クラウド時代、導入効果はこうして見定める!クラウド時代の業務分析バイブル(1)(2/3 ページ)

» 2010年10月28日 12時00分 公開
[西村泰洋,富士通]

業務調査・分析の4つの視点

 では本論に入りましょう。まず業務調査・分析を進めるうえでの大枠をご紹介します。前述のように、業務調査・分析の目的は「新業務/新システムがいかに価値を生み出すか」を確認することにあります。そこで、まずは「現行業務/現行システム」と「新業務/新システム」を、以下の4つの視点で比較し、「新業務/新システムの効用」を整理することから始めます。

1.処理時間/工数

 例えば、現行業務のあるプロセスで、「2名の作業者で1時間」掛かっていたものが 「新システム導入後は2名で30分になる」など。

2.品質/精度

 現行業務では「1日当たりの平均不良品発生が10個、作業ミス発生が2件ある」が 「新システム導入後には不良品が半減、作業ミスは0になる」など。

3.コスト削減

 「上記1と2の結果としてコスト削減につながる」ことを明確化する。 特に製造業では、1と2を満たしてコスト削減につなげることが必須条件。

4.付加価値/経営効率

 新システムの導入で、「いままでできなかったことができるようになる」ことを明示する。 例えば「ほかのシステムや業務と連携が取れるようになり、経営効率が大幅に向上する」など(特に流通業の場合、それが消費者や顧客企業から見えるような業務であれば、アピールにつなげるために、この視点を特に重視する場合もある)。

 もちろん、業務調査・分析の結果、4点とも新業務/新システムが現行のものを上回れば良いのですが、場合によっては 「現行システムより悪化してしまう」ケースもあり得ます。筆者も業務調査・分析の一メンバーとしてそうした事態を経験したことがありますが、そのときは新システムの開発プロジェクト自体が概要設計フェーズで終了となりました。

 つまり、重要なのはシステムが稼動してからでなく、プロジェクト自体を修正できる概要設計の前半までに、「要件定義で固めた仕組みで望ましい効果が出るのかどうか」を判断することなのです。

 とはいえ、新しいシステムを導入しようと考える以上、やはり従来よりも効果的・効率的なシステムであってほしいものです。特に「1.処理時間/工数」または「2.品質/精度」の視点で、新システム導入後の業務が現行業務に勝てないと意味がありません。従って、業務調査・分析の結果を基に、即座に判断を下すのではなく、以下の図1が示すような結果が出るよう、新システムの設計、新業務の内容を工夫し、突き詰めていくことになります。

ALT 図1 業務調査・分析を行ったら、その結果を基に、まずは工数と品質で現行業務/現行システムを確実に上回れるよう、新業務/新システムを設計する、あるいは設計を考え直す

概要設計が固まってからではもう遅い!

 従って、業務調査・分析を実施するタイミングも、「要件定義、概要設計と並行して実行する」のが適切というとになります。要件定義、概要設計のプロセスは、要件定義でイメージした「仮説」としての新業務/新システムが本当に適切かつ有効なものなのか否かを検証するプロセス、と考えても良いでしょう。

ALT 図2 業務調査・分析は、要件定義、概要設計と並行して実行する。概要設計が終わってからでは、調査・分析結果を有効に設計に反映できない

 とはいえ、前述のように、まだプロジェクトを修正できる概要設計の前半までに、業務調査・分析を終了させることが重要です。概要設計が固まり始めた段階で調査・分析を行っても、もはやその結果を業務・システムに有効に反映することはできないためです。

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