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NEC森田社長が語る「脱・人月商売」の行方 組織の壁を破るAI人材育成法(1/2 ページ)

» 2026年07月15日 07時00分 公開

 「世界的に見れば、ようやく普通の会社になった」

 2021年の社長就任時、営業利益率が5%前後だったNECの現状について、そう評した森田隆之社長。同年にインタビューした際には「2025年度時点で営業利益率8.6%」を目標に掲げていた(NEC森田社長に聞くDXを推進する「3つのキーワード」 指針は「長期利益の最大化、短期利益の最適化」)。言葉通り2025年、営業利益率は10.8%を達成。初の10%台に突入し、2期連続で最高益を更新した。

 AIの高度化は、ソフトウェア開発の価値を大きく変えつつある。NECが2026年5月に発表した2030中期経営計画では、AIによってシステム構築の価値が低下し、価値の中心がコンサルティングやオペレーションへ移っていくとの見立てを示した。

 AIサービス市場はグローバルで新たに45兆円超の規模になると予測する一方、従来型の(システム開発などの工数を「作業人数×月(時間)」で算出する)人月商売やSIer(システムインテグレーター)としての稼ぎ方は、変革を迫られている。

 NECはAI時代に、いかにして稼いでいくのか。より幅広い能力を備えたエンジニアの育成方法や、DX・AX領域の価値創造モデル「BluStellar」(ブルーステラ)の収益構造、さらに防衛・安全保障や海底ケーブルといった注力領域の戦略について、森田隆之社長がグループインタビューで語った。

森田隆之(もりた・たかゆき)1983年にNECに入社、2002年に事業開発部長、2011年に執行役員常務、2018年に副社長、2021年4月に社長に就任。6年間の米国勤務や2011年からの7年間の海外事業責任者としての経験も含め、海外事業に長期間携わってきたほか、M&Aなどの事業ポートフォリオの変革案件を数多く手掛け、半導体事業の再編や、PC事業における合弁会社設立、コンサルティング会社の買収などを主導した。66歳。大阪府出身(以下撮影:河嶌太郎)

営業利益率10.8% 森田社長が「普通の会社」を超えた先に見据えるもの

――2025年度に中計(中期経営計画)の目標を達成しました。営業利益率は初めて10%台(10.8%)に到達し、2期連続で最高益を更新しています。今後、NECをどのような企業へと導いていきたいとお考えですか。

 日本と共に成長していきたいと考えています。日本に革新と安心をもたらし、それを通じて世界の革新と安心にも貢献していく。2030年には、真顔でそう言えるような会社になりたいと思います。

――これまで森田社長は、例えば「中計を自分事として考えられる社員を育てていく」「変わることを常態化していく会社になりたい」とコメントしてきました。今、NECはそうした組織に近づいているという手応えはありますか。

 まだできているとは言えませんが、この5年間で大きく変わりました。このようなことを考えられる社員が少しずつ増えてきていると思います。

――AIの高度化により、ソフトウェア関連企業やIT企業のビジネスモデル自体が危機に陥るとの見方もあります。森田社長は、そうした危機感をお持ちなのでしょうか。それとも、むしろビジネスがしやすくなるとお考えですか。

 まず、中計でも申し上げましたが、マクロに見れば市場は広がりますので、われわれが正しい行動を取れば、大きなビジネスチャンスになります。しかし、ただ待っていれば自然とそこに到達できるかというと、それは全く違います。

 産業構造が変わっていく中で、変化を先取りしていかなければ、自分たちが取り残されてしまいます。まさに、そういう重要なタイミングにあると考えています。経営者として賢明な戦略を立て、実行していきます。

45兆円のAI市場 人月商売はどう変わる?

