『三色ボールペンで読む日本語』などで有名な齋藤孝氏。彼が提唱する3色ボールペンは、通常とは異なった色の組み合わせが特徴だ。この齋藤メソッドを市販のボールペンで実現するには――。
『三色ボールペン情報活用術』や『三色ボールペンで読む日本語』などの書籍で有名な齋藤孝氏。彼のボールペン活用術は「齋藤メソッド3色方式」と呼ばれる。書籍や資料の整理から手帳の書き込みなど、さまざまなことを3色で分類して活用する方法だ。
情報を自分の中にいったん「くぐらせ」、頭を整理しつつ同時に活用していくという彼の方法論は、それ自体がGTDにも劣らぬ手法なので、そこは彼の著書をぜひ読んでいただきたい。
筆者は彼の言う「技化」という言葉が、「hack」の本質と実に深い関わりを持っていると考えている(この話については今後、詳しく述べたい)。この本を読んで以来、筆者も自分なりに実践しているが、齋藤メソッドにはちょっと特殊な文房具が必要だ。
最も重要なツールは、当然「3色ボールペン」だ。しかし、この3色ボールペン、一般に市販されているものとは少し違う。齋藤メソッドで使う3色ボールペンとは、赤・青・緑の3色だ(通常は、赤・青・黒)。齋藤メソッドでは、この3色をそれぞれ下記のように使い分ける。
赤:客観的に見て、最も重要な箇所
青:客観的に見て、それなりに重要な箇所
緑:主観的に見て、面白いと感じたり、興味を抱いたりした箇所
『三色ボールペンで読む日本語』に付属するパイロットの特製3色ボールペンは、この3色で構成されている。このボールペン、店頭販売用も用意してはいるようだが、ほとんど流通していないというのが実情だ。
「じゃあ、赤・青・緑・黒で市販されている4色ボールペンでいいじゃん」。率直な読者はそう思うかもしれないが、齋藤メソッドは4色ボールペンだとダメなのだ。正確に言うと4色がダメなのではなく、4色ボールペンに含まれる「黒」が問題なのである。
齋藤メソッドでは、「黒」は思考を停止した色として、使用を基本的には否定している。4色だとどうしても「黒」を使いたくなる誘惑に駆られるが、それでは完全に齋藤メソッドを実践できない。すべてのことを赤・青・緑の3色に分けていくことが重要なのだ。
加えて、それぞれ別の色のペンを3本そろえてもダメ。1本のペンでカチッカチッと色を切り替えることが、脳の主観と客観のスイッチを切り替えることとシンクロするところが重要なため、3本別々のペンや、軸を回転させて色を変えるツイスト式のペンでは不採用とせざる得ない。
しかしこの特製ボールペン、インクが切れたり、壊れたりしたらどうしよう。伊東屋のようなごく一部の文房具店でしか見たことがないし、ベースとなっているパイロットの「フィードGP3」というペンは、油性ボールペンとしての書き味は申し分ないが、本体が少し太く、また筆記幅も手帳向きの極細がないのも不満だ。
そこで、代用品としてオススメなのが同じパイロットの「ハイテックCコレト」。これはゲルインクの3色ボールペンで、好きな色のリフィル(替芯)を選んでセットできるのが特徴である。替芯は色が15色で、ボール径が3種(0.3/0.4/0.5ミリ)。1本選ぶだけでも計45パターンと、豊富なバリエーションの中から選ぶことができる(3本の組み合わせは8万5140通り。同じ芯を複数入れる場合も考えれば9万1158通り)。
青だけでも、クリアブルーからブルーブラックまでの4色から選べる。手帳に細かい字を書く人にとっては、ボール径が0.3ミリのものを選べるのはかなり嬉しい。本体も直径12ミリと、3色ボールペンの中でも細めで携帯性も高い。
本体は2色用と3色用の2タイプで、3色用が157円。これに専用の替芯105円を3本入れて、合計472円也。フィードGP3が315円だから若干割高ではあるが、使い勝手も含めて、筆者はハイテックCコレトの方が断然良いと思っている。ただし1点だけ。ゲルインクは油性に比べてインクの減りがかなり早いので、換えのリフィルも用意しておく事をオススメする。
市販しているボールペンのインクは、大きく分けると油性・ゲル・水性の3種類。油性が最も古くからある一般的なインクで、粘り気が強く、比較的筆圧を要する。鮮やかな色のインクを作りにくく、カラーバリエーションには乏しい。水性はインクの流動性が良いのでかすれにくく、書き味は軽いが、極細タイプは作れない。またタンクが大きくなるので、多色タイプには向かない。
最近急激に性能が向上し、バリエーションを増やしているのがゲルインク。静止状態ではゼリー状だが、筆圧を加えると液状化するという特性があり、筆記時には滑らかで、乾きが早いなどの利点がある。油性と水性の中間にあたる適度な特性のため、極細タイプなども作れるし、発色の良い鮮やかなカラーバリエーションも多い。細身のタンクでも作れるため、多色ペンにも多く利用されているが、インクの流れ出し量が多いので、同サイズの油性に比べると、筆記距離は2分の1〜3分の1程度と短い。
ツイスト式の3色、4色もあるが、これは色の切り替えを片手で行うのは少し難しいし、頻繁に切り替えるのには向いていないので、齋藤式には向いていない。
このほか、あえて存在感のある筆記具を選ぶとすれば、ロットリングの「4in1」や、ステッドラーの「アバンギャルド」など、ノック式のものをオススメする。もちろん、これも、本来の設定色は、黒・赤・青の3色だから、その場合は、ほかの芯を入れる必要がある。
この場合、ギョーカイでは「マルチ」とか、「4Cタイプ」と呼ばれる替芯が利用できる。このサイズはかなり一般的なので、国産有名メーカーのほとんどが用意している。最近では油性だけでなく、ゲルインクタイプもあり、選択の幅は広い。ただし、このメソッドだけに関して言えば、やはりハイテックCコレトがベストチョイスだと思う。
文具 | 発売元 | 価格 |
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ハイテックCコレト | パイロット | 3色用は本体157円、リフィル3本315円(105円×3)。合計472円 |
1974年、香川県生まれ。図画工作と理科が得意な小学生を20年続けて今に至る。TVチャンピオン「全国文房具通選手権」で3連覇中の文具王。現在は文具メーカーに勤務、文房具の企画開発を行っている。2006年「究極の文房具カタログ」上梓。文具サイト「TOWER-STATIONERY」を主催。
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