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米IT企業で続く大規模リストラ 「その原因は生成AI」は本当か? 人員整理の理由を探る(1/3 ページ)

 米国のIT企業において、大規模なリストラによる人員削減が話題になっています。既に2025年中に5万7000人以上が解雇されており、今後も続くようです。こうした状況で「生成AIで仕事が奪われた」「日本でも生成AIによってリストラが起こるのでは?」などの不安も見受けられます。真相に迫ってみました。

生成AIで9割がリストラ

米IT企業でリストラが続くのはなぜ?

 現実問題として米IT企業である、Google(Alphabet)、Amazon、Meta、マイクロソフト、セールスフォース、インテル、ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)、インテル、シスコシステムズ、デル・テクノロジーズ、IBM、セールスフォースなどで数千から数万人規模のリストラが行われました。

 生成AIが大きく影響する職種であるソフトウェアエンジニアも解雇されており、エンジニアの新規採用を止める会社もあります。一見すると生成AIの影響とも考えられます。しかし、リストラの原因としてはコロナ禍における大量採用と税制の変更が影響しています。

 コロナ禍において出勤や外出の機会が減り、ネット通販の需要やオンライン作業の場面が増えました。GAFAMなどのIT企業は関連する製品やサービスの需要が増えて、業績も伸長。そこでリモートワークに移行して人材採用を増やし、エンジニアや管理職などさまざまな職種で大量採用を行いました。

 一方でコロナ禍の終息によってリモートワークから出社に回帰しており、働き方も変わりました。需要も落ち着いて急成長に陰りが出て人員が過剰になったことがリストラにもつながります。さらに事業転換や不採算部門の見直しによって、事業部門ごと閉鎖されてリストラという事例もあります。

 もう一点の要因として、税金があります。21年より米国でソフトウェア開発費用に関する税制が変更されました。そのため税負担が増加したものの、いったんはコロナ禍による増収でカバーできました。しかし需要も落ち込んで人材が余剰になれば税金の負担が重くなり、費用を減らさなければいけません。そのため、人件費を削減する必要が出てきました。

 ここまでの情報を整理すると、米IT企業によるリストラは、本当に生成AIの影響といえるでしょうか。ChatGPTが登場した22年11月以前のリストラについて調べてみると、生成AI以前にもリストラが実行されています。

 特に回数と人数の多いマイクロソフトは設立から50年経過しており、生成AIとは無関係に何度もリストラを行ってきました(14年のリストラは、携帯電話メーカー・ノキアの買収により移籍した従業員の1万2500人を含みます)。また、同社の従業員数は15年の12万8000人から20年には16万3000人に増えており、24年時点で22万8000人まで拡大しました。急激な組織拡大に伴った人員調整ともいえるでしょう。

リストラのまとめ

 このように複数の要因があるため、一概に「生成AIのせいでリストラ」とはいえません。生成AIの影響はあるものの、限定的です。解雇された職種はエンジニア以外にも営業やマーケティングなどのビジネス職や、中間管理職など多岐にわたります。これらの職種も生成AIの影響を受ける場合もありますが、既存人材を置き換えするほど生成AIは万能ではありません。

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企業への生成AIの導入活用やDX支援を手掛ける、AIコンサルタントのマスクド・アナライズさんが“生成AIの今”を愛を持って解説していく。

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