あなたの暗証番号は、「奥さんの誕生日」「子供の誕生日」「実家の電話番号」──。ギクッとした人はいるだろうか。
実際、ある調査会社が非公開で行ったパスワードに関するアンケートでは、ほとんどのユーザーが“分かっちゃいるけど”誕生日などの身近な数字を使っていたようだ。ダメと言われていても、実際はそういった数字そのものであることが多い。
いや、そうした数字を使ってはいけないことは知識としては分かっているのだ。でも、それならどんな数字(しかも覚えていられるもの)を使えばいいのか。
今回は、特に作成しにくい数字のパスワードについて、誕生日や電話番号を使わない作り方を考える。
パスワードに向いている数字に必要なのは、自分で覚えていられて、かつ複雑で、ランダムな数字。この条件にうってつけなのが数学に現れる数だ。例えば円周率で知られる「π」であれば、3.1415926535……という数字。ここから4桁なり6桁なりをいただく。例えばπの10桁目、と決めたら「5897」だ。
π 3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288……
もっとも実際に使うには、πのようなメジャーな定数ではなく、変わったものを使うといい。定数の由来を知れば、お気に入りの定数も出てくるだろう。
e 2.71828 18284 59045 23536 02874 71352……
「e」はネイピア数や自然対数の底とも言われる。金融関係に興味のある人なら馴染みやすいかもしれない。“複利の力”を体現している数だからだ。
例えば、1万円を年利10%で1年複利で預けると1年後には1万1000円になる。これが半年複利だと1万1025円、1カ月複利だと1万1047円、毎日複利だと1万1051円と、利息計算の頻度が高くなるほど金額が増えるのだ。では無限に頻度を高くしたらどうなるのかというと、eになる。年利100%で計算すれば分かるが、利息計算の頻度をどんどん上げていくと2万7182円にどんどん近づいていく。
ここで言う「φ」(ファイ)は黄金比のこと(「τ」とも言う。「phi」とGoogleで検索すると値が現れる)。デザイン関係の方なら興味を持つかもしれない。最も美しい比──といわれており、計算式としては、1:(1+√5)/2で表される。身近なところでは、名刺やテレホンカードの縦横比が黄金比だし、パルテノン神殿の各部が黄金比だというのも有名なところ。
こちらは昔懐かしい2の平方根。Googleで「√2」と入力すると値が出る。2だけでなく、3とか5とか6を使ってみるのもいい。ちなみにA4用紙やB5用紙などは1:√2の縦横比になっていて、「白銀比」と呼ばれている(2006年10月の記事参照)。
シンプルなところで1を7で割った数字も面白い。実は、0.142857と来た後、「142857」が延々と繰り返されるのだ。0.142857142857142857142857142857……という具合である。
そして7分の2は、0.2857142857143……となる。これは285714が延々と繰り返される。7分の3は0.4285714285714……で、428571の繰り返しだ。この繰り返しをよく見ると面白いことに気づく。繰り返しの頭の数字がずれるだけで、どの数字も途中からは142857の繰り返しなのだ。
分数 | 答え | 繰り返される数字 |
---|---|---|
7分の1 | 0.1428571428571 | 142857 |
7分の2 | 0.2857142857143 | 2857 14 |
7分の3 | 0.4285714285714 | 42857 1 |
7分の4 | 0.5714285714286 | 57 1428 |
そのほかにも、Wikipediaなどで調べれば、数学や物理でさまざまな定数があることが分かる。
こうした定数を使うことのメリットは、仮に数字を忘れてしまっても、電卓を使ったり、ネットで検索すればすぐに数字が現れるところにある。
またある4桁を使ったら、翌月は続く次の4桁を使うということも容易だ。例えばπの20桁目を最初のパスワードにするなら、3.1415926535 8979323846 2643383279をまず使い、続いて3832を使う……といった具合だ。
もちろん、「アイツのパスワードは絶対零度だ」なんて分かってしまっては元も子もないので、あまり口外しないこと。とはいえ、7桁目から使う──などと自分の中で決めておいたり、複数の定数を足したり、掛けたりした結果を使えばいい。各桁に全部1を足す、なんて方法もアリだ。
自分や家族の誕生日、自分がよく覚えている電話番号などを暗証番号に使っている方は、ぜひこうした定数も候補に入れてみよう。
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