SFC学習パターンを新人研修に適用する- 暗黙知と形式知オブジェクト指向の世界(30)(1/3 ページ)

前回は、フラクタルの2つの特徴を紹介した。今回は「SFC学習パターン」をテーマに、暗黙知対形式知の視点で考える。

» 2010年12月22日 12時00分 公開
[河合昭男,オブジェクトデザイン研究所]

 前回は『フラクタル−自己相似形とべき乗則』というタイトルでフラクタルの2つの特徴について考えてみました。

 不思議なことがありました。前回記事が公開された正にその日(2010/10/18)のことです。朝刊の社会面にフラクタルというタイトルの小さな記事が目に付きました。筆者はその新聞記事にしばし呆然としました。フラクタル提唱者ブノワ・マンデルブロ氏の訃報でした。このとき、筆者は偶然ではない何か目に見えない力のようなものを感じました。通常の因果関係では説明できないことが関連して起きる現象、これを「ユングの共時性」と呼ぶのでしょうか……。

 今回は再度「SFC学習パターン[注1]をテーマにし、暗黙知対形式知の視点で考えてみたいと思います。前回でも少し触れましたが、筆者は今春新人研修の講師と講師サポートを担当しました。その現場でこの学習パターンを実践し、効果を実感しました。その体験から得られた知見をご紹介したいと思います。


[注1]


研修のプロセス

 新人研修に限らず、一般的な研修のプロセスは「座学→演習」を適当な単位で何度か繰返し、最後に「グループ演習→発表」を行うのが基本パターンです。「グループ演習→発表」を最後に1度でなく、ある区切りで何度か行うパターンもあります。

ALT 図1. 研修のプロセス

 39の学習パターンを見てゆくと、これら4つのプロセスに当てはまるものがあります。

 学習パターンには、それぞれの内容を端的にイメージできる素晴らしいイラストが付いています。本稿では、学習パターンのサイト[注2]からダウンロードしたものを掲載しました。パターン名とこのイラストでパターンの内容がほぼ理解できます。


[注2]


座学のための学習パターン

 研修プロセスの前半は座学、つまりひたすら講師の説明を聞いて理解するという一方向の学習形態となるのが普通です。

 座学は「まねぶ」ことから(No.8)始まり、教わり上手になる(No.9)ことで、一層各自理解を深めることができます。

演習のための学習パターン

 一区切り説明を聞いたら次は演習です。演習を通して理解度を深めます。

 演習を通して自分で考える(No.25)訓練を行い、手を動かし身体で覚える(No.10)ことで学んだ知識を自分のものにします。

グループ演習のための学習パターン

 研修プロセスの最後は、グループ演習を通して受講生同士でそれぞれが学んだことを共有します。

 グループ演習は、未知のメンバーとの偶有的な出会い(No.18)の場であり、演習課題を通してフィールドに飛び込む(No.17)仮想体験を経験して、学びを共有する場でもあります。

発表のための学習パターン

 グループ演習では、成果物をまとめるという作業と人に伝える発表を体験します。

 成果物をまとめるという作業と発表を通して、アウトプットから始まる学び(No.13)教えることによる学び(No.31)を体験します。さらに、どうしたらよりうまく伝えられるかという、魅せる力(No.34)を工夫する場にもなるのです。

 研修プロセスと代表的な学習パターンを図2にまとめます。

ALT 図2. 研修プロセスと学習パターン

 このように「学習パターン」は、本来の目的ではない新人研修にも適用できるパターンが含まれ、しかも研修の4つのプロセスをカバーしています。

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