“業務視点の機能強化”で、仮想環境の運用を効率化──日立製作所特集:仮想環境はここまで管理できる(1)(1/2 ページ)

仮想化環境ではシステム利活用の自由度が増大するだけに、運用管理やガバナンスの巧拙の影響が大きく出る。それを受けて、運用管理ツールベンダも製品強化に力を入れている。本特集では各ベンダ製品の強化内容を具体的にリポートする。

» 2010年01月25日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]

複雑化するシステムに適切な運用管理を

 仮想化技術は確実に日本のユーザーにも浸透しつつある。その結果、当面は物理/仮想環境が混在し、システムが複雑化することが予想される。こうした中、運用管理ツールのトップベンダである日立製作所は、現行の「JP1 Version 9」では次の製品が仮想環境で利用できる機能を用意している。

  • サーバ稼働管理製品「JP1/Performance Management」「JP1/Performance Management」
  • 統合管理製品「JP1/Integrated Management」「JP1/Integrated Management」
  • ジョブ管理製品「JP1/Automatic Job Management System 3」「JP1/Automatic Job Management System 3」
  • バックアップ管理製品「JP1/VERITAS」「JP1/VERITAS」

 以下で、順次紹介していこう。

サーバ稼働管理製品「JP1/Performance Management」

 仮想化技術導入の最大の目的は、システムに潜んでいる遊休リソースの有効活用と、コスト削減を軸とした投資対効果の最大化にある。

 仮想化ソフトウェアを使うことにより、自動/手動で最適なリソース配分が可能になるはずだが、リソース配分を変えるということは「基準どおりのパフォーマンスが出ない」症状を招くリスクもある。そこで従来以上にパフォーマンス監視が重要になる。

ALT 図1 「JP1/Performance Management」の画面イメージ。物理/仮想サーバのCPUリソース使用率、各種メッセージを1つの監視画面で視覚的に把握可能とした
ALT 図2 各物理/仮想サーバのCPU使用率を一元的に把握可能とし、適切なパフォーマンスチューニングを支援する

 日立ではサーバ稼働管理製品「JP1/Performance Management」の機能を強化し、複数の物理/仮想サーバにおけるリソースの使用状況を、グラフを使ってひと目で把握できるようにしている。

 特徴は、物理/仮想が混在したマルチプラットフォームかつ複数ベンダの製品が混在するヘテロ環境でも、エージェントレスで監視できることだ。

 ビジネスの状況に応じて柔軟かつ手軽にシステム構成を変更できることが仮想化のメリットの1つだが、物理サーバや仮想サーバにいちいちエージェントをインストールしていたら作業負荷が増大してしまう。これにより、管理者の作業負荷を軽減しながら、状況に応じた適切なパフォーマンスチューニングとリソース最適化を支援するという。

統合管理製品「JP1/Integrated Management」

 仮想環境では仮想サーバや仮想ストレージなど管理対象が増え、それらの関係が入り乱れることになりやすい。そのため、「障害発生個所の特定が難しい」「障害対応によるほかの業務システムへの影響範囲が把握しにくい」といった問題が起こる。

ALT 図3 構成情報の管理画面イメージ。どの物理サーバに、どの仮想サーバ、業務システムがひも付いているか、構成情報をツリー状に表示する。関連性のあるものはオレンジ色でマーキングされており、影響範囲をひと目で把握できる
ALT 図4 業務システムまで含めて、物理/仮想サーバの関連性を把握できるため、万一の障害時も影響範囲も迅速に把握できる

 「JP1/Integrated Management」は、各仮想化ソフトウェアの専用管理ツールと連携し、専用管理ツールの管理下にある仮想サーバと、その上で稼働している業務システム、その仮想マシンが存在している物理サーバの情報を自動的に取得、それぞれを関連付けて管理できる。

 これにより、「Xの業務システムはYの仮想マシンで動いており、それはZの物理サーバのリソースを使っている」という情報をGUIで把握することができる。

 システムの構成変更についても同様だ。仮想サーバの追加や、ライブマイグレーション/VMotionといった仮想サーバの動的変化が発生した際も、「JP1/Integrated Management」が各仮想化ソフトウェアの専用管理ツールと連携して、業務システム、仮想マシン、物理サーバの関連性を自動的に取得する。これにより、構成変更が生じても管理作業の負荷を増やすことなくシステムの監視を継続できる。

