「FDE」って結局、客先常駐SEのリブランディングじゃないの? アクセンチュアに聞いてみた
米Palantir Technologies(以下、Palantir)や米OpenAIなどAI製品の普及を目指す企業の間で、新職業「FDE」(Forward Deployed Engineer)の活用が進んでいる。顧客の現場に常駐し、AIの導入から成果創出まで担う役割だ。
ただ、そのあり方は従来の“客先常駐エンジニア”と重なる。ITベンダーやコンサルティング企業が以前から存在する職業をリブランディングし、新たな人月商売を始めようとしているだけではないか――そんな疑問を、4月に米Microsoftと共同でFDE組織を立ち上げ、独自の「RDE」も提唱するアクセンチュアの保科学世氏(AI アンド データ リード AIセンター長)と片岡俊行氏(マネジング・ディレクター)にぶつけた。
FDEとは何か
FDEという職種を最初に整備したのはPalantirとされる。同社の公式ブログでは、FDE(またはFDSE)はPalantirのプラットフォームを顧客の最も難しい課題に合わせて導入するソフトウェアエンジニアだという。従来のエンジニアが多くの顧客向けに1つの機能を作るのに対して、FDEは単一の顧客のために多くの機能を実装することを重視する。
OpenAIや米Anthropic、米GoogleなどAIプラットフォーマー各社の求人にも同様の職種が並ぶ。コンサルティング企業やITベンダーもプラットフォーマーと連携しFDE組織の立ち上げを急ぐ。
アクセンチュアもMicrosoftと共同でFDE組織を立ち上げたり、Google Cloudとの協業でFDEを活用したりするなど、取り組みを進めている。また、特定製品の導入を重視するFDEに対して、特定製品に依存せず顧客を支援するRDE(Reinvention Deployed Engineer)という新たな職種も社内で定義した。
「客先常駐SEのリブランディング」ではないのか
では、FDEやRDEは従来の客先常駐エンジニアと何が違うのか。保科氏は「(客先常駐エンジニアとFDE・RDEは)発想が真逆です。従来のコンサルタントやエンジニアを無理やり違う見せ方で売ろうという気は1ミリもありません」と語る。
保科氏が強調するのは、工数基準から成果基準への転換だ。これまでのコンサルティングやSIは、人材の稼働工数を基準に対価を請求するのが一般的だった。しかし、「生成AIで開発工数を大幅に圧縮できる時代に、この課金モデルが本当に正しいのか」(保科氏)という疑問が付きまとう。
アクセンチュアが実践するのは、一定期間であらかじめ決められた成果を出すことで対価を受け取る、成果報酬型の契約形態だ。客先への常駐は、顧客と密に連携し短期で成果を出すための手段として位置付ける。
2024年にはデジタルサービスの企画、開発を手掛けるゆめみを買収。そこで獲得した約400人の人材を今回のRDE体制の中核に据えた。
ゆめみの創業者で、現在はアクセンチュアでRDE体制のリードを任されている片岡氏によると、ゆめみはアクセンチュアに買収される前から、一部のサービスの管理画面に顧客のROIを表示し、成果へのコミットを目指す開発に取り組んできた。顧客の業務プロセスをサービスに合わせるよう促すことが一般的なSaaS業界において、それぞれの顧客ごとのサービスのカスタマイズにも力を入れたという。FDEが業界で話題になった際に「あ、これ(=ゆめみが実践してきた開発体制)がFDEなんだ、と気づいた」と同氏は振り返る。
ゆめみは生成AIの登場を受けて、エンジニアやデザイナー、プロダクトマネジャーといった職種の区分を撤廃し、全員を「プロダクトクリエイター」に再定義する取り組みも進めた。この取り組みも「近年のトレンドを先取りしていた」と片岡氏はアピール。ゆめみが培った成果コミット型の開発文化とアクセンチュアの巨大なアセットを組み合わせて、RDE体制の構築を目指す。
RDEの担い手は誰か――「T型人材」を数千人規模に
アクセンチュアのRDEは、数人のチームで顧客を支援することを想定。AIエンジニアリング、対象の業界・業務、チェンジマネジメント(組織変革を支援する取り組み)、特定の製品などの専門知識を持つ人材を集める。ただし「例えば、戦略に詳しいが実装は分からない人と、実装は得意だが戦略視点がない人にチームを組ませても、互いに重なる部分がないのでうまく機能しない」と保科氏は指摘し、顧客の支援に必要な知見を一通り身に着けた上で、自身の専門も磨いている人材でチームを組んでいるとした。
アクセンチュアは全社的な組織再編にも踏み切っており、RDE組織の増強を図っている。保科氏も社内向けのトレーニングと実践プロジェクトを立ち上げて人材育成を加速させているという。保科氏は具体的な数値目標は明かせないとしつつも、「何千人という単位で」育成することを目指しているとした。
“巨大組織で分業”から再び“少数精鋭”へ
アクセンチュアに限らず、ITサービス業界ではコンサルティングやBPR、システム開発、運用といった専門領域への分業化が進んできた。しかし、AIの進化によってそれぞれのプロセスが大幅に効率化され、幅広い業務を少数精鋭で回した方が効率的な時代が来る可能性がある。「業界が成熟する過程で分業化や定型化は必要だった。しかしAIによってゲームチェンジが起きた」と片岡氏は語る。
もっとも、保科氏も片岡氏も「FDE・RDEという呼び方には強くこだわっていない。FDEがやりたいわけではなく、あくまで顧客のビジネス成果創出を目指している」という。単なるリブランディングではなく、成果起点の働き方とそれを支える組織を、AI時代に合わせて作り直す――その意思を改めて強調した。
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