31年間の集大成――「dynabook V」に込められた開発者の“魂”(2/2 ページ)
東芝がPC事業を分社して8カ月。分社後初の新モデルである「dynabook V」は、東芝が31年間に渡って培ってきた技術の集大成であるという。
ユーザービリティ
もう1つの柱であるユーザービリティ面も、並々ならぬこだわりがある。
dynabook Vシリーズは、企画の初期段階から「(超低電圧版ではない)高性能なCoreプロセッサーを搭載する」(柏木氏)ことを最優先課題にしていたという。通常、コンパクトなモバイルノートPCでは、発熱や消費電力を抑えるためにTDP(熱設計電力)が4.5Wの「Yプロセッサ」を採用することが多いが、dynabook Vシリーズでは一般的なノートPCと同じTDPが15Wの「Uプロセッサ」を採用した。
そのため、CPUなどから出る熱の処理が重要な課題となった。そこで、dynabook Vでは、HDD用の軸受技術を応用した薄型ファンを新たに開発し、本体の底面に加えて背面からも冷却用の空気を吸い込む「W吸気」とすることで放熱効率を向上した。この結果、Uプロセッサを問題なく搭載できるようになったのだ。
また、ノートPCにおいてスピーカーの利用頻度が高まっていることもあり、内蔵スピーカーにもこだわっている。harman/kardonとバスレフ型ステレオスピーカーを共同開発し、その形状・向きやボディー内での配置に工夫を凝らした。結果、薄いモバイルノートPCとしては聞こえの良いスピーカーに仕上がっている。
dynabook KIRA L93やdynaPadのコンセプトも合わせ持つdynabook Vシリーズの画面には、ワコムと共同開発したデジタイザーが内蔵されている。画面の表面処理とデジタイザーペン(上位機種には付属、下位機種は別売)の芯の両方を改善することで、数値上は「紙とボールペンとほぼ同等なレベル」(柏木氏)の摩擦係数を確保した。筆者も実際に書き味を確かめてみたが、確かに紙と同じ感覚で字を書いたり絵を描いたりできた。
また、画面は映り込みの少ないノングレア(非光沢)処理となっており、特に屋外での利用時の画面の視認性が向上している。タッチ操作した際に指紋が目立ちにくくなる加工も施されている。
文字を多く入力する職業の人間にとって“命”ともいえるキーボードは、薄型ボディーながら1.5mmのストローク(押し込み幅)を確保している。また、キートップ形状の工夫や、先述のネジ止め位置の最適化によって、良好な打ち心地を実現した。さらに、キートップの印字フォントをより見やすいものに変更している。暗所で利用する際に便利なLEDバックライト(3段階)も搭載している。
ログインを簡略化する手段として重宝する生体認証は、全モデルで指紋認証(タッチセンサー式)に、最上位機種である「V82」はそれに加えて顔認証に対応している。特に顔認証については、Vシリーズのために薄型のカメラモジュールを新規開発している。
東芝のPC事業が分社してから初めての新モデルであるdynabook Vシリーズは、そこかしこに開発者(技術者)の“魂”が感じられる意欲作だ。「一台で、かなえてみせる」というキャッチフレーズの通り、1台で何でもこなせるパワフルなモバイルノートPCに仕上がっている。
一部の家電量販店では、dynabook Vシリーズの実機を展示するという。dynabookの31年間の集大成を、ぜひともその手で触れてみてほしい。
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