カウントフリー機能が契約の“ひと押し”に――シェア1位を維持する「OCN モバイル ONE」:MVNOに聞く
MVNO市場でシェア1位の「OCN モバイル ONE」を展開しているNTTコミュニケーションズが、差別化を図る新たな一手として「カウントフリー機能」を提供する。この新機能を含む最近の取り組みについて聞いた。
MVNO市場でシェア1位を誇るのが、NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」だ。ISPとしてのシェア、知名度の高さを生かし、SIMカードの契約者数も順調に伸ばしている。大手家電量販店や自社店舗の出店に力を入れる他社と比べ、リアル店舗への取り組みがやや遅かった印象はある一方で、2015年に入ってから展開を加速させ、ゲオとの提携や自販機の設置など、注目の動きを見せている。
このOCN モバイル ONEで、新たに始まったサービスが「カウントフリー機能」だ。ISPであるNTTコミュニケーションズは、IP電話の「050 plus」やオンラインストレージの「マイポケット」など、さまざまなサービスを提供している。カウントフリーは、こうしたサービスを利用する際にだけ、データ通信量を消費しないというものだ。文字通り、データ通信のカウントをフリーにする新機能といえるだろう。
こうした最近の取り組みの狙いを、NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長の山本雪絵氏に聞いた。
4月の容量拡大で3GBプランのユーザーも増えている
―― MVNOのシェア調査では、1位を継続しています。まずは、この点をどう捉えているのかをお聞かせください。
山本氏 1位はお陰さまで、継続的にいただいています。ただ、世の中一般に、もっと使っていただきたい。そこへのアプローチは続けていきます。カウンターを家電量販店に設置するなどはしていますが、もっと気軽に、普通に申し込んでいただけるようにするにはどうすればいいのか。端末のかっこよさや、買いやすさ、すぐに使えることが重要だと思います。私自身もそういう人間ですが、SIMカードを差し込むのでもちょっと怖い。でも、これが普通の感覚だと思います。
―― 4月に容量を拡大しましたが、その影響はありましたか。
山本氏 1日70Mバイトから1日110Mバイトに増やしたプランがありますが、もともとはそこが大半を占めていました。これが4月に容量を増やしたことで、月3Gバイトのプランが少し増えています。これぐらい容量が増えれば、月あたりのプランに興味を持っていただける方が増えるという傾向は、見えてきました。
―― なるほど。月に3Gバイトもあれば、1日ごとに容量が決められてしまうより、その中でやりくりした方が使い勝手がいいのかもしれないですね。
山本氏 はい。とはいっても、まだ110Mバイトのプランが半分以上で、割合がすごく変わったわけではありません。傾向が見えてきたということですね。
―― 総数はいかがですか。これだけデータの単価が落ちてくると、飛びつく人も増えそうですが。
山本氏 伸びとしては順調ですが、4月1日からいきなり増えたということはありません。
SIMを自分で入れることに抵抗がなくなってきた
―― 冒頭でもお話に出ましたが、リアル店舗の取り組みを強化しているように見えます。この点については、いかがでしょうか。
山本氏 サービス自体の強化も必要ですが、販売チャネルも拡大していきます。すぐ使いたいというご要望にいかにお応えするのかは、注力したいところです。
―― そうした取り組みを続けていく中で、ユーザー層が変わったということもあるのでしょうか。
山本氏 もともとはAmazonが“売れるチャネル”でしたが、量販店などを始めて、徐々にではありますがそちらの数も増えてきています。ゲオさんとは全国的にやっていますが、詳しい方々が多い。もう少し一般に広げるという意味で、ヨドバシカメラさんにも広げました。
世の中的にも、SIMカードを自分で入れることに対して、あまり抵抗がなくなってきているのだと思います。そういったことに興味がなかった、知らなかった層の方々から、「そんなことだけでこんなに安く使えるのか」という声も聞こえてくるようになりました。OCNがやっているということで、安心して使えるという年配層の方が増えているのも、肌感覚としては持っています。
