“SaaS屋”から見た「生成AI機能」の最適解は? 国内3社が頭をひねる「課題解決」と「技術活用」両立の難しさ(1/2 ページ)
生成AIブームの開幕から3年が経とうとしている。国産SaaSやWebサービスでも生成AIを活用した機能も続々と登場しているが、ChatGPTやコーディング支援AIほどのインパクトがあるわけではなく「期待した効果が出ない」といった声も少なくない。既存のサービスに生成AIを搭載し、顧客に価値を届ける最適解──いま、各社が頭をひねっているテーマだろう。
AWS Japanが7月30日に実施したAI活用事例の発表会では、フリー、サイボウズ、ディップの3社が、それぞれ異なる領域で生成AIを実用化した具体的な取り組みと、開発の背景を披露した。それぞれの発表からは生成AIがもたらす機能向上の可能性が見えた一方、顧客課題の解決と技術活用、その両立の難しさもうかがえた。
フリーはレシートのデータ化機能など開発
フリーは写真撮影による経費精算自動化や年末調整書類のAIチェック機能を開発中だ。秋に提供を開始する予定で、ユーザーがスマートフォンでレシートを撮影すると、AIが画像から金額や店舗名、日付を自動で読み取り、過去の行動パターンから勘定科目や用途まで推定して申請書類を作成する。完成した申請は、普段使っているSlackなどのアプリから直接送信でき、移動中の電車内でも数秒で処理が完了する。
従来の経費精算では、レシートを受け取った瞬間の「面倒くさい」という心理的ハードルが遅延の最大要因だった。フリーの木村康宏常務執行役員CPOは「気づいたら何日か経って、これ何だっけということが起きる」と現状を分析する。領収書をもらった時点で申請を後回しにして、結果的に忘れてしまうパターンの繰り返しだ。AIによる自動処理で、従来のように専用の管理画面を開いて手入力する必要をなくす。
同じく秋に提供開始予定の年末調整AIチェック機能では、書類の事前検証を自動化する。現在は「去年の保険証書」や「家族名義の書類」といった間違いによる差し戻しが頻発しているが、AIが写真から数字を抽出して書類を自動作成する他、「これは去年のものです」「ご家族のものだと思うので確認してください」といった指摘も行い、労務担当者と従業員双方のストレス軽減につなげるという。
木村氏は、一連の機能開発の考え方について「人と人の間で発生する『お願い』を、AIが介在することで『報告』に変えていく」と説明する。
サイボウズはノーコード開発をAIで効率化
サイボウズはノーコード開発プラットフォームに生成AIを組み込み始めている。同社の「kintone」に、自分の置かれている状況を話すと、AIがその業務に合ったアプリを提案してくれる機能を搭載。さらに「顧客管理とプロジェクト進捗を一元化したい」など要望を伝えると、過去のノウハウを学習したAIが最適なアプリ名やシステム構成を生成する仕組みも備えた。
従来“鬼門”だったという、ユーザーによるアプリのワークフロー構築も、生成AIに任せられるように。例えば営業担当者が「見積もり100万円以上は部長承認、200万円以上は役員承認にしたい」と説明すれば、複雑な条件分岐も含めた承認プロセスを、AIが構築してくれるようにした。
この他、業務マニュアルや社内FAQをkintoneに格納するだけで、社内RAG(検索拡張生成)システムを構築できる仕組みも整えたという。
ディップは求人審査を半自動化 不適切な求人排除
人材サービスに加え、採用系SaaSを手掛けるディップが取り組むのは、求人審査でのAI活用だ。同社が運営するスポットワーク求人サービス「スポットバイトル」では、違法・不適切な求人を排除するため、これまで正規表現によるパターンマッチングと人手によるチェックで審査を行ってきた。しかし審査工数の増大とスケーラビリティの限界、さらに判断基準のあいまいさが課題となっていた。
そこで、生成AIを活用した求人審査支援AIシステムを開発。掲載された求人原稿をAIで自動分析し、問題の可能性がある表現を検出するようにした。結果はデータベースに格納され、BI(ビジネスインテリジェンス)サービス「Amazon QuickSight」で可視化される仕組みだ。AIモデルには複数のモデルを比較した結果、AnthropicのClaudeを採用している。
これにより、従来は人手に頼っていた複雑な審査プロセスが大幅に効率化できているという。8月には、AI自動チェック機能にNGと判断された求人原稿を、自動的に非表示化する取り組みも進めていく方針だ。
ただし、完全な自動化はしない方針と同社。求人の適切性判断には、法令順守はもちろん、社会通念や業界慣行といった微妙なニュアンスが関わるためだ。AIが一次審査を担い、グレーゾーンや複雑なケースは人間が最終判断することで、精度と効率性の両立を目指すという。
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