生成AIの熱狂を経て、2026年は「フィジカルAI」が覇権を争う主戦場となる。日立製作所、NEC、富士通の経営陣は、実社会の「現場」や「身体性」に日本の勝機があると口をそろえる。
インフラ制御の日立、生体認証のNEC、そして空間認識の富士通──。各社が持つフィジカルなアセットとAIを融合させ、米巨大テック企業には模倣できない「日本流」の勝ち筋をどう描くのか。3人のリーダーに、社会実装へのロードマップを聞いた。
1回目:本記事
学研が挑む"真のDX"──「本当に使われるデジタル」で目指す教育価値のバリューアップ
【開催期間】2026年1月27日(火)〜2月25日(水)
【視聴】無料
【視聴方法】こちらより事前登録
【概要】学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。
2026年の幕が開けた――。AIがデジタル空間を飛び出し、実社会そのものを変革する「フィジカルAI」の覇権争いが、いよいよ本格化する。NECの強みは、2025年の大阪・関西万博で世界に示された、世界トップレベルの「顔認証」技術にある。
実社会(フィジカル)に対して、この「顔認証」や本人主権の「セキュリティ」の仕組みといったデジタル技術を融合させること――。NECはこの独自の戦略を武器に、2025年に将来目標として「AI・DX事業で売上高1兆円」という野心的な目標を掲げた。
その核となるのが、2024年5月に始動した価値創造モデル「BluStellar」(ブルーステラ)だ。競合他社もDXブランドを打ち出す中、NECは自らを実験台とする「クライアントゼロ」の実践知を徹底。きれいごとではない現場の変革を推し進めている。2025年度のAI・DX事業売上高の目標は、前年同期比15%増の6420億円。真の勝負はここからだ。
なぜNECは「実世界」にこだわるのか。BluStellarがもたらす社内の変化と1兆円への道のり、そして万博を経て「顔認証」が拓(ひら)く新たな展望について、森田隆之社長に聞いた。
森田隆之(もりた・たかゆき)1983年にNECに入社、2002年に事業開発部長、2011年に執行役員常務、2018年に副社長、2021年4月に社長に就任。6年間の米国勤務や2011年からの7年間の海外事業責任者としての経験も含め、海外事業に長期間携わってきたほか、M&Aなどの事業ポートフォリオの変革案件を数多く手掛け、半導体事業の再編や、PC事業における合弁会社設立、コンサルティング会社の買収などを主導した。2021年5月には、30年に目指すべき未来像「NEC 2030VISION」と2025中期経営計画を公表した。65歳。大阪府出身(以下撮影:河嶌太郎)――将来目標として「AI・DX事業で売上高1兆円」を目標にしています。手応えはどうですか。
足元の進捗だけを見ると「1兆円に対して物足りないのではないか」と言われることもあります。とはいえ実態としては堅調に伸びていて、中身を見ても質の面で当社の独自性や特徴が、以前より明確になってきていると感じています。加えて、NECの実践知を集約し体系化したBluStellar Scenario(シナリオ)も、だいぶ充実してきています。ここから業種別を含めて、シナリオがさらに広がり、進化していく余地が大きいので、その意味でも手応えはあります。
――他社もDXブランドを打ち出す中で、BluStellarの差別化や他社にない強みをどう考えていますか。
差別化の1つ目は、「クライアントゼロ」です。これは私がCFOの頃から構想としてずっと言ってきたのですが、当時NECは顔認証も含めて、いろいろなITシステムを自社の中で十分に使い切れていない部分がありました。それではおかしいだろうということで、自社をゼロ番目のクライアントとして先駆けて実装し、その実践知を顧客に還元することを徹底してきました。
NEC自身で社内DXを実践し、そこで得た知見を社会や顧客のDXに還元する考え方は、当社が対外的にも明確に位置付けている取り組みです。
実際に自社でシステムを使おうとすると、当社の技術だけでは完結しません。グローバルパートナーのテクノロジーと組み合わせながら、レガシーシステムからの移行をどう進めるか、業務プロセスをどう作り替えるか、事業部門ごとにバラバラなシステムやプロセスをどう最適化していくか。さらに商品コードや取引先コードの統一のような、現場では当たり前にぶつかる論点をどう乗り越えるか。これらは避けて通れない課題です。
そこを自分たちが実装経験として持たないまま提案すると、結局は見栄えのいい資料の世界になって、やってみたら想定通りに進まないということが起きてしまいます。当社は実際に何にぶつかるのかまで含めて示せることを、BluStellarのベースに置いています。
