特別企画:ROI最大化を実現するCPM きめ細かな管理・統制が、ROI最大化の秘けつ(1/3 ページ)

先の見通しが立てにくい市場環境にあるいま、企業が経営の継続的改善を図るためにはどんな取り組みが必要なのか――ROI最大化に貢献するとして、いま注目されているCPMについて、自社でも支援製品をリリースしている日本インフォアの笹俊文氏に話を聞いた。

» 2009年11月02日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]

最小のコストで、最大の投資対効果を

 市場環境が目まぐるしく変わる近年、企業には変化に対応する経営のスピードと、戦略を確実に遂行するマネジメント能力が求められている。しかし、ビジネスのグローバル化や業務の複雑化などを受けて、経営層が現場の状況をつぶさに把握し、迅速に戦略の軌道修正を図ることが年々難しくなっている。これにより、戦略と実践の間には、どうしてもギャップが生じてしまう――。

 こうした課題を解決するとして、いま注目を集めているのが、「あらかじめ定めた KPI(重要業績評価指標)を通じて、業績を常に監視し、より早い段階で、異常や問題を発見し、対策を講じる」という概念 、CPM(Corporate Performance Management)だ。

 市場調査会社大手の米ガートナーでは、CPMを次のように定義している。『企業がビジネス・パフォーマンスを測定、監視、管理するためのプロセス、方法論、評価尺度、テクノロジを包含した概念』――具体的には、「方法論」としてBSC(バランスト・スコアカード)EVA(経済的付加価値)などを用い、財務面・非財務面の定量的・定性的な「評価尺度」を設け、「プロセス」として予算編成、予測、目標設定を行い、BIなどの「テクノロジ」を使って、業務実績を評価・分析する。こうした取り組み全体を包含する概念がCPMというわけだ。

日本インフォア インダストリーソリューション・ビジネスコンサルティング本部 執行役員 本部長 笹俊文氏 日本インフォア インダストリーソリューション・ビジネスコンサルティング本部 執行役員 本部長 笹俊文氏

 では、取り組みのポイントはどこにあるのだろうか。CPM製品群「Infor PM 10」を販売している日本インフォアのインダストリーソリューション・ビジネスコンサルティング本部 執行役員 本部長の笹俊文氏は、「経営層と現場層が頻繁にコミュニケーションを図り、市場の状況に詳しい現場の意見を取り入れることと、全社目標を全関係者が共有すること」と解説する。

 一般に、経営層が自社の業績をチェックする際は、経理部などが各拠点から業務実績データを収集し、それをまとめたレポートを使う。しかし問題は、レポートをまとめる経営企画部や経理部、それを見る経営層が、“現場の肌感覚”に疎いケースが多いことだ。

 「多くの場合、経営企画部などは市場の状況を加味することなく、報告された数値だけをまとめているし、経営層もその数値をベースに、次の目標予算や戦略を立てている。しかし、真に有効な戦略、正確な業績見通しを立てるためには、客足の流れなど、ナマの市場の傾向を加味して判断しなければならない。多くの場合、この点に問題を抱えているほか、経理部が実績をまとめる際のタイムラグの問題も重なり、どうしても現場の実情とかい離した、一方通行の戦略になりがちだった」(笹氏)

 そこでCPMは、市場に対する現場層の見解を取り入れながら、目標予算や戦略を立案する。具体的には、実績値とともに、次期の現実的な業績見通しを報告させ、それをまとめたものを基に、経営層が次の戦略と目標予算を立てる。そのうえで、管理単位の粒度に合わせてブレークダウンした戦略・目標予算と、その遂行に最適なリソースとコストを割り当てる。

 「すなわち、ただ一方的に戦略や目標予算を言い渡すのではなく、市場に詳しい現場層の考えを取り込み、トップダウンとボトムアップのバランスの取れた、より現実的な戦略・目標予算立案、無駄のないコスト配分を行おうというわけだ」(笹氏)

詳細なKPIで全社目標の真の狙いを共有

 もう1つのポイント、「全社目標を全関係者が共有すること」については、KPIがその実現手段となる。具体的には、販売実績などの定量的なKPIの設定はもちろん、ブランド力を測るような定性的な指標も、できる限り定量的指標に落とし込む。そのうえで、「AというKPIは、BというKPIにも影響する」といったKPI同士の因果関係を明確化し、全社目標を基点に、全KPIを階層的に定義する。これにより、全社的な目標とその実現のために各管理単位が「すべきこと」「やってはいけないこと」を、全組織が理解・共有できる体制を整える。

 例えば、小売業の場合、「CS向上」を全社目標としているケースが多い。これは、継続的な利益向上を図るうえで、生涯価値の高いリピーターの存在がカギとなるためだ。しかし、現場が仮に「売上実績さえ伸ばせばよい」と考えていれば、サービスレベルが落ち、リピーターは確実に失われてしまう。

 そこでCPMでは、全社目標達成に適切なKPIを設定し、詳細に定義することにより、現場層に全社戦略の狙いを理解してもらうとともに、全組織の動きを1つに収束させるわけだ。

 「営利企業である以上、全社目標は必ず利益向上に結び付いている。そこでCPMでは、現実的な戦略・目標予算を立て、それに最適な、無駄のないリソース・コスト配分を行ったうえで、KPIを通じて目標の“真の狙い”を共有し、全組織を確実にリードする。こうした点が、CPMが“最小の投資で、最大の効果を狙う手法”などと形容されるゆえんだろう」(笹氏)

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