これからのロボットは「買ったときが一番性能低い」? ソフトバンクと安川電機「フィジカルAI」学習工程の効率化を実証
「これからのロボットは購入時の性能が一番低く、その後どんどん賢くなる」――ソフトバンクの湧川隆次氏(CTO)は7月14日、年次イベント「SoftBank World 2026」の講演でこう述べ、新品の状態から性能が経年劣化していく従来のロボットから、強化学習によって使うほど性能が向上するロボットへの転換を「大きなパラダイムシフト」と表現した。講演では、安川電機の久保田由美恵氏(AIロボティクス統括部長)とともに、フィジカルAI分野での協業の現在地と舞台裏を語った。
寝ている間に学習、一晩で上達したロボット
「購入時の性能が一番低い」を体現するのが、会場に展示した「学習ループ」のデモだ。ロボットが苦手とする、つかむたびに形状が変わる素材のワイヤハーネスを箱に入れる作業を題材に、実機で収集したデータからNVIDIAの「Cosmos」で合成データを生成して学習し、「Omniverse」のシミュレーションで評価、精度が良ければ実機に展開するサイクルが自動で回り続ける。
イベント会場の環境に適応させるために学習工程をやり直したところ、効果は劇的だったという。久保田氏は「昨日の夜、我々が寝ている間に学習して、今朝はさらに上手になっていた」と明かす。
「目」はインフラに、「動き」はロボットに
大規模なAIモデルの実行にはロボット搭載のGPUでは処理能力が足りない。そこで、現場の状況を判断するVLM(視覚言語モデル)はソフトバンクのインフラ側で、動作を生成するVLA(視覚言語行動モデル)はロボット側で動かす。
両社は、物流倉庫において別の製品の下に隠れたスマートフォンをVLMが推測し、フィルムをどけてから取り出すといった作業を実現する技術も実証した。
安川電機は1997年に油圧や圧縮空気などの動力を使わず電気のみの動力で動かす「全電気式」の産業用ロボットを世に出した老舗。「必要な場面に、必要なロボットを、精度よく安全に使える状態で提供する」(久保田氏)を基本に、安全面を含む現場実装を担う。ソフトバンクは、大型AIデータセンターや日本各地の分散型AIデータセンター、全国の基地局に設置したエッジAIサーバなどを活用したGPU基盤と、開発工程を効率化するシステムを提供する。
協業のきっかけはソフトバンクの「突撃」
協業の始まりは、湧川氏の「突撃」だった。「フィジカルAI分野で協業したい」と安川電機に打ち合わせを申し込み、「ごあいさつだけなら」と聞いて訪問。ところが、当時社長を務めていた小川昌寛氏から「ソフトバンクにやってほしいのは、そこじゃない」と提案を受け、あいさつのつもりが2時間弱の議論に。ここで得たアイデアが協業の出発点になったという。
その後、2025年6月ごろに小川氏は今回の協業の成果を披露するために、12月開催の「2025国際ロボット展」(iREX2025)でブースの最前スペースを用意すると宣言。9月までに目処が立たなければ同スペースを他の展示に回す背水の陣で、約半年でデモにこぎ着け、両社は協業を正式発表した。
「データは現場にある」
湧川氏は「フィジカルAIはデータが肝。AI時代においては現場のデータをどう学習ループに入れ込むかが企業経営で重要になる」と訴え、イベント後の取材では、ソフトバンクとしては2030年を待たずにフィジカルAIを社会実装したいと抱負を述べた。久保田氏も「AIを搭載したロボットが出てきてまだ3年。基盤モデルの活用で、できることが加速的に増えていく」と展望を語った。
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