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» 2010年01月18日 00時00分 UPDATE

情報システム用語事典:単品管理(たんぴんかんり)

tanpin kanri /item-by-item management / たんぴんかんり

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 小売業における売上最大化/在庫最小化手法で、商品の発注数量や陳列方法について単品単位で仮説を立て、実際の販売結果で検証を行い、仮説の見直しを行うというサイクルを短期に回していく方法のこと。

 コンビニエンスストア・チェーンのセブン?イレブン・ジャパンで生み出され、実践されているデマンチェーン型の経営体系として知られるもので、その独自性から海外でも「tanpin kanri」の名で紹介される。

 単品管理とは第一義的には、商品の売れ行きを“単品”ごとに見極めることで、売れ筋商品が品切れを起こさないようにするとともに、死に筋商品を売り場・在庫から排除する商品管理技法をいう。

 例えば、ワイシャツであれば「色」や「デザイン」が気に入ったとしても「首周り」「袖丈」が合わなければ、購買対象とならない。「缶コーヒー 無糖タイプ」が欲しい買い物客にとって「缶コーヒー 加糖タイプ」は代用品にならない。このような状況において、小売店側の商品管理が「ワイシャツ」「缶コーヒー」のレベルでは、売り逃しに気付くことさえできない。

 すなわち、消費者の商品選択基準が「個別ブランド」「色やサイズ」「鮮度」などの詳細な項目に及ぶのであれば、そのレベルで商品管理を行うことが不可欠となる。そこで顧客が購買する際の単位=単品で品ぞろえや商品補充を考えていくのが、単品管理の基本的な発想である。

 売り逃し防止と表裏一体の関係にあるのが、“死に筋”排除である。死に筋とは(あまり)売れない商品をいう。特にコンビニエンスストアのような小規模店舗では、売れない商品が売り場を占拠していると、売るべき商品を置く場所がなくなってしまう。従って単品レベルで売れ筋商品・死に筋商品を識別することが求められる。

 他方、商品の売れる/売れないは、単純に商品特性だけで決まるものではなく、売り場における陳列位置や陳列量によって変わってくる。そこで単品管理では品ぞろえや発注数量に加えて、どのような売り場を作るかも同時に考える必要がある。もちろん店舗立地・客層といった店自体の特性、季節や天候などの外部条件も大きなファクターとなる。

 ここから単品管理は単純な販売動向管理から、売れ行きに影響を与える諸条件を考慮に入れて、「この商品(新製品含む)は自店でどれだけ売れるか」「どうすればより売れるか」について仮説を立て、それに基づいて商品の発注・仕入れ、売り場づくりを行い、実際の販売結果を検証するという“仮説?検証”を繰り返すという人間中心型の継続的改善技法へと進化・発展した。

 販売の現場では商品を単品で管理しなければならないという考え方はある意味で当たり前のもので、非常に古くからある。この項でいう単品管理の原型は「ユニットコントロール」である。これは商品管理を金額ではなく数量で行うことを説く管理概念で、その日本語訳の1つが単品管理であった。

 初期の単品管理は、手作業で在庫を数えて商品の動きを確認するという作業で、1960年代に大西衣料(現・大西)、ベニマル(現・ヨークベニマル)、イトーヨーカ堂などで行われていた。イトーヨーカ堂は日本の小売業としては最も早い1967年にコンピュータを導入したが、それに先立つ1965年に最小在庫管理単位(SKU)として「単品」概念を導入している。これがその後、コンビニエンスストア・チェーンのセブン?イレブン・ジャパンで需要駆動型オペレーションの技法へと洗練され、さらには“自己革新”を絶えず行うための経営思想体系へと進化した。

 セブン?イレブン・ジャパンは1973年、イトーヨーカ堂の子会社 ヨークセブンとして設立され、米国サウスランド(現・7-Eleven, Inc.)からライセンスを受けてコンビニエンスストア事業に乗り出した。サウスランドのマニュアルは会計・契約の部分以外は日本の風土には合わず、セブン?イレブン・ジャパンは手探りで業態を模索することになるが、このときに活用されたのが「単品管理」だった。

 東京・豊洲に開店したセブン?イレブンの1号店は、売り場面積24坪に3500アイテムを扱っており、店頭には各商品を少量ずつしか置けなかった。売れた分を補充しようにも当時はまだ納品ロットが大きく、バックヤードを空ける(回転率が低い商品がはける)まで売れる商品の発注ができないという事態に陥った。そこで手作業で単品ごとの販売集計を日次で行って死に筋を見付け、商品構成を変えていき、創業期の危機を乗り越えたという。

 1981年、イトーヨーカ堂は中間決算で減益(翌年は通期で減益)となり、「業務改革」に着手する。大掛かりな組織変更を含む改革が行われたが、その中心テーマは「死に筋」商品の把握と排除であり、ここに単品管理は「業務改革」の中枢に据えられる。この段階で単品管理は、「売れる条件づくり」「毎日の発注・売場の微調整」「問題の把握と解決」「仕組みの改革」「研究課題」「マネジメント」の6つの要素からなると説明されている。

 1983年、イトーヨーカ堂に先駆けてPOSシステムを導入したセブン?イレブンでは、POSデータに頼りに過ぎないために“仮説?検証”を強調するようになる。POSシステムは単品管理を強力に支援するツールだが、あくまでも過去データを表示するだけのものであり、これから売れるものを教えてくれるものではない。セブン?イレブン・ジャパン社長(当時)だった鈴木敏文は、「仮説?検証」「考えること」の重要性を今日に至るまで繰り返し説いている。

 単品管理の実務は、非常に手間の掛かる作業である。小規模店舗であるコンビニエンスストアでさえ商品アイテムは2500?3000に及び、発注担当者が1人ではごく一部分の商品にしか対応できない。そこでイトーヨーカ堂やセブン?イレブンでは店長(オーナー)やフロアマネージャだけではなく、従業員(パートやアルバイトを含む)も発注作業を分担する「全員発注」が実践されている。小売業にとって発注は生命線である。これをパート社員やアルバイトに任せるためには非正規従業員にも教育(OJT)が必要になるが、“仮説?検証”は人材育成の方法論でもある。

 このような分権化は、米国生まれの総合スーパー(GMS)やコンビニエンスストアの中央集権的なオペレーションとはまったく逆のアプローチである。セブン?イレブン・ジャパンは1990年代になって経営不振に陥った米国サウスランドを買収、支援に乗り出したが、日本の風土が生み出した「tanpin kanri」を逆移植し、成果を挙げているという。

参考文献

▼『商売で大事なことは全部セブン?イレブンで学んだ』 岩本浩治=著/商業界/2005年7月

▼『イトーヨーカ堂顧客満足の設計図??仮説・検証にもとづく売り場づくり』 邊見敏江=著/ダイヤモンド/2008年11月

▼『単品管理入門』 宮崎文明=著/商業界/2006年3月

▼『タンピンカンリ??セブン?イレブンにみるIT革命の戦略的進化論』 緒方知行=著/イーストプレス/2000年9月

▼『単品管理マニュアル??セブン?イレブンetc大手コンビニにみる』 国友隆一=著/ぱる出版/1998年2月

▼『流通近代化ハンドブック』 三上富三郎、宇野政雄=編著/日刊工業新聞社/1970年10月

▼『営業活動の生産性分析』 チャールズ・H・セビン=著/江尻弘=訳/鹿島研究所出版会/1967年10月(『Marketing Productivity Analysis』の邦訳)

▼『マーチャンダイジング その1??仕入れ政策と売価政策』 清水昌=著/同文館出版/1965年11月


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