“あすけんの女”運営も「バイブコーディング」 工数増でもメリットあり? AIで開発、本当の価値は(1/2 ページ)
通称“あすけんの女”で有名な食事管理アプリ「あすけん」。運営企業のaskenが、機能開発に「バイブコーディング」(AIにコードを書かせて開発する手法)を取り入れ始めた。開発部門に頼り切りにならずとも、プロダクトマネージャー(PdM)が主導して開発するプロセスを確立した。
AIに食事の内容を話しかけるだけで栄養記録できる機能「AIおまかせ記録」もこの手法で誕生したが、当初は通常2人月の開発が6人月まで膨らむという想定外の工数増に直面した。
同社はこの壁をどう乗り越え、新たな開発手法は現場にどのような利益をもたらしたのか。
実環境がなければ「動くモノ」も検証できない
askenでは従来、デザインツールで作ったモックアップを一部のユーザーに触ってもらい、その感想をインタビューなどで聞き出すという形で新機能の検証を進めていた。しかし、この方法ではユーザーが実際の生活で新機能を試せるわけではないため、インタビューで聞き出した意見も想像の域を出ないものになりがちだった。ユーザーの要望を捉えきれず、本番リリースしても反響が得られないプロジェクトもあったという。
その後、AIコーディングツールの進化によって状況は一変する。同社の伊藤拓哉氏(シニアプロダクトマネージャー)がバイブコーディングでのプロトタイプ開発を模索。「プロトタイプを自分のPCで動かすだけではなく、ユーザーが実際に触れるようにすればその価値を検証できるのでは」と思い至る。
そこで構築したのが新機能のプロトタイプをユーザーに提供する専用基盤「あすけんラボ」だ。本番環境と同様の認証機能、APIを利用できる「Amazon Web Services」(AWS)環境を作成し、Webベースで気軽にデプロイできるようにした。
コーディングエージェント「Claude Code」と、AIがAWSの公式ドキュメントを参照できるようにする「AWS Documentation MCP」を組み合わせ、PdM自身がインフラ構成のたたき台を作ることも可能にした。実際に動くたたき台があることで、PdMとインフラエンジニアの間で実のある議論がしやすくなったという。
プロトタイプ公開後はユーザーの利用ログやアンケート結果を基に機能を改善し、あすけんラボからの「卒業」(正式版の開発判断)を目指す。同社はこのプロトタイプとユーザーからフィードバック、PdMのコメントなどをまとめたものを「動くPRD(プロダクト要求仕様書)」と呼ぶ。
これを起点に本番環境での開発を進めることで、PdMとエンジニアのコミュニケーションが円滑になり、開発が大幅に効率化される――そう思ったのも束の間、エンジニアチームを襲ったのは“まさかの工数増”だった。
「設計せず出せる」と判断するも、まさかの工数増
従来のプロトタイプよりも圧倒的に情報量の多い“動くPRD”を前に、PdMとエンジニア、デザイナーの議論は加速。かつてないスムーズな新機能開発プロジェクトの立ち上げに、皆が感動したという。
そこでエンジニアチームは「実験環境とはいえ既にユーザーも使っている機能だし、設計を省いて“動くPRD”を本番環境に流用できるのでは」と判断。しかし、その結果起きたのは通常2人月程度で済むはずの開発工数が、6人月に膨らむという悲劇だった。
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