大画面トレンド、iPhone、日本メーカー、格安スマホ――2014年のスマホを振り返る:スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2014(前編)(2/4 ページ)
2014年に発売されたスマートフォンの中からベストなモデルを決める「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー」。今年のスマホはどんなトピックが目立ったのか。審査会では2014年のスマホについて、ざっくばらんに語ってもらった。前編ではその様子をお届けする。
島氏:isaiは大画面に適したUIが充実
島氏 2013年でスマートフォンの全体的な進化が一段落して、2014年は余裕を持っていろんな端末が開発できる段階になった。差別化のために大型化にいくもの、逆に小型化して性能を上げていくものもあったという印象です。
大型化された端末がそれに適したUI(ユーザーインタフェース)を用意しているかといったら、そうでもない。isai VLを選んだのは、タップでロック解除できるノックコードや、背面に音量調整キーを配置することなどで使いやすくしている点を評価したからです。iPhone 6も大画面端末として選びましたが、見やすさを評価しただけで、iPhone 6 Plusでもよかった。
Xperia Z3 CompactとAQUOS CRYSTALは、片手で収まる形で正統進化した点を評価しています。特にAQUOS CRYSTALは“液晶のシャープ”というキャッチフレーズそのまま、デザインと使いやすさを両立しています。ただ、あのスピーカーが付属したり、サイズ違いで3キャリアに端末をバラバラに提供したり、どうしたいのか理解できない部分もあります。私は片手ですべての情報を操作したいという考えなので、単純に欲しいということからXperia Z3 Compactを選んでいて、評価が一番高いです。
海外のSIMロックフリー端末はいろいろなサイズがありますが、ZenFone 5は、日本向けに5型ディスプレイでカラーバリエーションもあり、日本語入力にATOKを採用して、日本ユーザーに寄り添って出してくれた点を評価して選んでいます。また、ノミネート端末には入っていませんが、「GALAXY S5 Active SC-02G」も評価しています。
西田氏:GALAXY Note Edgeは2年先行している
西田氏 海外では大型化は2013年から始まっていて、やっとiPhoneでも大画面モデルが出た。日本国内でやっと大画面が認知されただけで、別に新しくはない。片手で持てない、落としやすいという、これも海外では2年前からいわれていたことが、国内でもいわれ始めたのだと思います。
悪いことばかりじゃないということも2年前からいわれていたことで、「Appleが大きいモデルを出した、すごいね」という話ではなくて「遅れているんじゃないの」という、むしろ逆の評価です。だからといって、iPhone 6/6 Plusの出来が悪かったかといったらそうではなくて、iOSの機能を問題なく動かせていて、独自性は少ないけど、4型モデルを使っていた人が5.5型のiPhone 6 Plusを使っても違和感なく使えて完成度が高いと思います。
逆に2年先行していたという点ではGALAXY Note Edgeを評価しました。僕はエッジスクリーンの機能は評価していません。でも、あそこに何かが表示されることで、ほかの端末との違いがきちんと分かる。スマホは自分の生活を演出するもので、みんなと同じものではつまらない。ディスプレイに表示されているもので違いをアピールする方法は、メーカーのやり方として正しいと思います。日本でGALAXY Note 4ではなくNote Edgeが出たのも、そういうものが好きな人を引きつけられるし、プロモーションもやりやすいと判断したのだろうと思っています。
コンサバな端末として2014年一番よくできていたの端末はXperia Z3だと思います。マイナス点がほとんどなく、プラス点もそれほどないんですが、スマホについて何も知らない友人に勧めるとしたら、2014年だったらiPhone 6かXperia Z3。もっと小さいのがいいならXperia Z3 Compactという勧め方になります。言い訳がいらない完成度までもってきた点は、さすがソニーだと思います。
他方で、大きくて高額な端末ばかりはおかしいと思うわけです。そうすると次の2つ、AQUOS CRYSTALとZenFone 5になる。コンパクトでほかの人と違うということをフレームレスできちんと見せることができ、構造も分かるという点において、AQUOS CRYSTALはよくできていると評価しました。
みなさんおっしゃっているように、SIMロックフリーの流れでZenFone 5は重要な端末だったと思います。正直、SIMロックフリー端末のどれでもよかったと思っているんですが、大きさ、機能、スピードとバランス全体をみたときに、ZenFone 5はかなりよくできていると思いました。僕は、このクラスの端末を買う人は、メーカーをあまり気にしていないと思うんです。技術を知っている人はASUSもHuaweiも高く評価するし、技術を知らない人はどちらも知らない。だとすると、これと同じような端末が、2015年もっと売れるだろうなと思っています。
売れる、売れないでいえば、なぜソフトバンクがAQUOS CRYSTALにスピーカーを付けてしまったのか。日本の売り方だから仕方がないというのも分かるんですが、あの端末のよさをスポイルしてしまった。そこはキャリアの人は考えてほしいと思っています。
isaiを入れなかった理由は、ディスプレイの大型化と高解像度化のバランスが、2014年はまだ取れていないと思っているからです。自分で使っても周りの意見でもバッテリーが持たない、安定しないという声が多い。6型クラスでもフルHDプラスαくらいで抑えているのがバランス的にいいだろうと思っています。2015年は高解像度モデルが入ってくるだろうし、逆に入ってこなかったらメーカーは手抜きしていると判断します。