―― 販路を広げるという意味では、自動販売機の設置も行っています。こちらについては、売れ行きなどはいかがでしょう。
山本氏 自販機は、手続きが2分ぐらいで済むのがメリットですね。数として一番出ているのが関空(関西国際空港)です。興味を持っていただき、「これは何だ」と見ていただけるところから始まり、実際に買われる外国人の旅行者もいます。
―― ちなみに端末とSIMカード単体、どちらが売れるなど、傾向はありますか。
山本氏 そこはSIMだけの方が、やはり多いですね。
「カウントフリー」機能が契約のひと押しに
―― こうした取り組みと並行して、サービス自体も強化されています。中でも「カウントフリー機能」は注目を集めたと思いますが、この狙いを教えてください。
山本氏 料金、機能だけではなかなか……。うちがやれば他社がやる、他社がやればうちがやるということで、どうしても差が出なくなってきています。そんな中で、何で差別化するのかという意味でのサービスです。
―― 050 plusはIP電話なのでそれほど帯域を占有されることはないと思いますが、マイポケットはオンラインストレージです。こちらは写真をまとめてアップロードされるなど、かなり大量の通信をしようと思えばできてしまいます。ここは大変だったのではないでしょうか。
山本氏 設計上は、大丈夫ということで提供していますし、今のところ、そういった問題は出ていません。もちろん、あらかじめそういう使い方をする方々も出てくることを、予想はしていました。
―― これによって、サービスの利用が増えたり、OCN モバイル ONEへの加入者が増えたりといった効果はありましたか。
山本氏 最後の決め手として、これがあるから入るという“ひと押し”にはなっています。コールセンターなどでお客様がどうしようかと悩んでいるときに、「こういうところが特徴」とお伝えできますからね。まさに今から、これを売りにしていこうとやっているところです。
―― なるほど。ちなみに、カウントフリーは今のところ050 plusとマイポケット、それにターボ機能のオン・オフの3つですが、これを今後拡大していくこともあるのでしょうか。
山本氏 設計は十分やっていますが、そこはもうちょっと様子を見たいと思います。拡大できるのは、そこ次第ですね。
カウントフリー機能は“ネットワークの中立性”からは問題ない?
―― NTTコミュニケーションズのサービスだけ優遇するとなると、「ネットワークの中立性」の観点から議論を呼びそうですが、社内ではどのような整理になっているのでしょうか。
山本氏 今のところ、そういった声は特に聞いていません。
※本件について、あらためてNTTコミュニケーションズに確認したところ、「特定アプリの全ユーザーに同等の制御をする場合は、不当な差別的取扱いに当たらない可能性が高く、本件もこれに該当する」とのこと。また「通信の秘密に抵触する恐れがある点」については、「通信事業者が課金と料金請求の目的で顧客の通信履歴を利用する行為は、正当業務行為されており、本件もこれに該当する」とのこと。
―― 加入者が順調に増えているOCN モバイル ONEですが、逆にユーザーが増えすぎて速度が出ないといったことはないのでしょうか。混雑具合などを教えていただければと思います。
山本氏 お客様の声としては、あまり聞こえてきていません。比較的スムーズにご利用いただいていますが、あえて言うとすると、お昼(にちょっと遅い)というのはあります。ただ、それで全然通信ができなくてダメというわけではなく、十分な設計はしています。こうしたところは、OCNの強みですね。
取材を終えて:一般ユーザーを呼び込む施策にも期待
新たにカウントフリー機能を導入したOCN モバイル ONEだが、同社でもこれを差別化の軸と見ているようだ。4月に各社が料金を改定し、3Gバイトで900円台という相場ができ、MVNOの料金競争も一段落しつつある。自社のサービスをどうように活用していくかという競争も、今後は激化しそうだ。
OCN モバイル ONEは、インタビュー中にもあるように、どちらかといえばネット販売を軸にユーザー数を増やしてきた。リアル店舗の拡大は、まだ途上といえるだろう。逆に考えれば、ここが伸びしろにもなる。すでにゲオやヨドバシカメラでの販売は始めているが、山本氏の言うような、より一般ユーザーに響く取り組みにも期待したい。
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