JR東日本幹部が語る「iPhoneのSuicaでできること、できないこと」――iCloud連携で、無記名カードでもセキュリティが格段に向上:石川温のスマホ業界新聞
待望の「Suica」対応を果たしたiPhone 7/7 Plus。しかし、Androidスマートフォンの「モバイルSuica」とも違うその仕組みには、まだまだ謎も多い。そこで、JR東日本の小縣方樹副会長への取材を通して、それを少しでも解いていこう。
アップルがiPhone 7/7 PlusやApple Watch Series 2においてFeliCaを搭載してきたのは大きなニュースと言えた。9月7日に開催されたアップルの発表会イベントでは、JR東日本の小縣方樹副会長もゲストとして招待されており、メディアの取材に応じていた。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年9月24日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
10月下旬のサービス開始に向け、まだまだ謎の多いiPhoneのモバイルSuicaにおいて、小縣氏の取材から明らかになったことを整理していきたい。
まず、iPhoneでモバイルSuicaを使う上での最初のステップは、所有するSuicaカードからiPhoneへ情報を移行するところから始まる。ここは、すでに明らかになっているように、SuicaカードにiPhoneをかざすことで、Suicaのなかにある残高や定期券の情報がiPhoneに転送される。
小縣氏も「iPhoneをカードにかざすと、Suicaの残高や定期券の情報がiPhoneに移行する。すでにSuicaは普及しているが、iPhoneを心待ちしている人にとっては移行しやすいのではないか」と胸を張る。
また、Apple Payでは複数のカードを切り替えて使える操作性になっているが、Suicaにおいても「ひとつのiPhoneのなかに複数のSuicaを入れられる。通勤用とプライベート用、その他といったように使い分けができる」(小縣氏)という。
また、チャージに関しては「Apple Payに登録したクレジットカードで簡単にできるチャージできる」(小縣氏)としている。Apple Payのアプリ上ではオートチャージには非対応と思われるが、「別にSuicaアプリを入れればオートチャージができる」(関係者)ということで、Suicaアプリを入れることでオートチャージができるようだ。
これまでのモバイルSuicaでのオートチャージ関しては、JR東日本の関連会社が発行するVIEWカードのみでの対応であった。iPhoneでも同様の対応になる可能性については「その辺の細かいところは、これから明らかにしていく。今日の時点ではお答えできない」(小縣氏)ということであった。このあたりは、すでに提供しているサービスとの兼ね合いもあるため、アップルや他のクレジットカード会社と協議をしている段階なのかも知れない。
Apple Pay上のモバイルSuicaは、機能的には限定されたものになるようだ。しかし、すでに提供しているモバイルSuicaと同等のサービスを実現するため、JR東日本では独自に「Suicaアプリ」を提供する計画のようだ。
小縣氏は「細かい機能を順番に出していく。そうはいっても、Apple PayとSuicaアプリで合わせて様々な機能が使えるようになる。アプリはPhone7に向けて、イチからきちんとデザインして作った。Suicaアプリなら、新規にSuicaの発行をしたり、定期券、グリーン券、新幹線特急券の購入が行える。利便性は高いのではないか」と語る。
JR東海の東海道新幹線予約についても「今後、お話しさせていただくが、基本的には、SuicaのIDと連動して乗れるようにしている。プラスティックカードでも乗れるようにしている。その辺の不都合はない。モバイルSuicaアプリ内にあって、予約して乗れるが、今後はプラスティックカードとIDが紐付いて乗れるようになる。現実的には問題ない」(小縣氏)。
すでにモバイルSuicaでは、ビューカードやエクスプレスカードを持っていればそのまま東海道新幹線に乗車できるが、実はJR東海では2017年夏の開始に向けて、交通系ICカードと一般的なクレジットカードを紐付けることで、スマホで指定席を予約し、交通系ICカードを改札機にタッチするだけで新幹線に乗れるというサービスを準備している。
そのため、いずれにしてもiPhoneで東海道新幹線にも乗れるようだ。
すでにSuicaカードを持っている人であれば、iPhoneに読み込ませるだけで済むが、関東以外に在住している人としてはSuicaカードを調達するのは困難だ。そこで、簡単にSuicaデビューできるように、Suicaアプリから新規発行できるように準備されている。
小縣氏も「関東以外の人はアプリからSuicaを始められる。すでに相互利用ネットワークが完成し、北海道から九州までインフラができている。特に関東での使用頻度が高いが、iPhone7の対応によって、関東以外の地域での利用が伸びると期待している」という。
また、セキュリティ面の強さもiPhoneでモバイルSuicaを使うメリットになる。
小縣氏は「私ども自身のセキュリティは世界最高レベルのシステムといえる。我々はセイフティ、セキュリティ、クオリティを大事にしているが、アップルも同様に極めて厳しい目とポリシーを持って開発に臨んでいる。従来から定期券をなくしても、きちんと連絡があれば止めて使えなくしていたが、これからはiCloud上で、iPhoneを探して、止めることもできる。今まで以上にセキュリティが高まるのではないか」と期待する。
無記名カードも無記名なままだ。無記名カードを落としても、Apple IDと紐付いているので、iPhone探すやiCloud経由であれば、止めたり、残高保全できるのが魅力だ。
いずれにしても、iPhoneのFeliCa対応で、モバイルSuicaのユーザーは一気に拡大しそうだ。
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