石野氏:Xperia Z Ultraのチャレンジを評価したい
石野氏 みなさんおっしゃるように大画面の1年だったなと思います。中でもGALAXY Note EdgeとXperia Z Ultra SOL24に関しては工夫がありました。GALAXY Note Edgeの場合はエッジスクリーン。使いやすいかどうかは別として、手帳というNoteシリーズのコンセプトに合わせて、インデックスという考えを曲面ディスプレイで実現しています。完全に技術志向なわけでもなく、デザインやコンセプトを合わせるために、こういうものを採用した点は面白いと思います。
ただ、はっきりいって、もっさり感がひどい。西田さんもおっしゃっていたように、WQHDは時期尚早というか、正直いらないとも感じています。得られるメリットに比べてデメリットが目立つ。WQHDのために、たぶん上位のCPUや大容量バッテリーを搭載しているはずですが、フルHDディスプレイと並べてじっくり見て、ようやく違いが分かる程度だと思うんです。HDからフルHDになったときのような飛躍、魔法がないという感じです。6型以下のディスプレイにQHDが本当に必要かどうかは、メーカーに真剣に考えてもらいたい。コンセプトは評価しているし面白いし、自分も買いましたが、実用面でマイナス面が大きいです。
Xperia Z Ultraは、あのサイズにチャレンジしたことに尽きるという気がします。小さめのタブレットというサイズですが、電話もできますし、重要なのはペン入力ですね。GALAXY Noteシリーズは静電容量式でワコムのペンを採用していますが、Z Ultraは普通の鉛筆でも認識するようにタッチパネルの感度を高くする工夫をしています。また、片手でホールドできるパスポートサイズで、日本に大画面ブームがくる前に一歩先取りし、さらにもうひと回り大画面を提唱していて非常に面白い。昨今のウェアラブルデバイスと組合わせて使うにもいい端末ですし、電子書籍も比較的読みやすい。
チャレンジングな機種だったと思うんですが、売れ行きが伴わず、ソニーの人たちにはネガティブな印象のようで、2014年はベースとなるグローバル端末が出ていません。ただ、ソニー自ら今後はプレミアム機種に専念していくと言っている中で、開発を打ち切るとしたら非常に残念。こういうモデルこそ数が取れなくても続けていくべきだと思います。ということでエールを込めてXperia Z Ultraをノミネートしました。
この流れでiPhone 6 Plusも入れたいんですが、僕は西田さんと真逆で、持った瞬間にこれダメだ、と思ってしまったんです。まず、この画面サイズで、持った瞬間にツルッと落としそうな背面処理が疑問です。iOSも大画面に最適化されていません。片手で届かないのに、アイコンを左上から自動整列していくのは論外だと思うんです。対策として搭載されたホームボタンのダブルタップで画面が下がる機能も、使う人は多くないでしょう。少し迷走しているように感じます。
逆に正統進化しているiPhone 6は適度に画面が大きく、文字も大きくできて、カメラもすごくきれいだし、背面の出っ張ったカメラレンズの処理を除けば非常に使いやすい。Android端末を使っていた人でも違和感なく使える完成度の高い機種だと思います。欲をいえば、RAMが足りなくてアプリがよく落ちるので改善してほしいですが、バランスが取れていて使いやすく、実際、よく売れていることもあってノミネートしています。
プレミアムな機種がある一方で、2014年は格安スマホやミッドレンジ端末が出てきた。HuaweiがSIMロックフリー端末市場を切り開いた功績は評価できるんですが、Ascend G6、P7 の対応バンドをみるとBand19(ドコモの800MHz帯)がなくて、ちょっと詰めの甘さがある。そこをZenFone 5にすくわれちゃったのかな、という印象があります。ただAscend Mate7は対応周波数が広く、あのスペックで税抜きとはいえ5万円を切る価格で出してくるのは、さすがHuawei。ZenFone 5とAscend Mate7とで迷ったんですが、Ascend Mate7は格安でもミッドレンジでもないので、2014年を象徴している機種としてはZenFone 5かなと思ってこちらを選びました。
皆さんがおっしゃっているように、ZenFone 5、そこそこのスペックですが、この価格帯では最もハイスペックですし、うまくまとめていて、ASUSは後発の割にがんばっている。タブレットやPCでの経験が生きていることがわかります。
2014年のもう1つのトレンドとして、端末が差別化しにくい中で、キャリアとメーカーの共同調達で独占販売という事例があったと思います。ソフトバンクとやったAQUOS CRYSTALはフレームレスのインパクトが大きかったですし、キャリアとうまくやって米国Sprintに流していることも非常に面白い。KDDIとLGのisai、HTCのHTC J butterflyも同様の事例ですが、インパクトが強いのはAQUOS CRYSTALだったと思います。スピーカーを付けちゃだめだよねというのは、みなさんと同じ意見です。アメリカ版を見ると価格がかなり抑えられていて、日本でもトータルの価格が安いですよ、という売り方ができたはずなのに。これがなければ、もう少し評価を高くしました。
関連キーワード
ZenFone 5 | AQUOS CRYSTAL | iPhone 6 | Xperia Z3 | GALAXY Note Edge | isai LGL22 | Xperia Z Ultra | Ascend Mate 7 | iPhone 6 Plus | Xperia Z3 Compact | GALAXY S5 Active SC-02G | GALAXY Note 4 | HTC J butterfly | isai VL LGV31
関連記事
- 2013年を代表するスマートフォン、発表!
