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» 2010年06月02日 12時00分 UPDATE

ITユーザーのためのメンタル管理術(2):業務改善を狙うなら、遅刻した人に温かく声を掛けよう (1/2)

最近「人と接していないな……」と感じたり、小さな遅刻が増えたりしていたら、手遅れになる前に、心の状態を見直してみてほしい。その些細な“変化”は、本人や組織に大きなダメージを与える“心の悲鳴”かもしれないから。

[小関由佳(NIコンサルティング),@IT]

 前回、業務はあくまで“人”あってのものであり、いかにツールが進化しようと、いかなるビジネスチャンスに恵まれようと、人の心の在り方次第で業務の成果は大きく変わってくる、といったことを解説しました。すなわち、心の在り方のマネジメントが、業務を円滑に行うための前提条件であり、必須条件でもあるのです。

 そうした“心のマネジメント”に欠かせない要素が、心の栄養“ストローク”です。今回は、このストロークについて詳しく紹介したいと思います。

心の栄養“ストローク”

 「組織やチームを元気にするためにはコミュニケーションが大切だ」「信頼関係を築くことが大切だ」とよく言われます。誰もが納得のゆく話だと思うのですが、いま現在、「相手を認めることができていて、相手からも認められているという実感を持っているか」と尋ねられたらどのように解答しますか?

 上司と部下、組織と自分、家族と自分の関係で考えてみるとよいと思います。中でも職場、特に「組織と自分」に当てはめてみるとき、自信を持って「YES」と回答できる方は、案外少ないのではないでしょうか。

 職場において「認められた」という実感は、多くの場合、声掛けによってもたらされます。相手に対する声掛けは相手の心を満たし、その意欲やモチベーションを高め、成長を促す1番の特効薬となるのです。こうした心のメカニズムは誰もが実感として理解できると思いますが、心理学ではこうした相手の心に対する働き掛けを「ストローク」と呼んでいます。

 より正確に言えば、ストロークとは「自己および他者を“認めるための”言語や働きかけ」を意味します。体の健康を保つために栄養が必要であるのと同じように、心の健康を保つためにも「認められた」という実感をもたらす“心の栄養”ストロークが必要なのです。

 このストロークが不足すると、心は栄養失調になり、次第に元気を失っていきます。その結果、問題行動を起こしたり、病気になったり、最悪の場合、死すら引き起こす可能性もあります。

 前回、ITの進展とユビキタス社会の到来によって、職場環境がさま変わりし、職場における会話が減ってきたというお話をお伝えしました。これに加えて成果主義が台頭している近年、「認められている」という実感はますます得にくい状況になっています。すなわち「多くの職場が“ストローク飢餓”に陥りやすい状況になっている」というわけです。

 人は人から認められなければ生きていけません。人が生き生きと働き、生活するうえでは、この「ストローク」の扱い方がカギとなるのです。

1人1人の心の中に“ストロークバンク”がある

 そこで、まずお伝えしたいのはアメリカの精神科医、エリック・バーン(Eric Berne)が提唱した

「TA(Transactional Analysis:交流分析)」という心理学理論です。この理論では、1人1人の心の中に周りからもらったストロークを貯めておく「ストロークバンク」というシステムがあると考えています。

心を元気にしておくためには、このストロークバンクがいっぱいであることが大前提となります。

 また、ストロークは“心の栄養”だと解説しましたが、ストロークには、受け取ると快適な気持ちになる「プラスのストローク」と、受け取ると不快感や苦痛を味わう「マイナスのストローク」の2種類があります。プラスでもマイナスでも相手の存在や価値を認める働き掛けには変わりないのですが、“栄養”になるのは、ほとんどの場合、このプラスのストロークなのです。

稼働状況監視画面 図1 1人1人が心の中にストロークバンクを持っており、この中に日々、プラスとマイナスのストロークが蓄積されていく

 心が最も元気な状態は「プラスのストローク」でストロークバンクがいっぱいの状態です。例えば、会社で上司に褒められた、お客さまに「次も君に頼むね」と言われた、誰かに告白された、予定どおりにプロジェクトが進み評価してもらえたなど、良いことがたくさんあった日は気分も良いですよね? その状態がストロークバンクがプラスのストロークでいっぱいの状態です。すなわち、自分自身を認め、元気になるためには、“人から認められる状況”に自分の身を置くのが1番の方法なのです。

 また、この状態のときに良い報告を聞くと、「おめでとう! 良かったね!」と心から一緒に喜ぶことができます。本人も気分が良いですし、周りにいる人たちにも元気を分けてあげることができるわけです。

 一方、マイナスのストロークはこの逆の状態をもたらします。

例えば、嫌なことが続いたときを想像してみましょう。上司に叱られた、お客さまからクレームを受けた、ソースコードレビューや品質チェックなどで気に障ることを言われた、家族や恋人と喧嘩した……考えただけでも落ち込んでしまいそうです。

 この状態のときに同僚から良い報告を聞くとどうでしょう? 心から喜んであげられるでしょうか? 例え祝ってあげたい気持ちはあっても、上手に表現できないのではないでしょうか? それどころか、マイナスのストロークで心がいっぱいの状態であれば、「お前ばっかりいいよな……」「浮かれすぎなんだよ……」などと、嫌みの1つも言いたくなるかもしれません。すなわち、マイナスのストロークしか持っていない人は、周りに対してもマイナスのストロークを発してしまうのです。これでは本人が嫌なばかりでなく、プロジェクトチームの雰囲気まで悪くなってしまいます。

稼働状況監視画面

 しかし、例えマイナスにせよ、ストロークがあるうちはまだましと言えます。

それ以上に要注意なのは、ストロークが存在しない「ディスカウント」という状態です。これは自分や相手の価値、存在を認めない状態を指し、「暴力の本質」とも言われています。

 「自分や相手を認めない」心の状態が引き起こす具体的な行動??その最も象徴的なのものは「自殺」や「殺人」です。日常的なものでは「無視」「無関心」も代表例と言えます。特に覚えておいてほしいのは、心理学的に「ディスカウント」でくくると、「自殺」「殺人」と「無視」「無関心」は同レベルの事象になるということです。このディスカウントの状態になれば、ストロークが枯渇し、心は自ずと病んでしまいます。

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