十時CEOが明かす“ソニー流”AI活用術 ゲーム開発にも導入、クリエイティブを支える工夫
「生成AIの得意・不得意の理解も進み、不得意領域の解決方法についても現実的な対応策のめどがついている」――ソニーグループの十時裕樹CEOは、5月8日に実施した経営方針説明会で、AI活用の進捗についてこのように明かした。
十時CEOは、AIについて「(同社の成長を考える上で)最重要テーマの一つ」と位置付ける。クリエイティブ領域におけるAI活用も進めており、ゲーム開発の一部作業などに導入しているという。
一方、十時CEOは「人のクリエイティビティが常に中心であるべきだという考えを大前提にしている。AIは強力なツールだが、アーティストやクリエイターに取って代わるものではない」と指摘する。あくまでクリエイターを補助する形で、AIツールを導入している。
「優れたコンテンツは、個人の深い経験や独自の視点、そして何かを伝えたいという強い動機から生まれる。強い感情的なつながりを生む物語やキャラクター、世界観にファンは引かれる」
「最も記憶に残る体験は、これからも人によって生み出され、人によって楽しまれるものだと私たちは考える。AIはそのプロセスを支援できるが、人間の想像力、創造性、感情そのものを置き換えることはできない」(十時CEO)
ゲーム開発におけるAI活用の現状
「PlayStation」を開発するソニー・インタラクティブエンタテインメントの西野秀明CEOによると、反復作業の自動化やソフトウェア開発の効率化に加え、3DモデリングやアニメーションなどでもAIを活用しているという。
例えば、人間の表情をキャプチャーしたデータから3Dアニメーションを生成するツール「Mockingbird」を社内開発した。これまで数時間かかっていた作業をわずかな時間でこなせるようになった。
キャラクターの髪のアニメーションを生成するツールも制作した。実際のヘアスタイルの映像からAIが数百本の髪の3Dモデルを生成することで、手間のかかる工程を大幅に効率化したとしている。
AIで新たなゲーム体験を実現する試みにも取り組んでいる。ゲームソフト「グランツーリスモ」に搭載したAIレーシングエージェント「Sophy」では、“世界最高峰のドライバー”と対戦するような体験ができるという。
また「NPCが自律的に振る舞い、まるで生きているかのようなダイナミックな世界をプレイヤーが探索できる」といった機能を持つゲームのプロトタイプも開発した。
ただし「AIが進化しても、クリエイターの役割が変わることはない」と西野CEO。十時CEOの考えと同様に、ゲーム開発においても、クリエイターが補助的にAIを活用するとした。
「ゲームのビジョンやデザイン、そしてプレイヤーの心を動かす感動は、これからもクリエイターの才能から生まれる。AIはそれを拡張するものであり、置き換えるものではない」(西野CEO)
ソニー・インタラクティブエンタテインメントでは、ゲームソフトの制作だけでなく、ハードウェアの描画処理や、同社プラットフォームにおける決済処理の最適化・コンテンツのパーソナライズなどでもAIを活用している。今後も複数の領域でAIに注力する方針だ。
「AIの不得意」にどう対応?
ソニーグループでは、バンダイナムコホールディングスと共同で、映像制作におけるAI活用も試験的に始めている。十時CEOによると、制作効率の向上などを確認したほか、「生成AIの得意・不得意の理解も進み、不得意領域の解決方法についても現実的な対応策のめどがついている」という。
十時CEOは、AIが不得意な領域の代表例として「表現や演出の意図を忠実に反映するための一貫性・制御性」の確保を挙げる。
一方、複数のAIモデルの使い分けや、特定の作風を表現するための独自のチューニング技術などを組み合わせることで「コンテンツの種類により求められる精度や、その実現にかかるコストなども理解しながら現実的な解決案を蓄積しつつある」とアピールした。
「生成AIとソニーの得意とする音響、映像処理、空間/CG技術を統合し、クリエイターが主体であり、彼らの感性を最大限に拡張させ、安心して利用できるセキュアな制作基盤を確立し、業界全体のさらなる発展に貢献していきたいと考えている」(十時CEO)
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