江戸の都を自転車で──「市中引き廻し」ルートを疾走するオンラインのみで人は生きられるか(3)

先日の東京マラソンではないが、東京は改めて回ってみると新たな発見が多い街だ。Yahoo!で公開している江戸の古地図を元に、自転車で都内30キロメートルを回ってみた。

» 2007年03月05日 08時55分 公開
[杉村啓,ITmedia]

 先日、テレビを見ていたら『タモリ倶楽部』という番組で「市中引き廻しルートを歩く」という特集をやっていた。そう、時代劇なんかでよくある「市中引き廻しの上、磔獄門の刑に処す!」の「市中引き廻し」を実際に歩くのだ。番組では現在Yahoo!で公開している古地図を元に、当時のルートを歩いていた。これ、僕もやってみたい!

 実は僕は自転車が趣味で、しょっちゅうフラフラと自転車で散歩(ポタリング)をしている。この市中引き廻しも、4年前に自転車で体験済みだったりして。でも、当時は正確なルートが分からなかったので、いくつかのチェックポイントを設けてそこを訪ねる形にした。市中引き廻しは見せしめのための刑罰だから、その罪人に関係が深いところの近くを通るようにルートを変えたりと、決まったルートがないからだ。

 ただ、今回は古地図に描かれているルートをたどって行くことにした。歩いて行ってもよかったけど、ここはやっぱり自転車で。途中途中で道を確認できるように、自転車で持ち運べる携帯端末「W-ZERO3es」を持ち、準備は万端。出発だ。

13:13 小伝馬町

 スタート地点は小伝馬町の牢屋敷跡。現在は十思公園という公園になっている。「牢屋敷跡の由来」とか、「吉田松陰先生終焉の地」とか書かれた説明をきちんと読んで、気分を盛り上げる。市中引き廻しされるっていうのに気分が盛り上がるのは変だけど。


 スタートして、タモリさん達も歩いたルートを通ろうとして気づいた。一方通行を逆走しまくりだ。三井住友銀行のところから路地に入るけれども、そこに至るまで全部一方通行を逆走になる。徒歩だったらスムーズに行けるけど、自転車の僕は自転車を押したりちょっと遠回りをしたりして、いきなり大変な目に合った。現在の道路行政は市中引き廻し自転車旅には優しくないらしい。

 そして走ったり押して歩いたりすること20分、江戸橋に到着。江戸橋を超えたところにある、歩行者&自転車用のトンネルも発見。うーん、確かに東京のど真ん中にあるとは思えない雰囲気を持っている。


 ちなみにここで写真を撮っていたら、買い物帰りと思しき自転車に乗ったおばちゃんに「おにいちゃん、ここって自転車通れるの?」と聞かれてしまった。「自転車の方はおりて通行して下さい」と大きく書かれているのに、そう聞かれちゃうぐらいの雰囲気だったのだ。さすがは市中引き廻しルートだ。

 八丁堀に入った後、現在の浅草線・宝町駅があるあたりで、困った事に出くわした。ここで昭和通りを横切らなくちゃならないのに、信号がないのだ。信号どころかセンターラインに柵があって容易には横断できないようになっている。やっぱり現代の道路行政は市中引き廻し自転車旅には優しくない。


 仕方なく、近くの交差点へ行き、若干回り道をすることにした。ここでの信号待ちの時に、今度は自転車に乗ったおじちゃんが「にいちゃん、その自転車高そうだねぇ。いくらぐらいするの?」と聞いてきた。道路行政とは違って、東京の人は自転車旅に優しいようだ。信号待ちの間に雑談して、再び市中引き廻しルートへ。

14:23 札の辻

 京橋駅のところから国道15号線に入り、あとはひたすら南下する。銀座の街並には誘惑がいっぱいだ。木村屋のあんぱんとか、栄養補給にちょうどいいというか、ほかに何が必要だろうかというほど美味しい。市中引き廻しをする人たちも、途中で何か食べたんだろうか。罪人は食べられないとしても、引き廻す側の人達はお腹がすくだろうなぁ。


