第8回「ブログやSNS、不用意に会社のことを書いてませんか」研修で教えてくれない!

ブログやSNSなどを通じて、個人で情報発信する人が増えている。しかし「発信した情報が誰かに読まれている」ということに対して“無頓着”なケースも散見する。メディア商事の小林君は「たまにしか更新しませんけど、趣味のサッカーのこととか書いてます」というが……。

» 2007年07月31日 18時56分 公開
[山賀正人,ITmedia]

 大手総合商社「メデア商事株式会社」の営業部3課の新人・小林ケンタは、課の先輩・高柳ワタルと昼ご飯を食べていた。

高柳 小林って、ブログはやってるのか?

小林 はい。たまにしか更新しませんけど、趣味のサッカーのこととか書いてます。

高柳 へぇ〜。サッカーならオレも読んでみたいな。URLを教えてくれよ。

小林 えっ、ちょっと恥ずかしいなぁ……。じゃあ後でメールしますね。

高柳 頼む! ところでそのブログってサッカー以外のことは書いたりしないのか?

小林 日記代わりに書いてるので、たまには会社でこんなことがあったみたいなこととかも書くことはあります。

高柳 おいおい。会社のことは書かない方がいいぞ。

小林 えっ? でも、ブログに本名は書いてないし、もちろん会社のことも固有名詞は一切書いてないですから、大丈夫だと思いますよ。それにそもそも僕なんかのブログ、見てる人なんて、いないですよ。コメントだって全然つかないし。

高柳 その油断が危険なんだ。

 ブログやSNSなどを通じて、個人で情報発信する人が増えている。しかし「発信した情報が誰かに読まれている」ということに対して“無頓着”なケースも散見する。特にSNSの場合、友人の紹介で会員になった人や顔見知りしか見ていないだろうという油断から、勤務先や取引先の情報、場合によっては機密情報すら、掲載してしまうケースがあるのだ。

小林 僕もその点は注意しているつもりです。だから固有名詞は書いてないわけですし、それに仕事のことはそもそもそんなに詳しくは書いてないですよ。

高柳 確かに固有名詞が書いていなければ、固有名詞を検索キーワードとして検索して、見に来る人はいないかもしれない。でも、もし偶然アクセスした人が会社や取引先の関係者だったらどうだろう。関係者ならば、ある程度読めば、どの会社のことかはけっこう分かってしまうものなんだ。

小林 そうなんですか?

高柳 そうだ。会社の関係者は見てないだろうと油断して、SNSに掲載した情報がもとで情報漏えい事件に発展し、大きな問題になったケースもあるんだ。幸い、ウチの会社ではなかったけどな。

小林 そんなことが……。

高柳 はじめのうちは気を付けていても、書き慣れてくるうちに、ついつい油断して本来書いちゃいけないことを書いてしまうことはよくあるんだ。だから会社のことはできるだけ書かないようにした方が安全だぞ。

小林 気を付けます……。

 ブログやSNSによるコミュニケーションは、自分の(バーチャルな世界での)「身近な存在」のみに限られた「閉じた世界」という錯覚を起こしがち。そのため、掲載する情報に関して、「限られた人しか見ていないだろう」「こんなのを見ている人はいないだろう」という思い込みにつながってしまうのだ。

 しかし、インターネット上に掲載する情報は「公開」されているものなのである。ブログはもちろん、クローズドなSNSの場合であっても、自分の日記を見た友人たちが外部に言いふらさないという可能性は否定できない。つまり「誰も見ていないだろう」ではなく「誰が見ているか分からない」という意識が必要なのだ。

著者紹介 山賀正人(やまが・まさひと)

セキュリティ関連の話題を中心に執筆中のフリーライター。翻訳(英語、韓国語)やプログラミング、システム構築等コンサルなど活動は多岐に渡る。JPCERT/CC専門委員。Webサイトはこちら


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