「Sprintのネットワークは全米1位になる」――米国事業の手応えを語る孫社長
1年前は孫社長が「売りたい」と思ったほど頭を悩ませていた米Sprintの通信事業だが、現在は「ソフトバンクグループの稼ぎ頭になる」と言うほどに反転。孫氏は4つの要因があると語る。
1年前はSprintを売りたかったけど、誰も買ってくれなかった
Sprintがソフトバンクグループの稼ぎ頭になる――。ソフトバンクグループの孫正義社長は、2015年度第3四半期の決算会見で米Sprint事業が大きく反転したことを語った。
Sprintはソフトバンク(現ソフトバンクグループ)が買収してからも契約数の純減が止まらず苦戦を強いられており、「去年(2015年)の今頃は、Sprintをうっぱらいたいと思った」と孫氏は明かす。「T-Mobileの買収、合併が最初に思い描いた通りに行かなかったので、売るしかない(と思った)。でも誰も買ってくれなかったので、自分で改善するしかない。背水の陣で取り組んだ」と振り返る。その結果、2015年に業績を好転させることができた。
2015年4〜12月のEBITDA(償却前の営業利益)は60億ドルで、前年比で41%増加。営業利益も前年の−0.8億ドルから3億ドルにまで改善された。孫氏は、ここまで大きく反転できた要因は4つあると説明する。
1つ目が純増数の改善。優良顧客を増やし、ネットワーク品質を改善したことで解約率が低下し、2015年10〜12月で過去最高となる50.1万の純増数(ポストペイド)を記録した。
2つ目が経費を削減したこと。2015年4〜12月で対前年比で8億ドルの削減に成功した。「私の目から見ると、Sprintはじゃぶじゃぶと無駄な経費を使っていた。(当時の)ソフトバンクモバイルで最初に手を付けたのが固定費の圧縮だった。(Sprintでは)750項目ほどの経費削減プログラムが走っている」(孫氏)
3つ目は、多様な手段で資金を調達できること。そして4つ目が先にも述べたネットワークの改善。基地局を増やすなど設備投資によって着実に品質が向上し、第三者機関(ニールセン)の速度調査では、米国の4キャリアの中で、Sprintの実効速度が最も速いという結果も出た。また、通話の切断率も、2014年1〜6月の0.9%から、2015年7〜12月には0.4%まで下がり、「他社と比べてもかなり良い」(孫氏)という。
ただしネットワークの品質は「今のままで満足しているわけではない」と孫氏は付け加える。今後は日本のソフトバンク並みまで品質を向上させ、「断トツの1位になる」と息巻く。「自分がチーフネットワークオフィサーに名乗り出て、ほぼ毎日、土日祝日も、ネットワークの具体的な設計に携わっている。これが楽しくてしょうがない」と孫氏は笑顔で話し、「間違いなく、Sprintのネットワークは全米1位になる」と自信を見せた。
「実質0円」終了による影響は?
総務省の要請により、2月に「実質0円」でのスマートフォンの販売を終了した件について孫氏は、「目先に払うお金(端末代)が、特に若い人には負担だろうということで、(実質0円は)5万円、10万円を払わなくて済むように、よかれと思って提供したことを、けしからんとおっしゃる方がいるので、じゃあ変えましょうと。しかし本当に改善なのか改悪なのかは、いろいろ議論があるところだと思う」と話し、複雑な心境をのぞかせた。
一方、「若いヘビーユーザーには(ギガ学割で)数GBをプレゼントしている。端末の負担が減った分、別の形で還元している」(孫氏)が、全ユーザーを対象とした通信料金の値下げについては「いろいろな形での還元はあると思う」と明言を避けた。
販売面での影響については、ソフトバンクの宮内謙社長が「1月末まで相当激しいキャッシュバック戦争だったので、1月末と2月を比較すると、相当減ったように見えるかもしれないが、昨年2月と今を比べると、それほど激減していないと思う」とコメントした。
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