEAシートのイメージ

 FMEAの原型は、米国の軍需産業で始まったと考えられている。その名称は、1949年に発行された米軍規格「MIL-P-1629 Procedure for Performing a Failure Mode, Effects and Critical Analysis」にすでに見られる。1950年代、米国の航空機メーカーであるグラマンがジェット戦闘機の操縦システムの設計を行うに当たり、従来の機械系に加えて電子・電気系などを含む複雑な機構となり、経験に基づく信頼性評価が難しくなったことから、体系的なFMEAを展開した。これらの活動が1960年代になって公表されるようになったこともあって民間でもFMEAが知られるようになり、1967年には米国自動車技術者協会が「SAE-ARP-926」を刊行した。これをNASA(米国航空宇宙局)が採用すると、自動車、電気・電子、産業機械などの多くの産業でFMEAが活用されるようになった。

 ソフトウェア開発にFMEAを適用する動きもあるが、物理法則という制約事項があり、経験が適用しやすいハードウェアと違い、そのまま適用するのは困難だという意見もある。ただし、既存ソフトウェアに機能を追加・改変する保守開発や派生開発では既存部分との整合性といった制約条件があることから適用の試みが行われている。

 なお、JIS(日本工業規格)では「フォールトモード・影響解析=fault modes and effects analysis」の語を使っている。

参考文献

▼『中小企業に役立つFMEA実践ガイド』 大津亘=著/日本規格協会/2009年5月

▼『FMEAの基礎――故障モード影響解析』 ロビン・E・マクダモット、レイモンド・J・ミクラク、マイケル・R・ビューレガード=著/今井義男=訳/日本規格協会/2003年10月(『The Basics of FMEA』の邦訳)

▼『設計開発の品質マネジメント』 久米均=著/日科技連出版社/1999年9月


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