――中長期的な人材戦略についてお聞きします。中計では、システム開発はAIが代行できる部分が増え、価値の中心がコンサルやオペレーションに移っていくとの考えを示していました。求める人材の能力や規模の見直しは必要でしょうか。また、いわゆる人月ビジネスの考え方は、AIの普及とともに今後どう変化していくとお考えでしょうか。

 2030中期経営計画で示した「AIサービス市場が、グローバルで新たに45兆円超の規模になる」という予測については、長期的に見たときに正しいと考えています。ただ、それがどのぐらいのスピードで進むかはまだ見えないところが多く、企業経営という視点からすると、やはりリスクを考慮しながら保守的な対応を取る必要があります。そういった意味で、採用の在り方などは、今まで以上にしっかりと考えていく必要があると思っています。

 一方マクロで見ると、AIサービスの市場全体は拡大すると思います。そこでは必要な人材も当然不足してくるでしょう。ただし、求められる人材要件自体が変わってきます。これもまさに、これから実行しながら検討・対応していくべき部分だと思いますが、われわれの持っている強みを生かしながら、人材を広げていくという考えになります。それは、AIを駆使して圧倒的なシステム構築力を確保するということです。

 中計資料でも記載しているように、例えば、これまで企業の古いシステムは、長年の改修が積み重なって内部構造がブラックボックス化し、どこがどうつながっているのか把握できないリスクを抱えていました。しかし最新モデルのAIを使ったセキュリティ対策の導入や、定義書や仕様書をAIを用いて作る、あるいはテストの部分を効率化するなど、さまざまな形で市場が広がっています。

 NECとしては、やはりテクノロジーや実装についての能力を持つ人材や、AIを駆使して圧倒的なシステム構築力を持ち、オペレーションまで含めて顧客との成果を共有できるようなビジネスを展開できるタレントを育成していきます。

「脱・人月」の新価格戦略 成果報酬とサービスの融合

――より幅広い能力を備えたエンジニアを育成していく必要があると思います。どのように人材育成や人材確保をしていくのでしょうか。

 今までは、顧客への提案・助言を担うコンサルティングの部分、システムを構築する部分、その後の運用の部分で、組織も人材も分かれていました。そこを、システム構築を担う人材の強みを生かしながらAIを使い、競争力を上げていく必要があります。

 例えば、レガシーシステムを最新技術で刷新する際、綺麗なスライドで抽象的な説明をするだけでは不十分です。システムの構造を熟知した人材がAIを駆使し、具体的な再構築案やコードをその場で提示していく。つまり、プロジェクトの初期段階から、どのような形でサービスを提供し価値を創出するのかという「仕組み」そのものを組み立てる役割が求められるのです。

 こうしたアプローチの実践を通じて、これまで分断されていた組織の枠を越え、人材の流動化や活発な交流が自然と生まれてくると考えています。

――BluStellarは持続的な成長や利益率向上を掲げており、(継続契約を前提として繰り返し対価を得る)リカーリング型へシフトしていると思います。BluStellar事業の中で、リカーリング型収益の割合はどの程度を占めますか。また、いつまでにどの程度の割合を目指しているのでしょうか。人月モデルとのバランスのイメージもお聞かせください。

 公表数値ではなく、あくまで私のイメージとしてお話ししますが、(リカーリング型の)サービスモデルは10%くらいだと思います。大雑把な話になりますが、2030年度には50%になっているくらいの気持ちで動いていかないといけないと思っています。

 実現できるかどうかはこれからですが、3割は成果ベース、つまり顧客側での価値創出をベースにした収益モデルを目指していくイメージだと考えています。

――「提供価値を買ってもらう」というと聞こえはよいですが、ユーザーからすると、どんな契約・購買形態になるのでしょうか。

 この話は0か1かではなく、ミックスになると思っています。顧客のマインドセットもありますし、成果報酬型だけで対価をいただくのは難しいのが実情です。仮に環境が整ったとしても、顧客側で予算の取り方を変える必要があるため、抵抗はあるはずです。そのため、ベース部分のサービスと成果部分をミックスした形が、徐々に導入されていくのだと思います。

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