連載
» 2012年08月24日 12時00分 UPDATE

IT担当者のための業務知識講座(11):“上から目線”の排除が、電子政府推進のカギ (1/2)

国連が2012年に発表した「国連電子政府サーベイ 2012」で日本は18位となるなど、電子政府の取り組みは遅れている。官公庁におけるIT活用の課題は何なのか、今あらためて考える。

[杉浦司,@IT]

電子政府と電子自治体の動向

 今回は、官公庁におけるIT活用を見ていきたいと思います。その柱となっているのが、2000年に当時の森喜郎総理大臣が衆参両院本会議で示した「E-ジャパン構想」です。この構想における施策の1つとして発表されたのが、行政サービスの利便性を向上させる「行政の情報化」などを盛り込んだ「IT基本法」(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)でした。

 IT基本法は、国や地方公共団体に対して高度情報通信ネットワーク社会の形成を義務付けるものです。このIT基本法の制定を受けて、2000年11月には「IT基本戦略」が策定されます。これは、『すべての国民が情報技術(IT)を積極的に活用し、かつその恩恵を最大限に享受できる知識創発型社会の実現に向けて〜中略〜超高速インターネット網の整備とインターネット常時接続の早期実現、電子商取引ルールの整備、電子政府の実現、新時代に向けた人材育成等を通じて、〜中略〜我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す』(「IT基本戦略」より抜粋)というものです。

 ただ以上のうち、行政サービスの利便性が向上するとして大いに期待された電子政府化が、当初の想定ほど進まなかったため、2010年に「新たな情報通信技術戦略」と「新たな情報通信技術戦略工程表」が策定されました。この「新たな情報通信技術戦略」において、2020年までに、国民が自宅やオフィスなどの行政窓口以外の場所において、生活に関係する申請手続や証明書入手を、週7日24時間、ワンストップで行えるようにする「国民本位の電子行政の実現」が盛り込まれたのです。


 しかし、電子政府化は進展しているとは言い難い状況にあります。例えば、国連が発表した「Global E-Government Survey 2012(世界電子政府調査 2012)」では、日本と韓国は行政制度に共通点が多いとされているにもかかわらず、韓国が1位で日本は18位でした。行政分野のIT化は、今非常に急がれているのです。


官公庁における顧客は誰か?〜誰のための価値創造か〜

 では、そうしたIT活用の現状はさておき、ITで行政上の価値を提供する相手となる「官公庁の顧客」について考えてみましょう。

 官公庁における顧客は、当然のことながら、主体が政府であれば国民であり、地方自治体であれば地域住民ということになります。しかし、ひと口に国民、地域住民といっても、誰もが同じ考えの下、同じ条件で生活を営んでいるわけではなく、そこには経済状況や思想信条、ライフスタイルなどが異なるさまざまな人が住んでいます。従って、電子政府と電子自治体においても、民間企業のCRM戦略と同じように、“顧客とその顧客価値”を識別することが必要になるのではないでしょうか。

 画一化された窓口手続きや申請書様式は、事務の効率化にはつながるかもしれませんが、「多様な国民、地域住民の満足や豊かな生活を実現する」という目的とはかけ離れていると言えます。時間がないビジネスパーソンにも便利で、身障者や高齢者にもやさしい行政サービスを実現するためには、もっとフレキシビリティあるサービス提供を考えるためのホスピタリティの精神が鍵を握るはずなのです。

官公庁における組織の使命は何か

 次に、官公庁という組織の使命を振り返ってみましょう。これについては憲法や法律で明確に規定されています。

日本国憲法第15条より引用

すべて公務員は、全体の奉仕者であって、

一部の奉仕者ではない。


国家公務員法第96条より引用

すべて職員は、国民全体の奉仕者として、

公共の利益のために勤務し、

且つ、職務の遂行に当つては、

全力を挙げてこれに専念しなければならない。


地方公務員法第30条より引用

すべて職員は、

全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、

且つ、職務の遂行に当つては、

全力を挙げてこれに専念しなければならない。


 官公庁で働く人々は職務の違いこそあれ、「全体の奉仕者」として公共の利益のために働くという点において共通しています。ここでも問題となるのは、「全体」や「公共」とは具体的に誰や何を指すのかという点です。それは前述の通り、ひと言で言ってしまえば「千差万別の国民」ということになりますが、公務員はそうした国民全体に分け隔てなく利便性を提供するという、非常に高度で難しいミッションを背負っているのです。

 「もっとフレキシビリティあふれる行政サービスを」と前述しましたが、その一方で、受益の権利を主張するのは当然であるかのごとく、「われわれ国民は〜」などと軽々しく口にすべきでもありません。電子政府をはじめ、国や自治体に山積している課題を知っておくとともに、千差万別の国民を相手に非常に重い責務を負っている公務員の苦労もまた、きちんと認識しておくべきなのです。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -