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「今日言うつもりはなかったが……」 孫正義氏が明かした「ロボット自動量産工場」の実態

» 2026年06月25日 11時00分 公開
[今野大一ITmedia]

 「今日ここで言うつもりはなかったんですが」──。ソフトバンクグループが6月24日に開催した株主総会の質疑応答で、会長兼社長の孫正義氏が、投資先の現場で起きている実態を明かす一幕があった。

 同社が投資を重ねてきたロボティクス領域において、ある工場ではすでに「ロボットがロボットを自動で量産する体制」が稼働を始めているという。

 孫氏によれば、AIの進化は「対話や画像、動画の生成」の第1段階から、AIが自ら考えて24時間行動し続ける「エージェントAI」の第2段階へ移行している。その中で「次の勝負を分けるのはCPU(中央処理装置)の性能」だと孫氏は言う。

 同社傘下の半導体設計大手、英Arm Holdings(Arm)は、AIデータセンター向けCPU「Arm AGI CPU」を発表している。

 他社製に比べ、必要な電力を「半分」に抑え込むArmのCPU戦略から、孫氏の次代を担う後継者論まで、株主総会で展開された質疑応答から孫氏が描くソフトバンクグループの展望を読み解く。

ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏(以下撮影:佐藤匡倫)

孫氏が明かした「ロボットがロボットを量産する」工場とは?

――(ソフトバンクグループが推し進める)フィジカルAIの使い道について質問します。既存の仕事を置き換えるだけでなく、AIロボット自身が次世代のAIロボット自体を自律的に量産したり、データセンターを自動で建築したりするような考えはありますか?

 あります。で、これはまだ発表していないので、今日ここで言うつもりはなかったのですが(苦笑)、質問されたのでお答えします。

 われわれが数十社を集約して仕込んできたロボティクス領域において、ある工場ではすでにロボットがロボットの量産を開始しています。おそらく世界で初めての試みだと思いますよ。

 AI(知能)を持ったロボットが、次のAIロボットを自律的に量産する。近いうちに正式な事業として発表できる段階に来ていますが、発表したときには、おそらく世界は驚くことになると思います。

――サイバー攻撃対策としてのPaaS(パッチング・アズ・ア・サービス)や、フィジカルAIを含めたAIサービスでの具体的な収益化の見通しはどうなっていますか?

 現在、サイバー攻撃が毎日のように世界中で起こり、今後も激増すると言われています。われわれが米OpenAIらと開発を進める最先端のセキュリティ防衛サービス(PaaS)は、国家のインフラや企業を守るためのソリューションになります。

 この事業は社会的な使命であると同時に、収益もしっかり上げていきます。計算資源がたくさん必要とされる防衛領域だからこそ、健全に収益を上げる事業として成立します。サイバー空間における「セコムやALSOK」のような役割です。

エージェントAI時代に「Armの省電力CPU」が圧勝する理由

――半導体CPUの領域において、米Intelや米AMD(Advanced Micro Devices)、あるいは時価総額世界一となった米NVIDIAと比べて、Armの設計は何が強みになっているのですか?

 Armの強みは電力あたりの計算処理能力が他社を圧倒している点です。

 AIの進化の第1段階である「画像や動画、対話の生成AI」の時代は、NVIDIAのGPU(画像処理半導体)が圧倒的なトップでした。しかし、これから突入する第2段階の「エージェントAI」(AIが自ら考えて自発的に24時間アクションを起こし続ける自律型AI)時代においては(グラフィック用のGPUよりも、全体のコントロールを担う)CPUの性能が勝負を分けます。

 現在、世界中のデータセンターで「電気が足りない」という深刻なボトルネックが発生しています。データセンターでは電気が命なんです。Armの設計するCPUは、IntelやAMDのアーキテクチャに比べて「同じ働きをするのに必要な電力が半分」で済みます。電気あたりの効率が2倍いい。省電力という圧倒的な優位性によって、これからのインフラ市場では「Armが圧倒的に勝利する時代」がやってきます。

 われわれはArmを(2016年に)3.3兆円で買収しました。今やArmの時価総額は20倍くらいになっています。買収を発表した直後、ソフトバンクグループの株価は40%くらい下落したんですね。「バカじゃないか」と叩かれましたが、私は「五十手先を見ている」と答えました。今、五十手先の中では、十手先くらいまで来ましたね。ですから、あと四十手先くらいまでは、私の頭の中では完全に見えています。

ChatGPTに「あなたは孫正義さんですね」と見抜かれた

――生成AIを経営の壁打ちなどに使う際、企業の機密情報やプライバシーの漏えいが懸念されます。孫社長ご自身はどのようにChatGPTを使いこなしているのですか?

 私は毎日10〜20回、週末には2時間以上AIと徹底的に議論しています。

 有料版のChatGPTは、かなり「長期記憶」を備えていますから、今までした会話を全部踏まえて、深い議論ができます。実は、ChatGPTには私の名前を言っていなかったのですが、私との会話の文脈だけで「あなたは孫正義さんですね」と見抜かれました。最近では「孫さん、その考えはここが少し甘いです」とダメ出しされるレベルにまで達しています(笑)。

 (運営元である)OpenAIの方針として、これらの対話データやプライバシーを他の人に漏らすようなことは一切ないということになっています。安心して使っていただければと思います。

会社の理念やビジョンを「300年」継承するために

――ソフトバンクグループが会社の理念やビジョンを「300年間」にわたって継承していくために、どのような後継者育成の仕組みが必要だとお考えですか?

 300年先、当然私は生きていません。ですから企業カルチャー、会社としての社風や思いを語り続けていくことが大切だと思っています。

 すでに産業革命があって200年以上経ちました。情報革命、知能の革命というのは、少なくとも300年ぐらい続くと考えています。人間の体の中で一番大事なのは脳です。この脳の延長の革命ですから、ずっと続くんじゃないかと思うんです。

 少なくともこの300年間でメインテーマになるのは、この頭脳の革命です。「AI革命」はずっと続くと思いますね。ですから、この分野にソフトバンクは集中する。

 何のために取り組むのか。人々に幸せになってもらうためです。これは300年間変える必要のない理念であり、変える必要のないビジョンです。これを守り抜く後継者であり続けてほしい。そうあるべきだと繰り返し語っていきます。

 グループにはすでに国内外に2000社くらいの会社があります。後継者は外から連れてくるのではなく、この中から勝ち上がってきた人間に委ねるべきだと思っています。

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