AIは発火しそうなリチウムイオン電池を“聞き分ける”? 94%の確率で前兆を検出 米政府機関
「AIはリチウムイオン電池が発火しそうになるのを聞き分けられる」――米国政府機関の米国立標準技術研究所(NIST)は11月14日、そんな研究成果を発表した。
「AIはリチウムイオン電池が発火しそうになるのを聞き分けられる」――米国政府機関の米国立標準技術研究所(NIST)は11月14日(現地時間)、そんな研究成果を発表した。リチウムイオン電池が発火する際に出すクリック音を聞き分けられるよう、AIに学習させた。結果、94%の確率でクリック音を検出したという。
NISTによると、リチウムイオン電池は、発熱するのが速く、故障の初期段階では多くの煙を出さない。このため、リチウムイオン電池による火災において、煙を感知して作動する従来型の火災報知器では、延焼を防げない可能性があったという。
一方、リチウムイオン電池が発火する前には、化学反応によって膨張し、内部に圧力がかかる。多くの電池ケースには、圧力を逃がすための安全弁が付いており、この安全弁が壊れる際にクリック音が鳴るという。
これまでの研究でも、クリック音を火災の早期警報システムに利用できることは確認できていた。しかしホチキスを使う音など、類似する音が多くあったことから、安全弁が壊れる音のみを確実に検出する方法が求められていたという。
そこで研究では、機械学習モデルをこのクリック音を認識できるよう訓練した。中国の西安科学技術大学と協力し、リチウムイオン電池が爆発する音を38種類録音した。これらの速度やピッチを調整して1000以上の音声サンプルを準備し、学習させた。
結果、カメラに搭載したマイクを使い、94%の確率でクリック音の検出に成功した。「人が歩く音やドアを閉める音、コーラの缶を開ける音など、あらゆる音を使ってAIを誤作動させようとしたが、たった数種類の音でしか間違えなかった」としている。
今後は、さまざまな種類の電池とマイクを使い、実験を続ける。今回の試験では電池が完全に故障する約2分前に安全弁が壊れることが確認できたが、その他の電池でも実験を行い、音が鳴ってから故障するまでの時間を検証するとしている。
「開発が進めば、新しいタイプの火災報知器を作ることもできるだろう。家庭やオフィスビル、あるいは倉庫や電気自動車の駐車場のようなリチウムイオン電池が多い場所に設置し、事前に警告することで、人々が避難する時間を作れる」(NIST)
この研究成果は、第13回アジア・オセアニア火災安全科学技術シンポジウムで発表された。
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