モバイル業界やPC業界の動向を追いかけ、Webや紙媒体の各誌で活躍する10人のジャーナリスト・ライター各氏に、2013年を代表するスマートフォンを、「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2013」として選出してもらった。 - ソフトバンクモバイル、Sprintと共同開発した“フレームレス”スマホ「AQUOS CRYSTAL」を発表
ソフトバンクモバイルが、フレームを極限までなくした5型のスマートフォン「AQUOS CRYSTAL」を発表。日本では8月29日に発売し、米国ではSprintから発売される。 - 写真で解説する「AQUOS CRYSTAL」
極限までディスプレイのフレームをなくし、サウンド面も強化したシャープ製の新型スマートフォン「AQUOS CRYSTAL」。ソフトバンクモバイルとSprintとの共同開発で注目を集めている同モデルの見どころをお伝えしよう。 - 5.5型IGZO液晶や“エモパー”搭載の「AQUOS ZETA SH-01G」、11月14日発売
ドコモのシャープ製スマートフォン「AQUOS ZETA SH-01G」が、11月14日に発売される。5.5型のIGZO液晶ディスプレイや「エモパー」、「GR Certified」取得の1310万画素カメラを搭載している。 - Huawei、6型+8コアのSIMロックフリースマホ「Ascend Mate7」を12月に発売
ファーウェイ・ジャパンが、6型フルHDディスプレイにオクタコアを搭載したハイスペックなスマートフォン「Ascend Mate7」を、12月に発売する。 - 曲面ディスプレイ搭載の「GALAXY Note Edge」がドコモからも登場
ドコモは、曲面有機ELディスプレイを搭載したサムスン製Androidスマホ「GALAXY Note Edge」を発表した。10月下旬から順次販売を開始する。 - サムスンが「GALAXY Note Edge」を世界で最初に日本で発売する理由
サムスンが「GALAXY WORLD TOUR 2014 TOKYO」を開催し、国内で「GALAXY Note Edge」などの新モデルを披露。Note Edgeを世界で最初に市場投入する理由などを説明した。 - 「iPhone 6/6 Plus」は何が変わった?――「iPhone 5s/5c」との違いをおさらい
9月19日に発売される「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」。画面が大きくなったのは分かるが、ほかはどこが変わったのか? Appleが発表した情報をもとに、あらためて進化したポイントをまとめてみた。 - 大きくなった「iPhone」の使い勝手は? 旧iPhoneやiPad miniと比べてみた
「iPhone 6」の実力を測るロードテスト第1回は、4.7型に大画面化したディスプレイや端末のサイズ感に着目した。 - 国内スマホ初のWQHDディスプレイ搭載 「isai FL」を使って分かったこと
国内スマホで初めて、WQHD(2560×1440ピクセル)という高解像度ディスプレイを搭載したau「isai FL」。その使い勝手とはどんなものか、「isaiモーション」や「ノックコード」などの便利機能と合わせて試してみた。 - カメラやオーディオだけじゃない――「Xperia Z3」で追加された新機能まとめ
Xperia Z3の気になるポイントをさまざまな角度からレビューしていくロードテストを開始。第1回では、Xperia Z2から進化した部分を調べた。 - ソフトバンク、「Xperia Z3」を11月21日に発売
ソフトバンクは、ソニーモバイルの「Xperia Z3」を11月21日に発売する。 - Z3相当の機能をコンパクトなボディに凝縮――「Xperia Z3 Compact SO-02G」
幅65ミリのボディに4.6型HDディスプレイを搭載したハイスペックなコンパクトスマートフォン「Xperia Z3 Compact SO-02G」が、ドコモから11月中旬に発売される。【画像追加】 - ASUSのSIMロックフリーLTEスマホ「ZenFone 5」で注目すべき5つのポイント
ASUSが日本で初めて投入するSIMロックフリーのスマホ「ZenFone 5」。持ちやすいボディ、LTE対応で5型HDのIPS液晶、独自技術を盛り込んだ800万画素カメラなど、価格を抑えながらデザインとスペックにこだわったモデルだ。その注目点をまとめた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.