ロボットの模倣学習を60時間→4.8時間に AWSのGPUでフィジカルAI開発を加速 ファナック

 産業用ロボット大手のファナックは、ロボットに人の動作をまねさせる「模倣学習」の学習時間を、AWSのGPUインスタンスの活用で60時間から4.8時間へと約12分の1に短縮した。同社の常務執行役員である安部健一郎氏は6月26日、「AWS Summit Japan 2026」2日目の講演で、この成果を示し、フィジカルAIの開発をAWSのクラウド基盤で加速させる姿勢を打ち出した。

ファナックの安部健一郎氏(撮影:筆者)

模倣学習の基盤をオンプレ→AWSに移行

 ファナックは工作機械の制御装置(NC)で約70年、ロボットで約50年の実績を持ち、世界の工場では120万台を超える同社製ロボットが稼働する。近年は米NVIDIAや米Googleといったテック企業と協業し、AIで物理デバイスを動かすフィジカルAIの社会実装を推進している。安部氏は、労働力の確保が難しい時代に企業が国際競争力を保つには、人に代わって生産活動を担うフィジカルAIが不可欠だと説く。

 フィジカルAIでロボットを動かすには、基盤モデルにさまざまな動きを学習させる必要がある。その一例として安部氏が挙げたのが、従来のルールベース制御では難しかった衣類など柔らかい物のハンドリングだ。ファナックはこの動きを、人の動きをまねさせる模倣学習でVLA(視覚言語行動)モデルに習得させた。

 従来、オンプレミスのGPUで60時間かかっていた学習が、「Amazon EC2」のGPUインスタンス「P5」を活用することで4.8時間に短縮されたという。実機での学習に加え、仮想空間での並列学習も併用する。

並列学習の様子(出典:登壇資料)

 安部氏は同社の産業用ロボットとフィジカルAIを組み合わせ、労働人口減少という日本社会の課題解決に取り組むとし、そのためにスタートアップなど他社との連携拡大にも意欲を示した。

国内のフィジカルAIに600万ドル支援、既に成果も

 講演に登壇したアマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)の巨勢泰宏氏(常務執行役員)は「フィジカルAIが日本の社会課題の解決と産業成長の鍵になる」と位置付け、AWSはクラウドとエッジの両面からその開発を支えるとアピールした。AWSジャパンは26年1月、国内企業向けに最大600万ドル規模の「フィジカルAI開発支援プログラム」も始めている。

AWSジャパンの巨勢泰宏氏。掲げているのはAWSの独自開発プロセッサ「Graviton5」(撮影:筆者)

 同プログラムに採択されたオムロンサイニックエックスは、研究開発における「実験」の実験の自動化を模索している。同社の牛久祥孝氏(Vice President for Research)は、生成AIの登場によって研究開発サイクルの高速化が進んでいるが、実験だけはその恩恵を受けられずボトルネックになっていると指摘。「ロボットが人を置き換えるのではなく、人の創造を拡張する」と展望を語った。

オムロンサイニックエックスの牛久祥孝氏(撮影:筆者)
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この記事の著者

村田知己

村田知己

ITmedia AI+ 編集記者。市場調査会社でのエンジニア職を経て、2022年アイティメディア入社。キーマンズネット編集部、社内のデータ分析基盤構築担当、ITmedia エンタープライズ編集部を経て現職。

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