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» 2009年10月28日 12時00分 UPDATE

グリーンSCM入門(1):環境と収益を、連携力で両立するグリーンSCM (1/2)

世界的な環境意識の高まりを受けて、SCMに「環境負荷低減」という指標を取り入れた「グリーンSCM」が、いま着実に浸透しつつある。では従来のSCMに対して、具体的には何が違うのだろうか?

[石川 和幸,@IT]

経済効率一辺倒だったSCMに、「環境」という指標を

 近年、世界的な環境意識の高まりを受けて、企業における環境負荷低減の取り組みが非常に重視されるようになりました。特に現在、クローズアップされているのが地球温暖化問題です。1997年に批准された京都議定書により、先進国全体の温室効果ガスの排出量を「2008年から2012年の間に、1990年比で5%削減」することが定められ、日本には「1990年比で6%削減」する目標が割り当てられました。

 これを受けて、日本政府は目標達成計画の実行に乗り出し、先進的な企業は、環境負荷低減のためのコストを最初から計上する「環境会計」を導入するなど、環境活動を加速させてきました。

 一方で、消費者の環境意識も着実に向上してきました。食品の輸送距離に応じてCO2排出量を測り、製品に表示する「フードマイレージ」という取り組みに象徴されるように、「値段が少し高くとも、環境に優しい商品を選ぶ」など、企業の「環境意識」で企業姿勢を評価する傾向が年々強まってきたのです。そしていまでは多くの企業が、環境負荷低減活動をCSRの一環として認識するに至っています。

 「グリーンSCM」も、こうした流れの中で登場してきた概念です。いままで「経済効率」一辺倒だったSCMに「グリーン」、すなわち「環境」という指標を取り入れて、経済効率と環境負荷低減を両立させようという考え方です。

 では具体的には何を目指す取り組みなのでしょうか? まずSCMを簡単におさらいすると、『調達、製造、輸送、販売を担う各事業者の間を、原材料や製品などの「モノ」が流れ、それとは逆方向に、発注などの「情報」が流れる仕組み(サプライチェーン)を築き、各事業者を連携させることで、モノと情報の流れを統制し、利益、効率を追求する経営手法』のことです。

 ここに「環境」という指標を加えるとどうなるのか――グリーンSCMにはまだ一般に了解された定義がないので、ここで私が整理してみましょう。

『グリーンSCMとは、経済効率を追求するSCMという活動に、「環境負荷低減」という指標を取り込み、調達、製造、輸送、販売および、回収・廃棄に至るまでのサプライチェーンの統制活動を通じて、可能な限り環境負荷を低減し、CO2をはじめとする温室効果ガス削減を目指す取り組み』


 いかがでしょう? 通常のSCMとは、2つ、異なる点があることが分かるでしょうか? 1つは経済効率と環境負荷低減の両方を追求すること、もう1つは調達・製造・輸送・販売に「回収・廃棄」が加わり、サプライチェーンを“1つの輪”と見なしていることです。この2つのポイントが、グリーンSCMならではの施策を成立させる前提条件となります。

3Rアプローチによるさまざまな施策

 では、グリーンSCMの具体策にはどんなものがあるのでしょうか? その施策立案については、日本政府が打ち出している「循環型社会形成」のカギになるといわれている「3R(Reduce・Reuse・Recycle)」アプローチが軸となります。

  • Reduce(減らす)――原材料や電気などの使用量を減らす、危険物を減らす、輸送回数を減らすなど
  • Reuse(再利用する)――梱包材や荷物を積むパレットなどを何度も使い回すなど
  • Recycle(再生する)――廃棄された製品を回収し、部分的に原材料として利用し再生部品を作るなど

 調達、製造、輸送、販売、回収というサプライチェーンの各プロセスで、これらのアプローチによるさまざまな施策が実施されているのです。具体例をいくつか紹介しましょう。

 まず調達領域では「グリーン購買」という施策があります。環境負荷の高い原材料を使った部材は購入しない、もしくは購入量を減らすという取り組みです。製造領域では、工場内で出る廃棄物を何らかの形で再利用する「ごみゼロ工場」「ゼロエミッション」などの活動が行われています。

 輸送領域では、包装・梱包材の製造/廃棄に伴う環境負荷を減らすために、簡易包装を採用したり、包装なしで製品を運べて繰り返し使えるパレットの開発などが行われています。

 また、輸送手段をCO2排出量の多い航空機やトラックから、少ないとされている船や鉄道に切り替える「モーダルシフト」、空荷状態での無駄な運行を減らすために、トラックの輸送ルートを工夫する「帰り車の活用」、最も無駄が少ない輸送経路を設定する「最適ルート策定」などが盛んに行われています。

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