ローカルLLM利用のクリニックが話題 院長自ら環境を構築 「医療機器より安い」は本当か
ローカルLLMを利用しているクリニックが話題だ。Xユーザーのところてん氏が「病院のWebページ見てたら、(ローカル)LLM利用の注意書きが書いてあってびっくり」と投稿。投稿で引用されているクリニックのお知らせには「当院では診療の質向上と業務効率化のため、院内に設置したAIサーバー(ローカルLLM)を利用して診療情報の処理を行っています」と記載されている。「先進的」「医療機器に比べたら安いのかも」といった声が相次ぎ、投稿の表示回数は59万回を超えている。
このお知らせを掲載した本郷真砂ハートクリニック(東京都文京区)の院長、村岡洋典氏に話を聞いたところ、村岡氏自ら米Appleの「Mac Studio」を使い、ローカルLLMの運用環境を構築しているという。主な用途は過去の診療情報の要約と、音声認識を利用したカルテ作成の補助だ。「処理はすべて院内の機器内で完結している」とした上で「自身の情報が院内のAIに取り込まれることを希望しない場合は、受付まで申し出てほしい」と注釈している。
患者の機微な情報を扱いながら、少ない人手で多くの患者に対応する必要があるクリニックは、ローカルLLMの導入効果が最も現れやすい現場の一つだと思われる。一方、本郷真砂ハートクリニックのように自ら環境を構築できるクリニックは多くないだろう。既に、医療機関向けにローカルLLMの運用環境を構築するITベンダーは複数存在し、今後そのような業者を通して導入が進むと思われる。
医療現場向けのAIサービスを提供し、ローカルLLM運用環境の構築も手掛けるGENSHI AI(東京都千代田区)の長嶋大地代表によると、「ローカルLLM事業は立ち上げたばかりだが、20件以上の問い合わせを受けている」という。
同氏によれば、特に現場のニーズが大きいのが問診時の音声の文字起こしと要約、カルテへの転記だという。患者のプライベートな情報が詰まった診察内容を院外に出さずにAIで処理できる点がローカルLLMの魅力だ。
GENSHI AIはローカルLLMの稼働環境として米NVIDIAの「DGX Spark」を提供。院内の閉域網でAIの推論を完結させ、国が策定した医療情報の取扱いに関するガイドライン「3省2ガイドライン」に沿った運用の実現をうたう。
LLMは米Googleの「Gemma 4 31B-it」を採用する一方、EmbeddingやOCR向けのモデルは医療情報の処理に特化したものを独自開発しサービスに組み込んでいる。
なお、初期費用はマシン代込みで約400万円から、保守費用は月額約30万円からだという。運用方法に合わせて構成をフルカスタマイズすると初期費用が約1000万円になる可能性もあるとしている。
ちなみに、本郷真砂ハートクリニックが導入したMac Studioは最も安価なモデル(「M5 Max」チップ、36GBユニファイドメモリ搭載)で約42万円だが、より大きなモデルを他システムと同時に利用するために96GBユニファイドメモリにし、「M5 Ultra」チップ搭載にすると約95万円からとなる。
ベンダーを通して導入すると「医療機器と比べると安い」とはなかなかいえないが、患者の個人情報を保護しながら業務効率化も実現するには必要経費ともいえるかもしれない。街のクリニックでもAIが活躍する未来は来るのか。今後に注目したい。
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