“Google対抗”のAI検索「Perplexity」が模索する、出版社との共存共栄
長年、インターネット検索で一強とされてきた「Google検索」に対抗する存在として、“AI検索”サービスがにわかに注目を集めている。米国のスタートアップPerplexity.AIが開発する「Perplexity」がその一例だ(関連記事)。2022年創業の新興AIサービスだが、世界中で1日当たり約2000万件、月間約6億件の質問に回答しているという。
従来の検索エンジンにはなく、Perplexityの根底にあるのは「回答エンジン」という考え方だ。従来の検索エンジンは、ユーザーが検索窓に入力するクエリに応じて、関連するリンクを表示するのが一般的だ。これに対し、Perplexityはユーザーの質問文に対し、テキストという形で回答する。
Perplexity.AIのジェシカ・チャン氏(パブリッシャー・パートナーシップ担当)は「Perplexityは、ユーザーが必要な情報を効率よく収集することに特化している」と説明する。「従来の検索エンジンは(検索結果で)リンクだけを提示する。その情報が正確かどうか分からないし、リアルタイムとも限らない。対してPerplexityは必要な情報を文章化し、ソースとともに提示する」(チャン氏)
Perplexityの検索画面では、テキストの回答ともに、その根拠となるソースのリンクも表示される。チャン氏は「どこのWebサイトから情報を引用しているか、当社は明示している」と強調する。こうした明確なUIが、ユーザーや出版社(パブリッシャー)から支持される差別化ポイントの一つという。
他方、Googleも、生成AIが情報を要約して提示する機能「AI Overview」を導入している。同様の機能を巡っては、ネットで「情報が不正確だ」という指摘もしばしば見られる(関連記事)。
Perplexityの場合、不正確な情報をどのように排除するのか。チャン氏は、一例として「シグナル」という独自の評価指標を開発していることを挙げる。信頼性が低く“引用してはいけないWebページ”を排除する仕組みだ。
同社によると、特定のクエリに対し、どのWebページをソースとして引用するかを決定するために、50個以上のさまざまなシグナルを使用している。詳細は明かしていないが、シグナルは(1)トピックについて信頼できる説明ができるドメインであるかという「権威性」、(2)正確な情報である可能性が高いかという「正確性」、(3)ユーザーの質問に対応した情報になっているかという「関連性」──などの評価に寄与しているという。
Perplexityが模索するパブリッシャーとの共存共栄
適切なソースを引用するには、信頼できる情報を提供するパブリッシャーとの協力が必要だ。しかしパブリッシャーの中には、自社の記事が生成AIの回答に利用されることを“ただ乗り”として批判する向きもある。
例えば、米紙The New York Times(NYT)は2023年12月、米OpenAIと米Microsoftを著作権侵害で提訴した。両社がLLMの学習のために、NYTの膨大な記事を無断で使用したという主張だ。同様にNYTは2024年10月、Perplexityに対しても記事の使用停止を求める通告を出している。
こうした動向に対し、チャン氏は「当社としては(批判の方向に進む)トレンドとは考えていない」と強調する。「パブリッシャーとともに、互いに成功する方法があると考えている」と言い、その最初のステップとして「Perplexity Publishers' Program」を用意したと述べる。
Perplexity Publishers' Programとは、Perplexityの広告収入をパブリッシャーに還元するプログラムだ。Perplexityの検索画面に広告が掲載されている場合、その検索結果にソースとして表示されたパブリッシャーに収入の一部を支払う。すでに米国で先行スタートし、日本でも展開を予定している。
プログラムに参加するパブリッシャーには、Perplexityの各種API、企業向けのAI検索サービス「Enterprise Pro」も提供する。
チャン氏は「世界中で100社以上のパブリッシャーからプログラムについて問い合わせを受けている」と説明する。2024年12月時点で世界各国の12社がプログラムに参加。日本では、「ライブドアニュース」などを運営するミンカブ・ジ・インフォノイドや、NewsPicksが参加している。
パブリッシャーに還元する広告収入は、ソースが引用された頻度によって増えるモデルだ。Perplexityのユーザー数が増えれば、よりパブリッシャーに収入が還元される仕組みとし、AI検索サービスとパブリッシャーの共存を目指す。
新興のPerplexityは、まだ事業黒字化のめどは明らかにしていない。ただ、パブリッシャーとの共存関係を築いていく中で、事業成長のキードライバーとして「ユーザーからの質問数を重視する」(チャン氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia AI+に関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
2
引退した人型ロボ、“溶けた鋼の海”に沈む アーノルド・シュワルツェネッガー氏が提案 米企業が動画公開
-
3
国産AI「LLM-jp-4」ベースのAIモデル、KDDI傘下のELYZAが無料公開
-
4
総額2.3兆円、千葉市に巨大な「AIデータセンター」建設へ 発電大手JERA参画の“ドリームチーム”、勝機どうつかむ?
-
5
「FDE」は常駐SEのすげ替えなのか “人月商売の死”を打破したい国内SIer、打開策は意外なところに?
-
6
ChatGPTの“利用制限”リセットへ 有料ユーザー向け
-
7
富士通が脱人月モデルへ CROが説く「AI時代のバリュープライシングへの転換」とは
-
8
「DMに逃げる理由は秘密保持ではない」 人とAIエージェントの“最強チーム”を作るベストプラクティス
-
9
「Claude」3倍高速化の裏で、Anthropic開発者が「あえてしなかったこと」:899th Lap
-
10
Rails作者DHH「Pencils Down、もう手でコードは書かない」 それでもソフトウェア開発の未来は明るい理由
SpecialPR
ITmedia AI+ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmedia AI+をフォロー
あなたにおすすめの記事PR