 特徴は、物理/仮想サーバの関係を示すだけではなく、「ある物理サーバの障害が、どの仮想サーバ上のどの業務システムにまで影響するのか」という障害のレベルに基づいて影響度を“色”で示せることだ。例えば、物理サーバAで障害が起こった場合、物理サーバAと、そこにひも付いている仮想マシン群、その上で稼働する各業務システムを黄色で示すといった具合に、影響範囲をツリー上でビジュアルに確認することができる。

 これによって一番大切な"業務への影響範囲"を把握できるほか、影響範囲として表示された部分をクリックすると、その障害となったイベントを表示するため、何が直接の障害原因なのか、追究の手掛かりを得ることも可能だ。

 監視対象となるシステムが多くなると、上ってくるメッセージの量も増えることになる。「JP1/Integrated Management」ではこれを配慮して、メッセージの保管件数を従来に比べて約10倍に拡張している。また、スライダーバーを使って、各メッセージを日時を軸として瞬時に探せる検索機能を実装した。さらに、メッセージの誤解や見落としを防げるよう、各システムからのメッセージの“言い回し”が異なっていても、例えば「主語、目的語、述語の順に表示する」など、任意のフォーマットに合わせて表現を統一することもできる。このほか時系列、重要度順に並べ直すことも可能だ。

ジョブ管理製品「JP1/Automatic Job Management System 3」

 仮想化により、サーバ統合を行ってシステムの一元管理化を進めると、運用管理者1人当たりの作業負荷は高まる。システム規模が大きくなればなるほど、一元管理化/省人化による業務効率向上メリットも大きくなるが、適切な運用管理プロセスとそれを支援する道具立てがなければ、作業負荷の増大が運用業務の進ちょくに悪影響を及ぼしかねない。

 課題は2つある。1つ目は「仮想サーバ構築の作業負荷が大きい」こと。いくら手軽に用意できるとはいえ、ユーザー部門からの構築要請が増加すれば、運用管理作業の効率化という仮想化のメリットも半減してしまう。

 ジョブ管理製品「JP1/Automatic Job Management System 3」は、ゲストOSのマスタイメージなどを含めて一連の処理手順を定義しておけば、各仮想化ソフトウェアと連携してプロビジョニング作業を自動化できる。

 システムの業務処理機能を切り替える作業を行う場合、一般にはいったんシステムを止めなければならないが、「JP1/Automatic Job Management System 3」ではあらかじめ「新しい処理内容」と「切り替え時間」を設定しておくことで、ノンストップの自動切り替えを実行することができる。これにより、仮想環境をより柔軟に運用することが可能となる。

バックアップ管理製品「JP1/VERITAS」

 仮想環境になったからといって、システムバックアップの業務がなくなるわけではない。「JP1/VERITAS」は、物理サーバと仮想サーバを同じ管理画面で扱い、同様の手順でバックアップ/リストアを行うことができるツールだ。このため、物理/仮想サーバが混在した環境でも、標準的な手順で確実に作業できる。

 「JP1/VERITAS」は仮想マシン全体をイメージバックアップできるが、それをそのままリストアするだけではなく、特定のファイルを抽出してリストアするこもとでき、柔軟な復旧が可能だ。VMware Consolidated Backupとも連携可能で、仮想環境のバックアップを統合して、ほかの仮想マシンには影響を与えずにバックアップを行うことができる。


 なお、「JP1/Performance Management」「JP1/Integrated Management」では、当初はヴイエムウェア「VMware ESX Server」のみの対応だったが、2009年12月末にマイクロソフトの「Windows Server 2008」が装備する仮想化機能「Hyper-V」と、日立の統合プラットフォーム「BladeSymphony」に搭載された仮想化機能「Virtage」にも対応範囲を拡大した。JP1/VERITASについては、VMware ESXの対応オプションを用意している。Virtageには、オプションなしで対応する。

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