 そうして南下していってたどり着いたのが、田町駅そばの「札の辻」。どうやらここが最南端で、折り返し地点らしい。ここまででスタートしてから70分くらい。

 そこから国道1号線を北上してしばらく走っていると、東京タワーが綺麗に見えてきた。この日は本当に天気が良くて、走っていてめちゃめちゃ気持ちいい。

14:52 怒られる

 そうして走っていると、走りやすかった1号線ともお別れしてまたもや路地へ。国立印刷局の側を通過してちょっと走ると、自転車文化センターを発見。あ、ここにあったんだ。じゃあ自転車好きとして記念に1枚パシャっと……と、自転車文化センターの写真を撮っていたら声をかけてくる人が。

 「何をされているんですか? アメリカ大使館に何か御用ですか?」

 おまわりさんでした。

 うわっ、ここはアメリカ大使館前だったのか! こんなところでデジカメ出したらそりゃ怪しまれるって!

 慌てて、古地図を見ながら市中引き廻しルートを辿るのが面白そうだったので自転車で走っているところでして……と説明を。別にやましいことは何もなかったんだけど、慌ててそこを出発。あの時のおまわりさん、怪しそうに見える行動をしちゃってごめんなさい。

15:35 神楽坂

 気を取り直して溜池に入り、そこから赤坂を経由して四谷へ。四谷の四谷御門は、市中引き廻しの際に必ず通る場所だったそうな。というわけで4年前にもここを通ったのだった。


 そこからさらに外堀通りを北上して市ヶ谷へ。市ヶ谷には市ヶ谷御門があるからだ。ここで路地をまた通って、神楽坂へ。この神楽坂通りにある「五十番」は絶好の(?)買い食いポイントとして普段から利用していたりする。大きな肉まんがオススメだ。ちなみにこの神楽坂通りも一方通行を逆走する(しかも下り坂)なので要注意だ。

 神楽坂から牛込御門であるところの飯田橋を経由し、水道橋へ。水道橋から東京ドームを見つつ外堀通りを外れ、本郷へ向かう。さらに本郷から湯島神社の前を経由して上野へ。上野も美味しいお店がいろいろあるんだよなぁ。

 と、上野駅のところで同じようにロードバイクにまたがった外人さんに出会った。たまたまこの人の後ろについて走る形になったのだけど、この人が速い速い。両手を離してジャージの裾を直したりしながら走っているのに、時速30キロを超えていたりして。やるな。

16:28 浅草

 その外人さんとは本願寺のあたり(現在の田原町駅)のところで別れ、広小路を通って雷門通りへ。そうして雷門のところに着くと、さっきの外人さんが! 別の道を通っていても目的地は一緒だったらしい。


 ビールの泡をモチーフにしたアサヒビールのオブジェが見える交差点で6号線を北上。この道を今戸橋のところで折り返すのが目的だ。ただ、現在そこには橋がないらしい。そうして調べながらたどり着いた折り返し地点は、お寺でした。その名も待乳山聖天(まっちやましょうでん)。凄い名前だ。いや、他意はないですよ。ええ。


17:12 ゴール

 待乳山聖天で折り返し、そのまま6号線を南下。そして、そのまま小伝馬町の十思公園でゴール。晴れて市中引き廻しルート制覇!

 途中で迷ったりしたせいか、サイクルコンピュータを見ると総走行距離は30.8キロメートル。Yahoo!に載っていたよりも2キロほど多い距離を走ってしまったようだ。でも、楽しかった。タモリさんもあまりの楽しさにほかの人が歩くのをやめた後もバスで回ったそうだけど、その気持ちがよく分かる。今度は「鬼平ゆかりの地巡り」でもしようかなぁ。

筆者:杉村 啓

IT系テクニカルライター。WindowsでもMacでも何でもこいのオールマイティー型。主に初心者向けの記事を得意にしています。最近は自転車の本を書いたり、アニメ料理評論家という肩書きがついたりと、自分でも何者なんだかよく分からなくなってきていたりして。デジタルガジェット好きが災いし、持ち歩く荷物が多くなりすぎてしまったことから、オンラインサービスでいろいろ済ますことができれば荷物が減るのではないかと思い、あれこれ画策中。


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