“紙の進化形”を目指した「enchantMOON」――UEI清水氏が開発の背景を語る:Mobile IT Asia(2/2 ページ)
スマートフォンでもタブレットでもない、まったく新しいタイプのデバイスとして注目を集めている、UEIの「enchantMOON」。その発想の原点には「紙」があった。代表取締役社長兼 CEOの清水亮氏は「僕らがやりたいのは紙の進化形」と話す。
ほぼ紙と同じ感覚で書けるデジタイザーペン
enchantMOONの生命線とも言えるアイテムが、オリジナルのデジタイザーペンだ。手書きの微妙なニュアンスを伝えるため、OSレベルからチューニングし、ほぼ紙と同じ感覚で書けるようこだわった。開発中のモデルでは、ペンで書いてからの最短反応遅延はわずか0.05秒だという。「人間が何かをして認識するまでに0.04秒ほどかかるので、もう少しで紙と同じくらいに達する」と清水氏は手応えを話す。CPUはシングルコアだが、CPUコア数に関係なくスラスラ書けるよう注力した。UEIがわざわざデバイスから開発したのは、OSレベルではチューニングできない既存のスマホやタブレットでは、ここまでの書き心地を実現できないためだ。
enchantMOONの操作は至ってシンプル。いわゆるホーム画面のようなものはなく、電源を入れると黒い画面が出る。ここに文字を書いて周りを丸く囲うと、「Web」「Note」「Link」という3つのメニューが現れ、Webからはインターネット上の検索、Noteにはメモの保存ができる。Webで切り取った情報を「シール」としてNoteに貼り付けられるので、スクラップブックのようにも使える。Linkでは、特定のNoteにアクセスできるようハイパーリンクを作成できる。また、シールにはプログラムを組むことができ、「ブロック」を組み合わせることで、ペンの色や太さを変えたり、アップロードや共有をしたりといった機能を追加できる。
enchantMOONに書いた文字は裏側で認識されており、手書きの文字や画像を検索できるのも新しい。認識できる言語は日本語と英語で、英語は筆記体も含まれる。このように情報を整理して検索できるのは、紙にはないメリットだ。
enchantMOONの利用シーンは?
清水氏がenchantMOONの利用シーンとして想定しているのが、議事録、デジタル教育、契約書、街頭アンケートなど。教育については、すでに都内の小中学校でenchantMOONを導入したいという引き合いがあるという。複数のデータを集計するアンケートでもenchantMOONが活躍しそうだ。「すごく重要なのは、アンケートのどの設問で迷ったかの時間も計測できること。SPIのような筆記試験にも使えるかもしれない。さらに、倫理上問題はあるかもしれないが、設問に答えたときに、どんな表情をしたかもセルフカメラから分かる」と清水氏はさらなる活用法を説明した。
早ければ4月に予約受付を開始か
気になるenchantMOONの発売時期だが、「現在は量産試作の最終段階に入っている」という。「今月(3月)末に量産できるか確認できるので、早ければ、4月に予約受付を開始できるのでは」と清水氏。台数は「1000台限定とかになるのでは」と初期出荷は抑えめのようだ。個人に何台も買ってもらう……というよりは、学校や法人などから、ある程度まとまった台数を購入してもらう方が期待できそうだ。価格や販売方法は調整中だが、「ちょっと変わった販売方法を考えている、とだけ申し上げておく」と含みを持たせていた。来場者の中には「10万円でも買いたい」と目を輝かせていた人もいた。
筆者も(展示会や囲み取材など)PCを使えないシーンでの取材や、考えを整理したいときなどは、紙のノートを使っている。PCやスマホをメモツールに使うこともあるが、あくまでメモを残すだけ。PCやスマホに思考のプロセスまで残すのは、確かに厳しい。enchantMOONをノートとして使いながら、検索や共有を駆使することで、何か新しい世界が開けてくるかも!? そんな期待を抱かせるには十分だと感じた。
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