ビッグデータが“バズワード”から脱せない背景ビッグデータトレンドの今(2/2 ページ)

» 2012年08月06日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]
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データを一元管理する“データスチュワード”不在の日本企業

 実際、データマネジメントの重要性は、近年あらためて見直されている。特にビッグデータにおける「分析」は、一部のデータをサンプリングして分析するBIのアプローチとは異なり、全社内のあらゆるデータソースをサンプリングすることなく分析し、一見ばらばらなデータの中に潜むデータ間の関係性を発見することで、“従来なら得られなかった知見”を得る点に特徴がある。さらに、その結果を高速で得ることで、例えば潜在顧客の動向を予見してプロアクティブに意思決定を下し、より合理的に収益向上を狙う、といったことができる。

 その点で、ビッグデータを活用するためには、データを一元的に管理するコンピテンシーセンターを設置したり、データの一元管理やMDM(Master Data Management)をリードする“データスチュワード”のような人材を確保したりすることが理想とされているが、日本企業でそうした部門や人材を設けている例はごくまれだ。

 赤城氏はそうした現実を挙げ、「先を予見し、経営をリードしていくビッグデータアナリティクスの“Thought Leadership”には、世界の多くの経営層が関心を寄せているし、各ベンダも啓蒙活動を展開している。だが、自社の目的に応じて、データ分析のシナリオを策定し、有益な知見を得るためには、データマネジメントをはじめ、日々生成される大量データを、効率よく蓄積できるスケールアウト型の収集・蓄積基盤、散在しているデータを統合し、高速に並列分散処理する仕組みなどが不可欠となる。マイニングなどの高度な分析は、そうしたインフラがあることが前提になる以上、経営層も“分析のためのインフラ”整備の重要性をあらためて認識すべきではないか」

今こそ“データ活用の足元”を見直すべき

 特に赤城氏が強調するのが、「インフラ整備の恩恵は、高度な分析が可能になることだけではない」という点だ。例えば、データマネジメントを行えば、今使っているBIによる経営可視化の精度が大幅に向上する。部門間の情報共有・伝達も正確・確実に伝わり、業務効率が向上する。高速な並列分散処理基盤を整備すれば、データが増え続ける中でもバッチ処理のスピードを向上させられるなど、現状業務にあらゆるメリットがもたらされる。

「ビッグデータトレンドはデータ活用の足元を見直す良いきっかけになる。できるところから着手すべき」と話すIDCジャパン ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャー 赤城知子氏 「ビッグデータトレンドはデータ活用の足元を見直す良いきっかけになる。できるところから着手すべき」と話すIDCジャパン ソフトウェア&セキュリティ グループマネージャー 赤城知子氏

 「そうした点で、現在のビッグデータトレンドは、データマネジメントをはじめ、これまで手をつけてこなかった問題解決に乗り出す良いきっかけとも言える。各ベンダから大量・多種のデータ活用に対応した製品も出そろっており、データ活用基盤の整備にできるところから着手しやすい環境が整いつつある」

 赤城氏は最後にこのように述べ、「ビッグデータで何をしたいのか、自社のデータ活用目的や、その可能性を見据えることも重要だが、今こそデータ活用の“足元”を見直すべき。そうすることで、データ基盤整備による数々のメリットを今享受しながら、“まだまだ先のこと”だったビッグデータ活用も現実味を帯びてくるはずだ。また、この先、ビッグデータ活用が地球規模で本格化していけば、ビッグデータの分析力が企業競争力と直結するようになるだろう。その結果、競争はより激しくなる。だからこそ、ビッグデータ活用に関心があるならば、1日も早く“最初の一歩”を踏み出すことが論理的だ」とまとめた。

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