“業務視点の機能強化”で、仮想環境の運用を効率化──日立製作所特集:仮想環境はここまで管理できる(1)(2/2 ページ)

» 2010年01月25日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]
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2010年度内に発売予定の次期版でITリソースプール機能を実装

 以上、JP1 Version 9の仮想化対応状況についてみてきたが、2010年度以降はどうなるのだろうか。その目玉は「ITリソースプール」管理機能だという。

ALT 日立製作所 システム管理本部ソフトウェア本部 JP1マーケティング部 主任技師の西部憲和氏

 日立製作所 JP1マーケティング部 主任技師の西部憲和氏は、「今後、ハードウェア集約化の流れが加速し、各社でプライベートクラウド実現に向けた動きが進んでいくことは間違いない。ビジネスの状況やユーザー部門の要請に応じて、必要なリソースを、必要なときに、必要なだけ割り当てるという、仮想化の真のメリットを活用する時代になっていくと思う。そこで2010年度には、複数のベンダ製品や仮想化ソフトウェア、物理/仮想が混在する環境でも、全社のシステムを一元的に管理・制御し、全物理サーバをリソースプールとして活用する際に有用な機能を強化する」と語る。

 ITリソースプーリングは、現状の仮想化ソフトウェアでも構築可能だが、いくつかの課題がある。一例を挙げると、ヴイエムウェアの仮想化ソフトウェアであれば「VMware VirtualCenter」、マイクロソフトならば「System Center Virtual Machine Manager 2008」など、仮想化ソフトウェアごとに専用の管理ツールを使い分けなければならない。

 そこで日立では、「ITリソースプール実現の一環として、仮想サーバを新規に用意する、移動するといった日常的によく行う操作については、仮想化ソフトの種類を問わず、JP1の管理画面上で一括して行える機能を強化する」(日立製作所 JP1マーティング部 主任技師の柴田淳司氏)という。

ALT 日立製作所 システム管理ソフトウェア本部 JP1マーティング部 主任技師の柴田淳司氏

 全社的にITリソースプーリングを進めるには、ユーザー部門からの要望に対してリソース割り当てを行う際のルール作りや、リソースの申請・使用記録を残すなど、無駄遣いを抑止する体制が求められる。JP1でITリソースプーリングを実現すれば、これらの申請・使用記録も一元管理できる。将来的には、リソース割り当てに対する社内課金機能も追加する予定だという。

 また、JP1/Automatic Job Management System 3にはユーザー部門が扱えるジョブ管理機能を追加する。 今後、プライベートクラウド化によってサーバはデータセンターに集約されることが予測される。従来は各部門で管理していたデータも遠隔地のデータセンターに移行することになり、業務に必要なデータの抽出などの作業に支障をきたすことも考えられる。そこで提供されるのがユーザー部門のためのジョブ管理ツールだ。これは一定のポリシーの枠内で、ユーザー自身が自由にジョブを設定できるものになるようだ。

今後は仮想環境を使いこなせる"目的別運用ポータル"を用意

 さらにその先の予定としては「“サービス観点”による、ITリソースの効率的な運用環境を整える」(西部氏)という。

 例えばユーザー部門には、通販サイトなど顧客サービスをつかさどるシステムのサービスレベルの情報を、CIOや経営トップには全システムの稼働状況と業務への影響が分かるデータを、システム管理者なら全システムの稼働状況とリソースの使用状況を、といった具合に「立場・職級に応じて、最適な運用情報を提供する“目的別運用ポータル”を用意し、より戦略的に業務を遂行できる環境を整えたい」という。

 西部氏は今後のJP1について、「システムの運用管理を行う目的は、業務の安定稼働と継続性の確保にある。仮想化技術についても、コストやリソースの有効活用、ビジネスのスピードアップといった業務上のメリットにつなげることが大切だ。社内クラウド化の流れが進展しつつあるいま、ユーザー企業は自社の業務目標とシステム運用に求められる要件をあらためて見直しておくことが大切なのではないか。弊社でも、あくまで“業務の観点”から運用管理の在り方を見据え、各種機能を開発していきたい」としている。

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