自分も苦労しているならほかの人も苦労しているはず──CSSEZ・クボケーさん田口元の「ひとりで作るネットサービス」探訪(2/2 ページ)

» 2007年09月03日 12時35分 公開
[田口元,ITmedia]
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 もっと自分の思い通りにOpenPNEをカスタマイズしたい──。そう思ったクボケーさんは、OpenPNE.jpのコミュニティに参加し、徐々にプログラミングへの理解を深めていく。「ここをいじればこのファイルが呼ばれるのだな、ここを変えれば画面が変わるのだな、という風に1つずつ試していきました」。OpenPNEのコミュニティにはプログラミングに詳しい人も多く、分からないところは教えてもらいながら、さらにカスタマイズを進めていった。

 「せっかくなので長崎のSNSを作ろう」。そう思い立った。OpenPNEをもとに「長崎!長崎!」を作り上げる。地元長崎の人が交流するためのSNSである。作ったからには多くの人に使ってもらいたかった。地元メディアである長崎新聞にプレスリリースを送るなどの活動から、現在は1000名を超えるメンバーが「長崎!長崎!」で交流を深めているという。

 「自分の知らないメディアにはプレスリリースは送りません」というクボケーさん。普段から慣れ親しんだメディアだからこそ、「どうすれば取り上げてもらえるか」が分かっていた。「長崎!長崎!」の場合はコンピュータという言葉や技術用語を使わずに「地域情報で盛り上がっているサイト」という位置づけでプレスリリースを送付して取り上げてもらった。

 ただ、OpenPNEを元にカスタマイズを進めていくうちにどうにもやりにくい、と感じるようになる。「それならフレームワークを使えばいいんじゃないかな」。──OpenPNEコミュニティのメンバーにそう勧められ、自分で調べていくうちにたどり着いたのがCakePHPだった。

 「それでCakePHPを勉強してみたのですが、どうにも難しくて(笑)」もっと手軽なフレームワークがないかと方向転換して見つけたのが、PHPの超軽量フレームワーク「ちいたん」だった。

 今度は簡単に理解できた。すぐにいくつかのサイトを作ってみた。作れば作るほど理解を深めることができた。技術力もあがってきた。ただ、問題が1つ。それが冒頭でも紹介したデザインの問題だった。

できそうにないことはすっぱり諦めて『そうできないことが仕様』と割り切る

 「最初はフリーのデザインテンプレートを使っていたのですが。そのまま使うのってなんだかカッコ悪いですよね(笑)」。ほかにもそう思っている人は多いはず。ほかの人を巻き込んでデザインを共有し、自分好みに簡単にカスタマイズできるツールを作ればいいのではないか──。

 「ちいたん」でサイト作りにも慣れていたクボケーさんにとって、CSSEZが目指しているシステムの仕様には、それほど高いハードルを感じなかった。CSSEZの構想が固まった瞬間だった。

 結局、たった1カ月半でCSSEZのリリースまでこぎつける。開発するときの戦略は「できそうにないことはすっぱり諦めること」だったという。「とにかく初心者なので何を使ったら何ができるのかが分かりません。Javascriptのライブラリは「moo tools」を使っていますが、moo toolsとPHPでできそうにないことはすっぱり諦めて『そうできないことが仕様』と割り切ることにしました」

 リリース時には管理者ブログも開始した。このブログは開発にまつわるお知らせを発信するという目的以外にも狙いがあった。このブログのデザインテンプレートはCSSEZを使って作っている。CSSEZの動作テストも兼ねているのだ。CSSEZに機能の追加や変更をしたあとには、必ずこのブログを使ってテストを行っているという。

 「長崎!長崎!」でのノウハウも活かし、サービスをリリースしたあとには有名ブログにプレスリリースを送付した。プレスリリースも通り一遍の内容を一斉送信するのではなくて、そのメディアに合わせて「どうしたら取り上げてもらえるか」を考え抜いてから送った。

 その結果、普段から自分が読んでいるブログで自分のサービスが取り上げてもらえた。「長崎にいることもあるかと思いますが、有名ブログの人は僕にとって雲の上の存在です。自分のサービスが載っているのを見たらもう本当にうれしくて、うれしくて」。クボケーさんは満面の笑顔でそう教えてくれた。

Firefox Portable、そしてThunderbirdでGmail

 クボケーさんが普段からよく使っているのは「Firefox Portable」(7月20日の記事参照)。米国の大学では移動が多いので、どこでも自分の環境を持ち歩けるPortable版をUSBメモリに入れて使っている。メールはGmailを「Thunderbird」経由で利用している(3月9日の記事参照)。スケジュールは「あまり予定が入っていないので」頭で覚えており、予定表で管理してはいないという。また開発環境はApacheとPHP、MySQLがセットになっているXAMPPを愛用している。

 コマンドランチャーの「パス窓」も愛用中。数文字打ち込むだけでささっと目的のアプリケーションを起動できる軽快さが気に入っている。

 アナログツールではマインドマップを多用している。そうとは意識せずに昔から使っていたという強者だ。学校の授業では気になるキーワードをつなげてメモを取っていた。友人に「それってマインドマップ?」と聞かれるまでマインドマップの存在を知らなかったという。

 「マップを書いて散文的にアイディアを広げていくと、そこにいくつかの論理的な筋道が見えてくるのです。問題の解決方法が複数見つかるときもあります。CSSEZの仕様をまとめたり、新しいアイディアを考えるときなど、何でもマインドマップで処理していますね」

アルバイトをして購入したシャープのノートPC「MURAMASA」と、マインドマップがページいっぱいに書き込まれたメモ帳

 ビジネスと政治に興味がある、というクボケーさん。米国の大学で自分の興味のある分野を探しつつ、ちょこちょことプログラミングを続けていくという。「一度ハマると、抜け出すのが難しいぐらいのめりこむ性格ですね」と自己分析するクボケーさん。OpenPNE、ちいたん、CSSEZの次に彼が“はまる”テーマに注目していきたい。

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