読者調査結果発表〜読者が占う 2001年度インターネット・ビジネスの○と×〜IT Business Review(3)

» 2011年05月11日 12時00分 公開
[小柴豊,@IT]

 2000年後半以降、ネット関連企業の業績不振/リストラなど暗いニュースが相次ぎ、さまざまなメディアで“ネットバブルの崩壊”という見出しが躍った。一口にネット関連といったところで、実際のビジネスモデルは多種多様、十把ひとからげで崩壊といわれてはたまらない。

 そこで、今回のフォーラムアンケートでは、「読者による業態別ネットビジネス成長性予測」を試みた。IT ビジネスに携わるナレッジワーカーは2001年度、どんな業態に期待しているのか? その結果を紹介しよう。

2001年度の成長期待分野:ECとセキュリティ

 アンケート方法から説明しよう。今回は読者に20のビジネスモデルを提示し、そのおのおのについて成長性を予想する選択肢を以下の中から選んでもらった。

  • 導入期:まだブレイクには早いが、2〜3年後に期待
  • 成長期:2001年度に(新規or引き続きで)伸びる
  • 成熟期:伸びてきたけど、そろそろ落ち着く
  • 衰退期:縮小/淘汰に向かうor話題だけで終わる
  • 知らない・分からない

 まず2001年度の全体的な予測状況をふかんするために、各業態を“成長期”(上記選択肢の2)と“成熟期”(同3)によりプロットしたのが図1である。縦軸で上方に位置するほど今年度の高成長が期待され、横軸で右方にいくほど業態としては落ち着き感が高いことを意味する。

図1 成長期×成熟期によるインターネット・ビジネス・プロット図(クリックすると業態名入りの拡大図を表示します)

 上図をつらつらと眺めると、大ざっぱにこんな切り分けができそうだ。

  • 図中央“今年が旬”ゾーン:EC/セキュリティ関連ビジネス
  • 図左“Emerging”ゾーン:モバイル/ブロードバンド関連ビジネス
  • 図右“次の一手を模索”ゾーン:マーケティング関連ビジネス

 全体像をざっくり把握したうえで、個別の業態の状況について、カテゴリ別に詳細を見ていこう。

EC関連ビジネス

  • クリック&モルタル(現実の店舗とネットの連動)
  • 音楽や電子書籍などコンテンツのダウンロード販売
  • 電子マネー/電子決済サービス
  • オンライン・バンキング/オンライン・トレード(証券取引)
  • 携帯電話やPDAによるモバイル・コマース
図2 EC関連ビジネスの成長度予測

 このカテゴリでは「オンライン・バンキング/オンライン・トレード」を筆頭に、今年度の高成長を予想する読者が多い(図2)。2000年後半にカジュアル衣料大手のユニクロのショッピングサイトが話題になったが、ようやく日本でもコンシューマのEC利用が開花する機運が高まっている。

 成長期よりも導入期ポイントが高い「コンテンツのダウンロード販売」「電子マネー/電子決済サービス」の2業態についての読者からのコメントを見ると、“ブロードバンドの普及と著作権問題のクリア”(コンテンツのダウンロード販売)、“セキュリティ/信頼性向上”(電子マネー/電子決済)を課題として挙げる声が多かった。

インターネット・マーケティング・ビジネス

  • バナー広告
  • 電子メール・マーケティング
  • インターネットを用いたマーケティング・リサーチ
図3 インターネット・マーケティング・ビジネスの成長度予測

 プロット図の中で成熟度の高さが目立った、マーケティング関連3業態の詳細はどうだろうか。図3を見ると、特に「バナー広告」に関しては、すでに成熟を越えて「衰退期」であるとの指摘がおよそ4割に達した。読者のコメントを読むと、バナー自体の過剰感とともにクリック率の低下に代表される広告効果への疑念が広がっているようだ。

 広告効果についてはアナログのメディアにはない“効果が如実に分かるメリット”が効果の低さを露呈してしまい、かえって足かせのようになってしまっている面もある。だが、逆にいまこそ旧来のメディアの手法にとらわれない“ネットならではのコミュニケーション形態”を開発し、新たな成長期を作り上げるチャンスといえるかもしれない。

インターネット・インフラ関連ビジネス

  • ASP (Application Service Provider)
  • MSP (Management Service Provider)
  • SIPS (Strategic Internet Professional Service)
  • iDC (インターネット・データセンター)
図4 インターネット・インフラ関連ビジネスの成長度予測

 インターネット・ビジネスを裏から支える、プロバイダ業態を取り上げよう(図4)。「データセンター」および「ASP」については今年度の成長を予測する読者がおのおの約4割に達しているのに対し、昨年からいろいろなメディアで紹介され始めた「MSP」「SIPS」は読者の半数近くが“知らない/分からない”状況であった。まずは業態としての認知向上が必要と思われる。

 ……などといっている間にも、この4月、米SIPS最大手マーチファースト社(*)倒産というニュースが飛び込んできた。新しい業態を確立して市場リーダーを目指すのはベンチャー企業にとっては有効な戦略だが、認知向上策でキーワードだけ先行しても市場がついてこなかったのか。ユーザーを引き付けるメリットと実績の訴求を地道に積み重ねるのが、プロバイダ・ビジネスの王道なのかもしれない。

(*)日本の電通マーチファースト社は電通の100%出資会社のため営業は継続されている

そのほかのインターネット・ビジネス

 カテゴリの最後として、いままでの分野以外で気になる以下の業態を見てみよう(図5)。

  • ブロードバンドによるコンテンツ配信
  • ビジネス向けボータル(業界別ポータル)サイト
  • eマーケットプレイス
  • eラーニング
  • 認証/暗号や不正侵入対策などのネット・セキュリティ
  • Web/電子メール・フィルタリングなどのコンテンツ・セキュリティ
  • 行政の電子化(電子政府)
図5 そのほかのインターネット・ビジネスの成長度予測

 これらの中で今年度成長期待の高いのは、プロット図で見たとおりセキュリティ関連のビジネスである。読者のコメントを見ると、常時接続環境の整備とともに、セキュリティ装備の必要性認識が個人間でも広がっていると感じられた。EC関連ビジネスを期待どおり花開かせるためにも、ネット・セキュリティ製品/サービスやリテラシーのさらなる普及が望まれる。

2001年度ネットビジネスの本命:モバイル・コマース

 以上、各業態の結果を駆け足で紹介してきたが、最後にもう一度すべての業態の中で“2001年度もっとも成長すると思うビジネス”を1つだけ挙げてもらったところ、「携帯電話やPDAによるモバイル・コマース」がトップに選ばれた(図6)。業態別予想では「オンライン・バンキング」の成長期ポイントの方が高かったのだが、あらためて相対評価するとモバイル・コマースへの期待が上回った形だ。

図6 2001年度もっとも成長すると思うビジネスTop10

 2000年末に実施した第2回フォーラムアンケートでも、自分が関与するWebサイトに「モバイル・インターネットとの連動機能を導入したい」との回答が多く、再度この分野への期待の高さが確認された。

 これはモバイル・インターネット・ユーザーの増加、各種携帯端末へのJava実行環境搭載などの要因に加え、ネット関連において、日本発の技術がアドバンテージを取れる稀有な機会であることも心情的に影響しているのではないだろうか?

 最後にこの結果を象徴する読者のコメントを引用しておこう。

“とりあえず、これが伸びないと日本のITはどうにもならないでしょ。希望を込めて!”

調査概要

  • 調査方法:IT Business Review サイトからリンクした Webアンケート
  • 調査期間:2001年3月12日〜4月2日
  • 有効回答数:138件

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