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オルツの不正はなぜ起きた? 報告書・元社長の経歴を分析 「AI新興企業は“捕まっていない詐欺師”」と言わせないために(2/5 ページ)
米倉氏はオルツの前にスタートアップ企業・未来少年を設立し、当時急速に成長していた電子書籍事業を中心として、年商15億円まで成長させています。未来少年時代のインタビューでは「クリエイターにとっていい会社でありたい」と語っています。しかし、このころから、オルツの不正につながる片りんを見せ始めています。
SNSでは15年ごろ、匿名での意見として漫画家やイラストレーターに対する報酬の未払いを告発する声が上がったことがありました。その投稿の約半年後に、投稿主は「請求額は支払ってもらえた」と書き込んでいます。また、そこからさらに半年後にキラリト(未来少年から分社化)はSNSで上がった指摘について見解を発表。場合によっては稿料を支払えない可能性があることなどを述べています。
他にも、転職口コミサイトに書かれた未来少年での米倉氏の評判は「ヒステリーとパワハラばかりで感情的」「他人の意見を聞かず、誰も信用しない」などの意見も見られました。このように、オルツを設立する前から問題を指摘する声があったのを確認できます。同様にオルツでもガバナンスが効かずに、社長の権限が極端に強かった点を報告書内で指摘されています。
その後、未来少年を経営していく中で、オルツを創業するきっかけが起きます。当時の米倉氏は1日に8人ほど採用応募者と面接していました。そこで米倉氏は決められた手順である面接において、社員に秘密でチャットbotを導入。そこでチャットbotが人間だと気付かれずに成功したことが、オルツを創業する理由につながったと、過去にインタビューで語っています。
14年に未来少年を売却しますが、その理由については別の媒体の取材で「自分1人で起業したときは、1人で3億円の売上を達成した。そこで組織化して従業員を100人集めれば売上も100倍になると思ったが、実際は5倍の15億円だった。自分のノウハウを広げれば、100倍になるはずだった」と述べています。このような反省から個人のノウハウを反映したパーソナルAIを開発して、人間の仕事を効率化する展望につながります。
資金面について未来少年は投資家から出資を受けず、全て自己資金で運営していました。一方でオルツでは先行して研究開発に多額の費用が必要となり、完成するまで売上になりません。その間も運転資金が必要なので、継続して売上が見込めるAI GIJIROKUを販売開始したものの、売上が立たずに預金残高が1000万円を切る逼迫(ひっぱく)する状況に至ります。
さらに売上目標にも届かず、循環取引を始めました。途中で循環取引が発覚しかけたものの、手口を巧妙化させながら売上を年60億円まで増やしていきます。こうして証券会社などへの偽装を繰り返しながら、株式上場となりました。
オルツは、表向きでパーソナルAIの研究開発“など”の輝かしい未来を語りながら、裏では売上の水増しを行ってきました。このような理想と現実が乖離した会社経営は未来少年からオルツにも引き継がれており、経営方針も改善されていません。現に調査報告書では「社長は経営者に求められる誠実性が足りない」「社長が中心となって行われた不正である」と断じています。
では社長とオルツはどのような責任が問われるのでしょうか。過去の事例を考慮すると、オルツはまだ時効を迎えておらず、関係者が逮捕されて裁判で有罪になることも考えられます。また、個人株主などによる民事裁判においては、株式上場の主幹事となった大和証券を相手取って賠償金を求めることも想定されます。
25年8月25日には、オルツの株主88人が損害賠償請求を行う方針であると、日本経済新聞が報じています。
投資家や監査法人、証券会社は不正を見抜けなかったのか?
調査報告書では一連の不正行為について「主犯である社長に責任がある」と結論付けています。一方で循環取引を発見して止める責任がある監査法人は「不正に関する取引の外観が整えられていたため、監査法人が疑問を抱く点はなかった」としています。VC(ベンチャーキャピタル)などの投資家や証券会社、証券取引所においても「虚偽報告で隠蔽されており、不正に気付かなかった」という判断です。
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企業への生成AIの導入活用やDX支援を手掛ける、AIコンサルタントのマスクド・アナライズさんが“生成AIの今”を愛を持って解説していく。
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