iOS8が国際ローミング料金不要の「Wi-Fi Calling」に対応へ――またもアップルがキャリアの収益モデルを壊すのか:石川温のスマホ業界新聞
AppleがWWDCで発表したiOS 8は、Wi-Fi環境があれば電話番号を使って音声発信やSMSの送受信ができる「Wi-Fi Calling」に対応する。海外出張の多いユーザーにはニーズがありそうだ。
今回のWWDCでiOS8が発表になったわけだが、そのうち、通信関連で気になったのが「Wi-Fi Calling」への対応だ。
聞き慣れないワードだが、調べてみるとWi-Fi CallingはすでにT-Mobile USが2007年よりサービスを開始済みだという。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年6月7日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。
Wi-Fi Callingは仮に3Gネットワークが圏外であっても、Wi-Fiが飛んでいれば、電話番号で音声発信が行えたり、SMSを送受信できるという。特別なアプリが必要というわけでもなく、T-Mobile USではサムスン電子「GALAXYシリーズ」やLGエレクトロニクス「Gシリーズ」、HTC「HTC One」、ソニー「Xperia Z1s」といったAndroidスマホだけでなく、ノキア「Lumia 925」といったWindowsPhoneでも対応しているという。これにiOS8も仲間入りするというわけだ(iOS8というOS側での対応ということは、iPhone5やiPhone5sなどの現行モデルでも使えるということなのだろう)。
T-Mobile USが提供するWi-Fi Callingでは、特にオプション料金などは必要なく、通話料金も従来と同じ料金体系となっている(かけ放題プランなら無料)。
T-Mobile USの場合、AT&Tやベライゾンと比べてもネットワークエリアの面で見劣りがする。屋内などのネットワーク品質を上げるという点で、Wi-Fiのアクセスポイントが使えれば、コスト負担が少なくて済むという利点がある。
ユーザー視点で言えば、仮に海外に居ても、Wi-Fiネットワークがあれば、アメリカ国内で使っている電話番号でそのまま着信、発信ができてしまう。
割高な国際ローミング料金を支払わなくてもよく、国内通話と同じ感覚でしゃべれるというメリットはかなり大きいと言えるだろう。
iOS8でWi-Fi Callingが使えると言うことは、当然、日本のキャリアも対応せざるを得なくなってくるだろう。日本の場合、実人口カバー率が高く、また屋内であっても、つながる率は高いので、ネットワークを補完するという面でのWi-Fi Callingのニーズは少ないかも知れない。
しかし、海外出張の多いユーザーからは間違いなく求められる機能であるし、一方でキャリアからすれば、ドル箱であった国際ローミング料金収入が減るというのは何とも痛いことだろう。
これまでアップルは、Facetimeオーディオ、さらにiMessegeを導入するなど、音声通話やSMSなどキャリアの収入源であったサービスをことごとく、無料化させてきた。
仮にサムスン電子やソニーが国内キャリアに対し「Wi-Fi Callingをスマホの機能として追加したい」と提案してもキャリアとしては拒否できるだろうが、アップルが標準搭載してきてしまっては、キャリアは何も反論ができない。
こう考えると、いまのモバイル通信業界は、間違いなくアップルが主導権を握っていると言えそうだ。
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