先延ばし撃退法は、いよいよ最後のステップ。ステップ1〜4を経てきたからこそできる、意外な方法を紹介する。
ステップ1で、やることは明確になりました。ステップ2で快と苦痛を結びつけて、ステップ3で行動する日時を決めました。ステップ4で、行動しやすい環境設定を整えました。同時進行でどんな快と結びつけるかも明確にしました。そして、目盛りをつけて達成度が分かるようにもしました。
いよいよ最後のステップ5です。1〜4のステップでは、やりたいこと、行動しなくてはいけないことの優先順位ばかり上げてきましたが、ステップ5では切るほう(行動しないと決めること)の優先順位を上げていきます。
ここで、もう一度最初のリストに戻ってください。そして「やりたいけれど、あまり重要じゃないな」というものを、一度リストから完全に消してほしいのです。2〜3ヵ月経って、「切ったけれど、やっぱりやりたい」、という気持ちが戻ってきたら、そこで改めて“新入社員”として採用してほしいのです。
というのも、ステップ2〜4を経て、やることが明確になったので、行動することのボリュームが増えてきているはずです。アレもコレも、ソレもやったほうがいい、となると、自分の能力とか時間がパンクしてしまいます。そうすると「行動することを止めたほうがいい」というものを選ばなくてはなりません。思い切って、切るしかないのです。リストを見て、迷ったものは消していいです。
ここで切れずに、コレもコレもやりたいとなると、全部がどっちつかずのまま、身に付かないまま残ってしまうことになりかねません。それは最悪の状態です。たくさんのToDoリストで、毎日しんどい思いをする割に成果が出ないのだったら、「この行動の結果が出るまでは、ほかはやらない」と、集中してやることを決めてほしいのです。
実は、こういう方法を取ると、自分の能力がアップしていきます。結果的には、一度切ったものもできるようになります。でもそれは、「これだ!」と思ったことにフォーカスして取り組み、結果を出して能率が良くなってきて初めてできるようになるものです。いったんは切る──この勇気が必要です。この「切る勇気」は、ステップ4までできていないと出ないものです。
心のなかで「今は保留にしておいて、能率が上がったらやろう」とちょっとでも思っているようではダメです。エネルギーというのは、ほかのことを意識しているだけで削がれてしまうものだからです。
例えば、携帯電話のバイブレーションがブルブル震えている状態を無視して、別の作業に集中できるでしょうか。それも、3分おきくらいにブルブルかかってくるとしたら、どうでしょう。それが重要な電話じゃないと分かっていても気になりますし、作業に集中できませんよね。だったら一度電源をオフにしてほしい。マナーモードじゃなくて、完全にオフにしてほしいのです。本当に重要なことだったら、会社や家の電話に直接かかってきますよね。
行動することも、それと同じです。「ほかのことはしていない、コレに集中している」と思っていても、実際は集中できていません。リストにあるだけで気になっているのです。しかもやりたいと思ってリストアップしたことは、1個だけじゃなく、10個、15個とありますね。それらに余計なエネルギーが使われてしまいます。
だから思い切って切ってほしい。自分のノートに残さないでほしいのです。残っていると「いつか、これをやる時間を取らないと」と気になります。
本当に必要なことだったら、後でまた出てくるものです。あなたにとって本当に必要だったら、完全に消しても、なんらかの形で出てきますから安心してください。また、出てこないものだったら、もともと必要ないもの、そんなに重要じゃなかったものなのです。
ノイズがいっぱいあると、本当に重要なことが伸びてきません。80の利益を生み出すエネルギーを、本当に大切なものに費やしてほしい。ほかは一度止める。この勇気が必要です。
エグゼクティブコーチ 代表取締役
ピークパフォーマンスコンサルタント
平本相武(ひらもと あきお)
1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。20数年にわたり、深く心理学・瞑想・メンタルトレーング法などを日本各地・米国・インド他で学び続け、500種類以上の心理学・自己啓発系セミナーを研究・実践し続けてきた。その成果は、刑務所や病院でのカウンセリングをはじめ、一部上場企業での研修、トップアスリートおよび経営者等各界のリーダーへのサポート、執筆活動などを通して世の中に送り出されている。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。
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