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カトリーナ災害の教訓でディザスタリカバリはどう変わる?

» 2006年08月29日 10時34分 公開
[Larry Dignan,eWEEK]
eWEEK

 2001年9月11日のテロ攻撃は、ディザスタリカバリに関する新しい考え方を企業に促した。2005年8月29日にニューオーリンズに上陸したハリケーン「カトリーナ」は湾岸を破壊し、1300人以上の犠牲者を出した。これにより、企業はディザスタリカバリ計画を再考せざるを得なくなった。

 カトリーナから1年、負担金が増える中で企業にとって起こりうる最悪のことは何か? バックアップセンターはどれくらいの距離に置くべきか。100マイルか、1000マイルか、5000マイルか? 災害が襲ってきたときに、自分の企業資産がどこにあるのかをどうしたら知ることができるのか? エネルギーをより効率的に使うための方法は? 実用性では? コスト的には?

 カトリーナにより、多くのディザスタリカバリの弱点が露呈されたが、そこから得られた教訓が幾つか見つかりそうだ。

教訓1:バックアップセンターはできるだけ遠くに

 教訓を生かそうとしている例――カトリーナ後のニューオーリンズ復興における代表的な企業であるOreckは、ミシシッピ州ロングビーチの本社工場から573マイル離れたテネシー州クックビルに新しいバックアップ施設を開設した。同社は本社からわずか76マイルの距離にバックアップ施設を置いていたが、カトリーナにより本社もバックアップも両方が閉鎖されてしまったので、近すぎるということが分かった。クックビルの方が安全な距離としては妥当なものと言える。

教訓2:災害時には、サプライチェーンが重要

 教訓を生かそうとしている例――米国土安全保障省の連邦緊急事態管理局(FEMA)は、自らのロジスティクスとサプライチェーン機能、そしてそのサポート用ITを調査している。

 5月にFEMAのディレクターであるデビッド・ポーリソン氏は、FEMAではトレーラートラックが倉庫を離れた後は、その追跡ができていないことを記している。「われわれは非常に高度なGPSを設置した」とワシントンのポーリソン氏。FEMAはWal-Mart、Federal Express、UPSなどのサプライチェーン専門家から多くのことを学べると同氏は認める。「われわれの倉庫から出ていくトレーラートラックにはすべてGPSが装備され、リアルタイムで地図上の位置を追跡することができ、すべての車両の位置を特定できるようになるだろう」(ポーリソン氏)

教訓3:エネルギーについては誰もが心配している

 カトリーナで企業は電気・ガス・水道の完全遮断に対応する計画を立てる必要に迫られ、工業使用に耐えうるバックアップ発電機と、少なくとも1週間は持つディーゼル燃料を手当てしなければならない、と教えられた。また、カトリーナは米国のエネルギーインフラストラクチャの弱さをさらけ出した。ガソリン、天然ガスの価格は急激に上がり、その後1年もエネルギー価格の高騰は続いた。

 教訓を生かそうとしている例――企業ユーザーとそのサプライヤーはエネルギーへのフォーカスを強めている。幸いなことに、テクノロジー業界は電力消費問題に正面切って取り組んできた。AMD、Intel、Hewlett-Packardは新しい、エネルギー効率の高いチップデザインで先陣を切っている。

 このように教訓が浸透しつつあるということには希望を持てるのだが、1つだけ障害がある。災害対策についての通知表は次の災害が起きるときまでは手渡されない。死と税金のごとく確実に、遅かれ早かれ、災害は必ず起きるのだ。

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