メールアドレスしか知らないあの子にプレゼント――メールギフト365

3月7日にオープンしたばかりの「メールギフト365」。一番の特徴は、相手の住所が分からなくてもギフトを贈れるところ。アイデアを思い付いたのは、2007年で入社5年目となる上河内久恵さん。サービスインまでに彼女が学んだこととは――。

» 2007年03月14日 23時57分 公開
[鷹木創,ITmedia]

 「あの人にプレゼントを贈りたいが、住所が分からないんだよね」ということはないだろうか。今どきのコミュニケーションはメールや電話が主流だから、ギフトを機会に「これから仲良くしたい」相手の住所は得てして知らないものだし、「プレゼントを贈りたいから住所を教えて」と尋ねるのも下心を見透かされそうで不安だ。

 そんな内気な方に利用してほしいのが、文房具大手コクヨの関連会社でオンライン通販を手がけるカウネットが3月7日にオープンした「メールギフト365」である。このサービスの最大の特徴は、相手のメールアドレスさえ知っていればギフトを贈ることができること。贈り先のメールアドレスを登録して、ギフトを注文すると、メールギフト365のシステムから贈り先に発送先住所の確認メールが送られる仕組みだ。

カウネットが3月7日にオープンした「メールギフト365

“ほふく前進”で事業化した店長

 メールギフト365のアイデアを思い付いたのは、“店長”を務める上河内久恵さん(27歳)。マーケティング志望で2002年に新卒としてカウネットに入社した。Amazon.co.jpや楽天市場のオンラインショップは、当時からよく利用していた。仕事ぶりは、いわゆる普通のサラリーマンやOLと同じだった。ルーティンの仕事を淡々とこなし、夕方の定時には帰る毎日だったのだ。

メールギフト365の“店長”を務める上河内久恵さん

 転機は2005年の社内ベンチャーの公募だった。仕事を“処理”するだけの毎日に正直うんざりしていた。他社への転職も考えたことがある。そんな時の公募だったのだ。「カウネットで、もうちょっと何かできるはず」と、日ごろAmazonや楽天などで感じていた不便を解消するサービスを上司に話してみた。

 話はとんとん拍子に進む――と思っていた。実際は、2005年11月の第1回プレゼンテーション、12月の第2回プレゼン以後、事業化決定のゴーサインが下ったのは2006年8月。その間、具体的なビジネスイメージの説明や社内調整などに明け暮れた。事業化の目処が立たないなか、25歳・入社3年目の社員1人ではできることは限られる。そんなときに、頼りになったのは部署の上司や同僚だったという。

 「プレゼン資料を見てもらったり、事業計画を相談させてもらったりしました。話がぜんぜん進まなくなってしまったときは、通常業務の脇で『あのベンチャーの話ってなくなったの?』なんて聞かれたのは辛かったですね(苦笑)」

上河内さんの相談相手になった先輩の長野昌子さん(右)。長野さんも、コクヨで社内ベンチャーの立ち上げに苦労した経験を持つ

 事業化が決まった後も、当初から相談していたシステム開発会社にスケジュールの延期を申し込まれ、2006年末に予定していたオープン時期が2007年3月に変更されることを余儀なくされた。オープンした現在でも、上河内さんのアイデアすべてを実現したわけではない。それでも「まずはオープンすること」を優先したのは、成長の証かもしれない。

 「部下として仕事をしていたころは、パッパと“処理”していたのですが、最近の仕事は簡単に処理できないことばかりです」。帰宅する時間も終電間際になり、時にはタクシーで帰ることも増えた。本来、淡白な性格だ。何事もあきらめがちだったという彼女だが、「これ(メールギフト365)だけは、しつこくやってしまうんです」と笑う。オープンまでの努力の中で「立ち上がって進めないときは、ほふく前進してでも進む」と泥臭い処世術を学んだのだ。

栄養ドリンクが“ギフト”になる可能性

 そんな上河内さんがオープンしたメールギフト365の品揃えは、現在500点程度。女性向けの化粧品やアクセサリが主流だが、将来的には、メールギフト365でもカウネットで扱う消しゴムやボールペン、栄養ドリンク、カップめんなども扱う予定だ。

 現段階では贈り主はメールギフト365のPC用Webサイトから、贈り先の携帯メールアドレスを登録する。贈り主の携帯電話から発注するのは「今後の課題」(上河内さん)という。贈り先をびっくりさせたい場合は、自分自身を受け取り人に設定し、手渡しする方法もある。贈り主の予算内で、贈り先がいくつかの商品群から好きな商品を選ぶことも可能だ。

 また、文房具のオンライン通販で実績にあるカウネットでは独自の流通網を整備しており、メールギフト365でもカウネットの仕組みを利用する。そのため、商品の在庫がある状態で受注できる可能性が高い。在庫がある状況であれば、前日の15時までにクレジットカード決済すると最短で翌日には届く。つまり、注文からの発送までが早いというわけだ。

 素早くギフトを贈れると何が変わるのだろうか。上河内さんはこう答える。「これまでギフトというと高級品や高額品といった形式ばったものが多かったですが、手軽に利用できるようになると、日常品だってギフトになるんです」。例えば、飲み会のある日のお昼過ぎに、会社の上司や同僚宛に栄養ドリンクを頼んでおく。翌日、二日酔いで苦しむ上司や同僚に、昨日注文した栄養ドリンクがプレゼントされるのだ。

 ギフトというと、彼氏や彼女の誕生日や記念日、入学/進学祝い、就職祝いなど、ある程度定まったタイミングで贈るもの――といった思いがある。メールギフト365を利用すれば、そういった固定観念に縛られないと、上河内さんは言う。確かに、相手の欲しいものとタイミングさえ見誤らなければ、ギフトをカジュアルに贈ることができそうだ。


 メールギフト365がオープンして7日たった。まだ“ほふく前進”中かもしれないが「順調ですよ」と明るく答える上河内さんの声からは、「立ち上がって進むのだ」という意思と自信を確かに感じた――。

ブログでは、スタッフのオススメギフトを紹介している。“店長”の気持ちも分かる――かも!?

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