2000年後半以降、ネット関連企業の業績不振/リストラなど暗いニュースが相次ぎ、さまざまなメディアで“ネットバブルの崩壊”という見出しが躍った。一口にネット関連といったところで、実際のビジネスモデルは多種多様、十把ひとからげで崩壊といわれてはたまらない。
そこで、今回のフォーラムアンケートでは、「読者による業態別ネットビジネス成長性予測」を試みた。IT ビジネスに携わるナレッジワーカーは2001年度、どんな業態に期待しているのか? その結果を紹介しよう。
アンケート方法から説明しよう。今回は読者に20のビジネスモデルを提示し、そのおのおのについて成長性を予想する選択肢を以下の中から選んでもらった。
まず2001年度の全体的な予測状況をふかんするために、各業態を“成長期”(上記選択肢の2)と“成熟期”(同3)によりプロットしたのが図1である。縦軸で上方に位置するほど今年度の高成長が期待され、横軸で右方にいくほど業態としては落ち着き感が高いことを意味する。
上図をつらつらと眺めると、大ざっぱにこんな切り分けができそうだ。
全体像をざっくり把握したうえで、個別の業態の状況について、カテゴリ別に詳細を見ていこう。
このカテゴリでは「オンライン・バンキング/オンライン・トレード」を筆頭に、今年度の高成長を予想する読者が多い(図2)。2000年後半にカジュアル衣料大手のユニクロのショッピングサイトが話題になったが、ようやく日本でもコンシューマのEC利用が開花する機運が高まっている。
成長期よりも導入期ポイントが高い「コンテンツのダウンロード販売」「電子マネー/電子決済サービス」の2業態についての読者からのコメントを見ると、“ブロードバンドの普及と著作権問題のクリア”(コンテンツのダウンロード販売)、“セキュリティ/信頼性向上”(電子マネー/電子決済)を課題として挙げる声が多かった。
プロット図の中で成熟度の高さが目立った、マーケティング関連3業態の詳細はどうだろうか。図3を見ると、特に「バナー広告」に関しては、すでに成熟を越えて「衰退期」であるとの指摘がおよそ4割に達した。読者のコメントを読むと、バナー自体の過剰感とともにクリック率の低下に代表される広告効果への疑念が広がっているようだ。
広告効果についてはアナログのメディアにはない“効果が如実に分かるメリット”が効果の低さを露呈してしまい、かえって足かせのようになってしまっている面もある。だが、逆にいまこそ旧来のメディアの手法にとらわれない“ネットならではのコミュニケーション形態”を開発し、新たな成長期を作り上げるチャンスといえるかもしれない。
インターネット・ビジネスを裏から支える、プロバイダ業態を取り上げよう(図4)。「データセンター」および「ASP」については今年度の成長を予測する読者がおのおの約4割に達しているのに対し、昨年からいろいろなメディアで紹介され始めた「MSP」「SIPS」は読者の半数近くが“知らない/分からない”状況であった。まずは業態としての認知向上が必要と思われる。
……などといっている間にも、この4月、米SIPS最大手マーチファースト社(*)倒産というニュースが飛び込んできた。新しい業態を確立して市場リーダーを目指すのはベンチャー企業にとっては有効な戦略だが、認知向上策でキーワードだけ先行しても市場がついてこなかったのか。ユーザーを引き付けるメリットと実績の訴求を地道に積み重ねるのが、プロバイダ・ビジネスの王道なのかもしれない。
カテゴリの最後として、いままでの分野以外で気になる以下の業態を見てみよう(図5)。
これらの中で今年度成長期待の高いのは、プロット図で見たとおりセキュリティ関連のビジネスである。読者のコメントを見ると、常時接続環境の整備とともに、セキュリティ装備の必要性認識が個人間でも広がっていると感じられた。EC関連ビジネスを期待どおり花開かせるためにも、ネット・セキュリティ製品/サービスやリテラシーのさらなる普及が望まれる。
以上、各業態の結果を駆け足で紹介してきたが、最後にもう一度すべての業態の中で“2001年度もっとも成長すると思うビジネス”を1つだけ挙げてもらったところ、「携帯電話やPDAによるモバイル・コマース」がトップに選ばれた(図6)。業態別予想では「オンライン・バンキング」の成長期ポイントの方が高かったのだが、あらためて相対評価するとモバイル・コマースへの期待が上回った形だ。
2000年末に実施した第2回フォーラムアンケートでも、自分が関与するWebサイトに「モバイル・インターネットとの連動機能を導入したい」との回答が多く、再度この分野への期待の高さが確認された。
これはモバイル・インターネット・ユーザーの増加、各種携帯端末へのJava実行環境搭載などの要因に加え、ネット関連において、日本発の技術がアドバンテージを取れる稀有な機会であることも心情的に影響しているのではないだろうか?
最後にこの結果を象徴する読者のコメントを引用しておこう。
“とりあえず、これが伸びないと日本のITはどうにもならないでしょ。希望を込めて!”
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