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AIを使って英語論文を短期間で書く方法とは? 京大教授が教える9つの原則 2023年に発表(2/3 ページ)
原則2は「Why-What-So What」。論文は、この3つの問いに対する答えを明確に提示する構成で書かれるべきだ。Whyではなぜ読者がこの論文を読むべきか説得する。Whatでは論文独自の主張を明確に記述する。So Whatでは改めて主張の意義を具体的に示す。
IMRADの形式に当てはめれば、IntroductionではWhy、MethodとResultではWhat、DiscussionではSo Whatに答えることになる。日本語話者は「いちいち説明しなくても伝わるはず」と考えがちだが、英語圏ではそうした期待は通用しない。WhyとSo Whatこそ、ことさらに明確な詳述を必要とする。
原則3は「Context-Problem-Response」。特にIntroductionにおいて、この流れで読者を論文に引き込む必要がある。
Contextでは読者と共有するための問題空間を設定し、「なるほど、了解」と小さくうなずかせる。Problemではその空間に未解決の重要な問題が存在することを示し、読者に緊張を与える。Responseでは論文独自の主張を予告し、読者を「それは面白そうだ」と期待させる。この3段階で「なぜこの論文を読むべきか」を納得させてから、本論に入るのが基本だ。
日本語原稿を書く段階で注意すべき6つの原則
続く6つの原則は文体に関するものだ。これらは日本語原稿を書く段階から意識すべき点で、機械翻訳の出力品質を大きく左右する。無自覚に書いた日本語を入力すると、たいてい読みにくい英語が出力される。「AIの翻訳は使えない」という不満の多くは、実は入力側の問題なのだ。
原則4は「Essential Point First」。パラグラフの冒頭に最重要情報を述べることを徹底する。日本語話者はしばしば結論を最後に持ってくるが、英語では冒頭に主張を置き、その後に理由や根拠を示すのが標準だ。記述が長くなる場合は、パラグラフの最後に主張を新たな表現で再提示する。
原則5は「Consistent Perspective」。1つのパラグラフでは視点をそろえる必要がある。例えば、XとYを比較してXの優位性を述べる場合、各文が一貫してXの観点から書かれている方が分かりやすい。「Xには長所Aがある。他方Yには短所Bがある。しかしXには利点Cがある」と視点が移動する書き方は読者を混乱させる。「Xは長所Aと利点Cを有する。加えてXは、Yがもつ短所Bも有しない」と整理した方が親切だ。
原則6は「From Old Information to New Information」。情報を提示する順序は、読者がすでに知っている旧情報が先、読者にとって未知の新情報が後、というのが原則だ。前の文や前のパラグラフで言及した事柄は旧情報となる。その旧情報を文の後ろに置くと、読者は理解に余計な労力を要する。
原則7は「A Short Sentence with One Idea」。原則1を1文のレベルに適用したものだ。1つの文には重要なアイデアを1つしか入れず、それによって文の長さを短く保つ。複数のアイデアを詰め込んだ長い日本語文は、機械翻訳で誤訳を生みやすい。ただし細分化しすぎると今度は情報密度が低くなり、かえって読みにくくなる。読者が1文から有意義な情報を得られる程度の粒度を意識すべきだ。
原則8は「Agent+Action」。英語は文頭に行為主を主語として示し、その直後に行為を動詞として示すことを好む。この構成に倣って日本語も「XはYする」「XはZをYする」と書くと、機械翻訳の英語が読みやすくなる。日本語話者が書く英語に過剰に出現する受動態、It is構文、There is構文、If/When構文が減るからだ。「Xには長所Aがある」ではなく「Xは長所Aを有する」と書く習慣をつけるとよい。
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2019年の開始以来、多様な最新論文を取り上げている連載「Innovative Tech」。ここではその“AI編”として、人工知能に特化し、世界中の興味深い論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
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