【番外編】開発合宿で出会った3人が作ったお小遣い帳田口元の「ひとりで作るネットサービス」探訪(1/2 ページ)

今回の「ひとりで作るネットサービス」は、番外編として「チームでつくるネットサービス」を取り上げる。会社の枠を越えて集まった3人が作ったネットサービスとは? その企画、開発、運営のウラにはどういった苦労があったのだろうか。

» 2007年10月03日 00時50分 公開
[田口元,ITmedia]

 「このお小遣い帳を使っていたら、先月の支出が先々月の支出より4万円少なくなりましたよ」──。いいめもプロジェクトの代表である鶴羽佳秀さん(27)は笑いながらそう教えてくれた。

 自分たちが本当に使うサービスを作りたい……そう強く願っていた3人が作ったのが「いいめも おこずかい帳」である(8月28日の記事参照)。メールだけで簡単に毎日の支出をメモしていけるサービスだ。「ランチ 800」といった具合にメールに書くだけで、今月トータルでいくら使ったかを教えてくれる。

 たったそれだけの機能だが、使っていると「あと少しで支出が2万円を越えてしまうからこれは買わないでおこう」という心理が働くという。冒頭で触れたように、そうした小さな積み重ねが、鶴羽さんの「月4万円の節約」に結びついたという。

 ほかのメンバーはシステム開発を担当する古川大輔さん(31)、マーケティングや広報を担当する北村孝之さん(25)の2人だ。年齢もバックグラウンドも違う3人が出会ったのが「大手町ビジネスイノベーションインスティテュート(OBII)」と呼ばれるビジネス研究会であった。

ミーティングは古川さんの自宅で行われることも多い。ホワイトボードは必須アイテム

プログラミングができなくても“開発合宿”

 OBIIは「何かを変えたい!」と願っている社会人、大学生を支援する研究会で、定例のミーティングのほか、ビジネス創出を目的とした開発合宿も開催している。

 鶴羽さんもWeb製作会社に勤めながらも「何かを変えたい!」と思っていた1人だ。IT系の異業種交流会にもしばしば出席していた。そこで出会った仲間たちと、夜遅くまで「こういうアイデアはどうか?」「こういうサービスがあったらいいと思う」と熱い議論をしたことも1度や2度ではない。

 ただ、自分には開発のスキルがないことも分かっていた。「Webのコーディングはできますが、プログラミングは自分ではできません」。エンジニアが行う開発合宿には興味があったが、プログラミングのできない自分が参加してもしょうがないと諦めていた。

 ただ、たまたま見つけたOBIIの開発合宿の告知文には「プログラミングができなくても企画で参加も可能」とあった。すぐに参加を決めた。そこで出会ったのが古川さんと北村さんだ。

 古川さんは組み込み系のソフトウェアエンジニアである。中学のころからプログラミングを始め、就職してからはLinuxにはまり、自宅サーバを構築したりしていた。仕事の合間にPerlでWebサービスを作ろうと思ったこともあったが、どうにも最後まで仕上げることができずにいた。「やはり開発は一気にやらないと。開発合宿に参加してみればいいのではないだろうか──」。そう思った古川さんが見つけたのがOBIIの開発合宿だった。

 北村さんは学生のころから起業に興味があった。学生のころには「花をガチャガチャで売る」というビジネスモデルを考えつき、ビジネスプランコンテストで優勝もした。現在はIT系企業で企画の仕事をしているが、将来の起業のためにいろいろなところに顔を出したいと常々考えていた。そうしたときに知ったのが普段読んでいるブログ「ガ島通信」で紹介されていたOBIIの開発合宿。もちろん鶴羽さんと古川さんが見ていたものと同じものだ。

賞からは漏れたが──「絶対、俺たちのアイデアの方がいいはず」

 OBIIの開発合宿では、参加者が「自分はこういうものを作ってみたい」というアイデアをまずはプレゼンテーションする。そのアイデアを聞いた参加者がチームを組み、ビジネスモデルを作り上げていく。そのプレゼンで鶴羽さんは「いつでもどこでもメモできて、それを自由自在に取り出せるツールを作りたい」という想いを発表し、古川さんと北村さんをチームに加えることに成功した。

 2日間、そのアイデアを実現するためにどうしたらいいかを議論した。途中、OBII事務局からは厳しい突込みが入った。「このサービスはどうやって儲けるの?」「誰がターゲットなの?」「本当に使う?」。答えに詰まりながらも、さまざまな側面からサービスを検証していった。

 合宿最終日には最終報告会があった。事務局が選んだ優秀なアイデアには賞が贈られたが、鶴羽さんチームは選ばれなかった。

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