雑談を次回の営業につなげるカメラの使い方樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

営業先から「面白いヤツだ」と思われると、アポイントを取るのも簡単になる。では、どうやって「面白いヤツだ」と思われるようになるのか。デジカメからトイカメラ、インスタントカメラまでを駆使した「次回のアポ取りが簡単になるカメラ術」をご紹介しよう。

» 2007年08月16日 18時38分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 「雑談用雑貨」という言葉を聞いたことがあるだろうか。実は筆者が造った言葉だから、ほとんどの方は知らないと思う。この雑談用雑貨を持っていると、営業に行った時、少なくとも30分は仕事以外の話で盛り上がる。相手も楽しんでくれるし、営業の受注率も上がる。営業とは、長く話をできればできるほど受注率が上がるものだからだ。

 雑談用雑貨で「面白いヤツだ」「いつも面白いものを持っている」と思われると、アポイントを取るのも俄然簡単になり、営業先といつでも面談が可能となる。となると、手に入れる情報も深く、広く、楽しくなり、親しくなり、受注率も当然上がる──というわけだ。

 22年間海外で生活した筆者は相手と親しくなるために、ありとあらゆる工夫をしてきた。「あなたの名刺」(5月22日の記事参照)やプリンタ機能付電卓(5月11日の記事参照)も雑談用雑貨の一種である。

 今回はカメラだ。筆者はデジタルカメラのカシオの「EXILIM Hi-ZOOM EX-V7」を愛用している。このほか「チェキ」「OKTOMAT」と合わせて3点セットをカバンに入れておくのだ。EX-V7に2GバイトのSDカードを入れておけば、静止画はほぼ無尽蔵に撮影できる。動画だって1時間ほどは撮影できるから、筆者は背広の内ポケットに入れていて、いつもどこでも何でもバカバカ写すのだ。

 チェキについては今更説明も不要だろう。Biz.IDの達人の仕事術にも登場した富士フイルムの青崎耕さんが開発したインスタントカメラだ。もう1つのカメラ、OKTOMATはご存知だろうか。ロモグラフィージャパンが販売する8つの連写レンズの“オクトパス”な銀塩カメラで、2.5秒で8分割の写真が撮影できるオモシロ製品だ。

筆者の持ち歩いているカメラ。左からソニーの「Cyber-Shot U DSC-U60」、カシオの「EXILIM Hi-ZOOM EX-V7」、富士フイルムの「チェキ instax mini 10」
ロモグラフィージャパンの「OKTOMAT」(写真提供:ロモグラフィージャパン)

ケーススタディ──OKTOMATの場合

 まずはデジタルカメラを使うことになる。大事な営業先と最初に会った時は、相手の目の前で名刺をパシャリ。そして、許されるならば相手の写真も撮りたいが、最近はなかなか難しい。そこで打合せの机に座った時に、カバンの中から書類を取り出す風を装い、OKTOMATをテーブルの端に何気なく置く。さらに奥の書類を探すように椅子の脇のカバンをかき混ぜる。その間、わずか数秒──「何だこのカメラは」。相手の視線はOKTOMATにクギ付けになる。

 ようやく書類を取出してOKTOMATを再びカバンにしまおうとすると、相手の7割は「そのカメラは何ですか」と来る。これは日本も海外も関係ない。「ああ、これはトイカメラです。8枚連写です」と、自然な感じで再び取り出し、相手に渡す。

 「へえ、初めて見ましたよ」「面白いですよ。それ、そこを押して1枚撮って下さい」と相手に撮影を頼もう。パシャリ。「じゃ、1枚撮りますよ」と間髪を入れずに、相手を数枚撮影する。パシャリ、パシャリ。「できたら持参しますが、ピンぼけでも許してくださいね」と言っておく。

 「いやあ、ありがとうございます」──これで再訪の立派な理由ができた。ここまでやってから、仕事の話に入ろう。ちなみにOKTOMATを含むトイカメラにはいくつか種類がある。雑談用雑貨にどれを使ってもいいが、できるだけ奇抜で原色のプラスチックのカメラが目立つ。

こんな感じで撮影できる(写真提供:ロモグラフィージャパン)
動きのある写真が面白い(写真提供:ロモグラフィージャパン)

ケーススタディ──チェキの場合

 これがチェキの場合だと、使い方が少し変わる。もう少し親密になった営業先や、自社の役員の知り合い(超重要顧客)がターゲットだ。例えば、役員や上司が同行するようなアポイントで仕事の話が終わった後、「さあ、そろそろ帰ろうか、君」と同行の役員。「ちょ、ちょっと待って下さい」と取出すのがチェキだ。「なんだ。それは」と、自社の役員ですら尋ねる。「せっかく大切なお客様にお会いできたのですから、ぜひとも記念撮影を……」と乞う。

 自社の役員と先方を机の前や応接間の立派な絵の前に並んで立たせて、記念撮影する。その時に2枚撮影することを忘れてはならない。先方に1枚、自社の役員に1枚それぞれ記念に渡すのだ。即時現像できるインスタントカメラの強みを活かした素晴らしいテクニックである。

 チェキで撮った写真には、下部に白い余白がある。特に海外でのダメ押しは、この余白にサインをもらうことだ。2枚の写真に記念撮影の日付を書き、お互いにサインをして、相手にも渡す。

 ちなみに余白部分はツルツルだから、できれば水性ボールペンは避けたい。ゲルインクボールペンか油性ボールペンを使おう。筆者はパイロットのゲルインクボールペン「マルチボール」を利用している。

 写真をうまく使えばビジュアルで訴えることが可能だ。言葉だけ、テキストだけの説明よりも、印象をグッと深めることができる。場合によっては、いつまでも机に飾ってくれたりすることもあるのだ。


 1点だけご注意を。最近の問題は、カメラを持ち込めない事務所が増えてきたこと。撮影前には必ず相手の許可を得よう。

今回の教訓

印象度アップにカメラの画素数は関係ない──。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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