――クライアントゼロの実践において、外部パートナーとの連携はどう位置付けていますか。
パートナーとの連携を、現場で効く形まで握っていることも強みにります。SAP、Microsoft、ServiceNow、Oracle、Amazon Web Services (AWS)といったテクノロジー企業は進化が速く、クラウドやサービス型の世界では障害や仕様変更がリアルタイムで起こり得ます。だからこそ、各社の技術ロードマップを理解した上で、技術連携をコーポレート同士で押さえ、必要なときにエンジニア同士が一体で課題解決できる関係性を持っていることが、BluStellarを実装する力になります。
実際、当社がMicrosoft Azureを大規模に使う中でも、トラフィックや障害対応のキャパシティなど、運用の現実に直面しています。そうした論点を当社側だけで抱えず、パートナー側ともチームを組んで解き切る経験が、次の顧客への提供力になります。
そして、その上に当社独自の強みを重ねていきます。顔認証、セキュリティ、そして生成AI「cotomi」(コトミ)など、独自に磨いてきた技術を、グローバルパートナーの基盤やアプリケーション群と組み合わせ、現実の業務に落とし込める形にしていきます。
こうした積み重ねが増えるほど、顧客から見たときに「違い」として分かるものになっていくと考えています。BluStellarは戦略策定から実装までをエンドトゥーエンド(上流から下流まで)で支援し、プロダクト&サービス、オファリング、そして成功要因を型化したBluStellarのシナリオによって構成する形で対外的にも示しています。そこにクライアントゼロの実践知を組み合わせている点が当社の特徴です。
――顔認証技術が広がり、各社が同様のサービスを展開していく中で、利用者の顔情報が各社に分散して乱立する状況も想定されます。顔認証とセキュリティは今後どうなっていくのでしょうか。
企業側が顔情報を個別管理するのではなく、個人が管理できる仕組みに移していくのが本筋だと思っています。それを実現できる技術は、現時点では当社が強みを持っている領域です。万博の「null2」でもNECの顔認証を活用したDID/VC(分散型IDと検証可能なデジタル証明書)の仕組みを提供しています。これは顔認証のIDを来館者のスマートフォンに格納し、改ざんできない形で本人性を担保するアプローチを示しています。
今、多くの施設で使われている顔認証システムは、それぞれの施設で独立して動いているのが実情です。空港なら空港、オフィスならオフィスで、それぞれ独自にシステムを構築しているイメージです。
これは例えるなら、スマートフォンのアプリが自動更新されず、手動で更新しなければならない状態に似ています。セキュリティの弱点が見つかったとき、本来なら全ての施設で最新版に更新すべきです。しかし実際には、A施設は旧バージョンのまま放置、B施設は1つ前のバージョンに更新済み、C施設だけが最新バージョンというように、施設ごとにシステムのバージョンがバラバラなのが現状です。
各施設でシステムの管理や更新状況が異なると、一部のシステムが全体の弱点になりかねません。また、各施設のシステムが異なるバージョンだと、データのやり取りができなくなったり、一括管理が不可能になったりする問題も起きます。
特に顔認証は機微な情報を扱いますから、「何も起こらない前提」で使うのではなく、何かが起きたときに誰がどこまで責任を持つのか、セキュリティの責任分担がどう設計されているのかが、勝負になってきます。実際、ソフトバンクとは生体認証の領域で戦略的提携をしていて、当社の生体認証技術とセキュリティ技術を、ソフトバンクのネットワークやソリューションと組み合わせて提供していく形を打ち出しています。
つまり、情報が分散・乱立するから一元化をどこかが取り仕切る発想ではなく、本人主権でデジタル身分証を持てる仕組みと、提供側としての責任を踏まえたセキュアな実装、この2つが重要です。ここが、顔認証が社会インフラ化していく上での現実的な道筋だと思います。
【イベント情報】学研が挑む"真のDX"
学研グループは、DXを目的化するのではなく、現場と顧客にとって“本当に使われるデジタル”を出発点に教育価値のアップデートに挑戦しています。本講演では、現場で浮き彫りになった課題や、実際に行ってきた改善や仕組みづくり、そこで得られた知見がどのように学研のDX推進を形づくんできたのかをお伝えします。既存のデジタル活用の成果と学びを振り返りながら、学研が目指す“真のDX”の姿をご紹介します。
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