トランスペアレントかつほとんど無限大にスケーラブルなシステムというものが、主として特殊なハードウェアの力で成し遂げられるのか、それとも汎用ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実現できるのかによって、サーバベンダの重要性というのは大きく異なってくるでしょう。
私は後者になる可能性が高いと考えていますが、その場合はCPPがインテルなどの部品メーカーから直接必要なものを買ってくればよいだけで、サーバベンダが提供できる付加価値はほとんどなくなるでしょう。
現状でサーバベンダの提供している一番大きな付加価値はグローバルなサポート提供力ですが、CPPのシステム構築能力は極めて高く、その拠点も集約されていることを考えると、ベンダのサポートに依存する必要性はあまり高くないと思われます。
社内に置くブローカーサーバキャッシュストレージは誰が企業に提供するのかという疑問は残りますが、これらはCPPが契約先に対してレンタルする形式になるかもしれません。もしくは、シスコのようなネットワーク機器のベンダが、ルータと一体型のものを提供するかもしれません。そういった可能性を考えると、サーバベンダの生き残りのシナリオは次の3つくらいになりそうです:
PCのようなクライアントサイドのデバイスを提供するベンダは必要であり続けるでしょうが、ますます競争が激しくマージンの低い分野になっていくでしょう。
OSやDBMSを含むいわゆるミドルウェアのレイヤは、クラウド基盤に吸収されていくでしょう。
ここで、クラウドを実現するためのミドルウェアを提供するという新しいタイプのソフトウェアベンダが活躍する余地があるのか、マイクロソフトやオラクルのようなこの分野の巨大プレイヤー自らが有力なCPPになっていくのかはちょっと予測がつきません。
次にアプリケーションのレイヤですが、トランスペアレントかつスケーラブルなクラウド基盤が整備されるとSaaS型のサービスを始めるためのハードルが極めて低くなります。
例えば、今日現在のセールスフォース・ドットコムの強さの源泉は、そのソフトウェア単体に存在するわけではなく、スケーラブルで高可用性を実現したシステムとの組み合わせのところにあります。後者が次世代クラウド基盤という形でコモディティ化してしまうと、アプリケーションプロバイダとしてのセールスフォース・ドットコムの競合優位性は、一気に低下してしまいます。彼らが「Force.com」という形で、CPPを指向しているのはこういった参入障壁の低下を見据えてのことだと考えられます。
安価なクラウド基盤の上で、安価にサービスを提供するSaaSベンダがたくさん登場してくるでしょう。
米国ではすでにその兆候が現れており、アマゾンのクラウドサービスをバックエンドにしたストレージサービスがいくつか生まれてきています(例:DropBoxやZumoDrive)。この流れの先には、オープンソースベースのSaaS(OSSaaS:Open Source Software as a Service)の流行が予想され、参入障壁の低下と相まってより一層のサービス低価格化が進んでいくでしょう。
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