コミュニケーションで大事なのは、信頼関係(ラポール)を築くことです(ラポールとはフランス語で「橋をかける」という意)。
信頼関係が形成されている状態とは、相手と場を共有している感じ、一緒にいる感じ、波長が合っている状態です。お互いに共有することがあるときに、信頼関係を感じます。よく、スポーツやお天気の話をしますよね。これは信頼関係を築きたいからです。政治や宗教の話では共有できない場合がありますが、天気だとほとんどの人が「暑いですね〜」といったら、「暑いですよね〜」と答える。暑さを共有しているわけですね。スポーツもいいですね。「日本代表はベスト4に入りましたね」といったら、大抵は「そうですね〜」となり、信頼関係を築けます。
この場合、自分が持っているものを相手に共有させるのではなく、相手が好きそうなものや話題を取り上げるのがいいのです。仮に、上司が釣り好きだとします。自分は釣りが好きじゃないにしても、何か共有できるものを探しましょう。「釣りが好きですか。じゃあ、よく海に行かれますよね」にしておいて、「実は僕もサーフィンをやるから、海によく行くんですよ」という感じで海の話題にする。すると、「海がいいよね」という部分を共有できます。
ただ、その話題であまりうまくいかない場合は、少なくとも相手が言った言葉を繰り返してあげると、相手は聞いてもらえた気になれます。これを「バックトラッキング」といいます。
A スポーツ、何が好きですか?
B スキーが好きです。
A スキーが好きなんですか。僕は釣りが好きなんですよ。
B ああ、釣りが好きですか。
A そうなんです。
お互いに相手の言葉を繰り返してバックトラッキングしています。そうすると、共有ゾーンがなくても、信頼関係を築くことができます。
ただ、言葉はコミュニケーションの影響度が7%なので、なんでもかんでも言葉で信頼関係を築けるとは限りません。相手が話を聞いてもらえたと思える割合が大きいのは、次に紹介するボディランゲージや声のトーンです。
次の例を見てください。
部下 (椅子に座っている状態。前屈みになって)「課長、これがどうもうまくいかないんです」
上司 (背もたれに寄りかかってくつろいだ感じで)「うまくいかないんだ」
これは姿勢が合っていない例です。部下からすると、親身になって聞いてくれている感じがしませんね。
姿勢が合っていると、相手と自分が近いという感じがします。言葉よりも、ボディランゲージの影響度の割合が大きいわけです。
だから、立っている上司が、座っている部下を見下ろして「そんなアイデアを考えてるんだ」、なんて言っても威圧感を感じてしまいます。なのに、この影響度を知らないと、「俺は部下の話、よく聞いてるんだよ」と思ってしまう。でも、実はボディランゲージの違いで信頼関係が築けていないのです。座ったら座る、立ったら立つ、相手と同じような姿勢をとることが大事です。
足を組んでいたら、自分も組む、腕を組んでいたら組むなど、身振りを同じようにするといいのです。でも、あまりにも極端にやると、「こいつマネしているな」と思われてしまいます。全く同じだと、ちょっといやらしい。なので、足を組んでいたら、こちらは腕を組むなど部位を変えたり、サイズを小さくしたりします。
例えば、「△△遊園地のジェットコースター、こ〜んなに(大きく腕を広げる)大きいんですよ」と相手が言ったとしましょう。その際に、すぐさま同じように大きく腕を広げて「こ〜んなに大きいんですね〜」とやっても、白々しいですね。
そこで、相手が「こ〜んなに大きい」と腕を大きく広げたら、こちらは小さく軽く手を広げる。これだと自然に見えて、「聞いてますよ」という感じも伝わります。また、時間をずらすのもいいです。
A △△遊園地のジェットコースター、こ〜んなに(大きく腕を広げる)大きいんですよ」
B 「あら、そうですか。こんなに(腕を広げる)大きかったんですね」
こんな風に、ちょっとずらす。そのまま真似る必要はありません。部位を変えたり、サイズを変えたり、時間をずらしたりすることで、自然にできるといいでしょう。このように、相手と姿勢や身振りを合わせることを「ミラリング」といいます。
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