倦怠期を乗り切るポイントは、ズバリ、ゲーム性にあります。実績になるべく近い予定を見積もるという限界値への挑戦と、立てた予定になるべく近い実績を残すという精度の追求を狙ってみましょう。
ペア・ワークの倦怠期を乗り切るには?
コツ:「オンスケジュール」の快感を知る
自分で立てた予定は、破ってもペナルティがありません。自分で自分を殴っても、おのずと手加減をして致命的なダメージに至らないのと同じように「まぁ、仕方がないか」とあっさり流してしまうのです。
また、ご褒美も得られません。よほど意志の強い人であれば、予定を守ればお菓子を食べてよい、守れなければお菓子を食べられない、といった「自分ルール」を守ることができるかもしれません。しかし、たいていの人にとってそれは難しいことです。予定を守らなくても、お菓子を食べることはできるからです。
このように、「自分ルール」というものは破りやすく、守る張り合いも少ないものです。そこで、「ペア・スケジューリング」(6月15日の記事参照)という形で、お互いの予定を公開する方法が考えられます。自分以外の人に自分の予定が覗き見られているという状態を作ることで、「予定を守らなくては」というプレッシャーを得ることができるからです。
でも、「ペア・スケジューリング」を始める前には想像しにくいことかもしれませんが、他人に予定を見られているプレッシャーにも、いつしか人は慣れてしまいます。見られているとはいえ、予定を破った側にペナルティが課せられるわけでも、予定を守ったら給料が上がるわけでもありません。そのためだんだんと、「ペア・スケジューリング」も「自分ルール」と同じように、効果が薄れていくのです。
もちろん「予定をよりよく守れたかどうか」でランチを賭けるといった方法も考えられます。そうすれば、「守る」ことに「ご褒美」が与えられ、「破る」ことが「ペナルティ」が課されますから、張り合いが出るでしょう。ただし、この方法では、「予定」を守る目的が「予定と実績のブレ幅を相手よりも小さくする」ことに変質しかねません。本来予定を守るのは、自分自身の仕事を進めるためであって、他人と比較・競争するのは本筋からずれているところがあります。
もともと「ランチを賭ける」というのは、「予定を守る」ための動機づけでしかありません。そして「ランチを賭ける」ことが動機づけとして働くのは、先の展開が読めないからです。
「予定の進捗状況」を守れたかどうかについて他人と競争するということは、完全に自分の思惑通りにいくものではありません。自分がかなりよく仕事をこなしたと思っても、相手はそれよりもさらに完璧に作業をこなしているかもしれません。反対に、自分の作業記録はズタズタでも、相手の方はもっとひどい一日を過ごしたかもしれません。
人間と行う勝負事の面白さは、そこにあるといえます。先の展開が読めないのです。
そこで、「公開した予定をきちんと守る」という本題に戻りますと、そこにも先の展開を読み切れない要素が隠れていることが分かります。それはほかでもなく、「自分の見積もり通り、仕事を終わらせられるかどうか」ということです。
仕事をしていれば、思わぬアクシデントに見舞われることもあるでしょう。どれほど慎重かつ綿密に予定を立てたとしても、その通りに終わらせられるという保証はどこにもありません。「だから私は予定は立てない」という人もいるほどです。しかしそれは理にかなった態度ではないでしょう。
というのも、「予定通りに終わらなかった」という経験がどれほどあったとしても、それは「絶対に予定と結果は違ったものになる」ということを意味しないからです。人は、完璧で精密な予定を立てることはできなくても、妥当性の高い予定を立てることはできます。3カ月の予定が、4カ月かかってしまったということはあるでしょう。しかし、結果として4カ月かかってしまったが、予定では1日で終わるはずだった──ということはないはずです。予定の精度は、相対的な問題なのです。
予定の精度を少しずつでも高めていけば、やがて予定に限りなく近い実績を残すことができるはずです。そしてここに、ゲーム性があります。実績になるべく近い予定を見積もるという限界値への挑戦が一方にあり、他方には立てた予定になるべく近い実績を残すという精度の追求があります。このような姿勢で臨むなら、予定と実績をピッタリ一致させる、すなわちオンスケジュールで仕事を終える快感は、相当大きなものとなるはずです。
以上のようなことは、もちろん一人きりでもできるでしょう。でも、ペアを組んで「ペア・スケジューリング」の中で行えば、よりゲーム性を高めることができます。いったん公開してしまえば、予定を「動かす」ことが難しくなるからです。すなわち、ルールが自分のものだけでなくなり、破りがたいものに変わるのです。こうして、事前に公開した予定に対して、どれだけ自分がそれに近い実績を残せたか、それを認識してもらうというゲームが成立するわけです。
この感覚は、なかなか慣れたり飽きたりすることが難しいもののはずです。というのも、そうそう頻繁にはオンスケジュールで終えることはできませんし、仮にたまたまできたとしても、毎日すべての仕事を予定通り終えられることはまずあり得ないからです。
こうしたポイントを追求していくことで、自分の立てた予定を守ろうという強いモチベーションが生まれます。同時に、守ることのできる現実的で精度の高い予定を公開したいというモチベーションにもつながるはずです。
1974年、東京生まれ。ブログ「シゴタノ!仕事を楽しくする研究日誌」主宰。学生時代よりビジネス書を読みあさり、システム手帳の使い方やスケジュール管理の方法、情報整理のノウハウなどの仕事術を実践を通して研究。その後、ソフトウェアエンジニア、テクニカルライター、専門学校講師などを経て、現在は仕事のスピードアップ・効率アップのためのセミナーや研修を手がける。デジタリハリウッド講師。著書に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』『そろそろ本気で継続力をモノにする!』、近著に『Life Hacks PRESS vol.2』『LIVE HACKS! 今を大切にして成果を5倍にする「時間畑の法則」』がある。
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