【実録】生成AIで記事制作はどれほど効率化できるか SaaSビジネス専門メディアの検証結果
AIに取って代わられる仕事の代表格として、記事制作やライティングがしばしば挙げられる。
確かに、生成AIブーム以前からSEO対策を目的としたメディア記事などには、コピペに近い内容も多く、「誰にでも書ける」記事は今後大量生産されることが想定される。
しかし、一言に記事制作といっても、そのジャンルや視点は多岐にわたる。実際に取材を行い、専門的な知識を要する事象を多角的に編集する「人間的」なコンテンツ制作においては、AIはまだ万能とは言えない。一方で、記事作成における工数を削減する必要があるのも確かだ。
そこで今回は、筆者が運営するメディアで、外部コンサルタントにアドバイスをもらいつつ実践した「生成AIでどれほど記事制作が効率できるか」を巡る検証の様子を紹介する。
本記事はSaaS企業分析メディア「Next SaaS Media Primary」を運営する早船明夫氏による、同メディアの運営に関するコンテンツです。ITmedia AI+の運営やAI活用方針とは異なります。
基本的には全て自身で執筆 コンテンツ制作をどう効率化する
現在、筆者は「Next SaaS Media Primary」というSaaS・クラウド企業、スタートアップに関する専門メディアやデータの組成を行っている。サブスクリプションの有料会員数は数百名規模ではあるものの、SaaS企業のみならず、機関投資家やベンチャーキャピタルなど金融機関による法人営業会員を抱えている。
また、本メディアでの内容をより一般化し、日経新聞やNewsPicks、ITmediaなどの外部メディアにも記事を提供し、SaaSビジネスの理解促進に努めている
Next SaaS Media Primaryで提供しているのは、SaaSビジネスを営む上場企業やSaaSスタートアップへの独自取材・分析記事だ。
一般的な取材記事などよりも専門的な観点を伝える性質上、外部ライターなどへの外注も難しく、基本的には全て自身で執筆している。
そのため記事作成の工数が業務上の課題となっていたため、AIを用いた新規事業開発・DX推進支援を300社以上行ってきたQED(東京都千代田)の室伏正裕代表取締役の力を借りつつ効率化を目指した。
数ある生成AIツール、何を使うべきか
まず、筆者が通常書くような記事の構成は、基本的には以下のイメージだ。
記事の制作では、事前にテーマを決めた上で、経営者へのインタビューを行う。記事構成としては、いきなりQ&Aに入るのではなく、まず取材の前提やポイントをイントロダクションとして分析的にまとめ、その後、Q&Aパートへと移行する流れが多い。今回は、このQ&Aパートの執筆が省力化できるか試した。
プロセス1:Google AI Studioを活用した音声の話者分離とテキスト化
最初のステップでは、Zoomや対面取材の音声データを文字起こしし、話者を分離した上でテキスト化する。
通常の音声データは複数の話者が混在しており、誰が発言したかが識別されていないため、話者を分離することでテキストの精度を向上させ、より使いやすいものにできる。
この作業にあたり、今回、室伏代表取締役の推薦により米GoogleのAI活用・開発プラットフォーム「Google AI Studio」経由で、同社の大規模言語モデル「Gemini」シリーズを活用し、以下のプロンプトを設定することとなった。
「前提として、AIツールは開発競争が激しく、機能自体は日進月歩で進化しており、最適なツールが変わって行く可能性がある。その中で、音声の話者分離をさせるツールとしては、Google AI Studioは無料でも精度の高いテキスト化が可能。また、今回の記事内ではスタートアップに関する専門用語も出てくるが、そういった単語の特定精度も高い」(室伏代表取締役)
なお、Google AI Studioを利用するにあたっては、読み込ませたデータがAIの学習データとして利用される可能性があることに留意したい。本記事の作成においては、事前に機密情報や内部情報に該当する可能性がある音源をカットしている。
プロセス2:出力されたテキストをGoogle AI Studioでさらに読みやすく
最初のプロセスで出てきた文章は、「ええと」や「あの」などの発言も含まれるため、読みづらい。そのため、再度、Google AI Studioを使い、テキストの調整を行っていく。この作業のためのプロンプトは以下を設定してもらった。
そして、このプロンプトを経て出力されたテキストが以下の通りだ。
文章の精度が向上し、より自然なやり取りに仕上がっている。このまま本文に活用できると判断できるレベルだ。筆者はこれまでに「CLOVA Note」などのAIツールを使用してきたが、それらと比較すると、今回のプロセスで生成されたテキストの方が明らかに精度が高いと感じた。
プロセス3:Dify×ChatGPT を活用した編集
ここまでのプロセスだけでも省力化が実現できたが、生成された文章を記事向けにさらに編集する作業も効率化する。
今回の編集では、AIワークフロー構築ツール「Dify」を使い、Geminiで複数回の処理を行うことで、これまで筆者が書いてきた文章に近い形にすることを試みた。
Dify上で処理されるフローは以下の通り。設定が一定煩雑であるため要点のみを抜き出した。
ざっくりと説明すると、Geminiで3回記事内容の表現や校正を修正していき、最後に再度Geminiで別途同様の指示で出力した文章と差分をチェックすることで、AIのよる記事のダブルチェックを実現したイメージだ。
Difyを用いることでワンクリックで4つのGemini処理が自動実行される設計となっており、手動での入力ミスや抜け漏れを防止している。
このプロセスによって、インタビューのやりとりだけでなく、イントロダクション部分や、文章内の表題なども生成され、かなり記事に近いテイストのテキストが出力される。
今回、最終的には、プロセス2と3で生成されたテキストを組み合わせたり、加筆・修正したりしながら編集を行い以下の記事として仕上げていった。
実際の記事制作に活用した実感――工数を50%削減
AIを活用する場合としない場合を比較すると、ざっくり50%ほどの効率化が実現できると感じた。
特に、プロセス2で出力されたQ&Aパートのテキスト化の精度が高く、記事をブロックのように組み立てることで、執筆スピードが格段に向上する。ただし、記事全体の読みやすさや要点の強調には、人間の編集が不可欠だと改めて実感した。
筆者が今回行った最終的な編集のポイントは以下のとおりだ。
- 会話の順序を入れ替え、より流れが自然になるよう調整
- インタビュー相手の発言を適切に意訳し、文章として読みやすく整理
- 記事全体を統一感のあるテーマに沿って構成
ただ、AIが出力する文章は一般的・抽象的になりがちである点にも注意が必要だった。AIは”最大公約数的”な表現を用いる傾向があり、AIらしさが残る文章は読者にも違和感を与えやすい。
今後、AIによる類似コンテンツの量産が進むと、人間の意図的な編集の重要性はさらに増していくだろう。実際、今回制作した記事のイントロダクションも、AIが出力したものでは核心を突く内容にならず、筆者自身が一から書き直した。
課題はあるものの、最新のツールを活用することで、記事制作の生産性は大幅に向上することを実感した。以降、継続的にAIを取り入れた執筆手法を採用しており、もはやAIなしの記事執筆は考えにくい。これは、スマートフォンを使う前と後で生活が一変したような、不可逆的な技術の変化に近い感覚だ。
AIは今なお進化の途上にあり、今後も新たな可能性が広がると考えられる。しかし、最終的にその力を生かせるかどうかは、使い手自身の試行錯誤にかかっている。
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