日々のちょっとした行動が脳を鍛える──『脳が冴える15の習慣』5分で読むビジネス書

「脳トレ」の習慣を身につけるには? 時間的にも経済的にも負担にならず、人生を豊かにするための脳の15の鍛え方を脳神経外科専門医が説く。ビジネスパーソンの日常を変えるための一冊。

» 2007年11月27日 04時00分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

築山節『脳が冴える15の習慣』(日本放送出版協会刊)

 インターネットのブログを書くことも、脳にとって良い習慣だと思います。特に会話する機会の少ない人にとっては、貴重な脳トレの機会になり得るでしょう。

 人に読ませるからには、言葉の羅列ではなく、ある程度整理された文章になっていなければいけません。それを書くには、確実に脳の中の情報処理が必要です。

 「どうやったらこの話をより分かりやすく人に伝えられるか」「どう料理したらもっと面白く読ませられるか」ということを工夫すると、もっといいでしょう。何もしていなければ流れていってしまう体験の記憶が、整理され、より深く解釈され、脳に刻み込まれます。(p.120)


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 脳神経外科専門医である著者が、数多くの診断経験をベースに「脳にとって良い習慣」を身につけることを提案する。気が向いたときにだけ「脳トレ」を行うのではなく、習慣として生活に取り入れることで、その効果が「一生続く」ようにしよう、というのが本書のスタンスだ。

 そのためのポリシーとして次の2つが挙げられている。

  1. 時間的にも経済的にも負担にならない
  2. 脳に良い影響を与えられるだけでなく、人生がより豊かになる

 そのうえで、具体的に何をすればいいかが明確に示されている。いくつか例を挙げよう。

  • 夜の勉強は中途半端にやろう
  • ブログを書こう
  • 会話にたとえ話を混ぜよう
  • 失敗ノートをつけよう
  • アイデアを考える際には「誰の役に立つのか」をはっきりさせよう
  • 交友範囲を広げよう
  • 「できない自分」を人に見せよう
  • いろいろな役割を演じよう

 そして、これらがなぜ脳に良い影響を与えるのか、さらには人生を豊かにする上で役に立つのかが、分かりやすく解説されている。

 これらのうち、Biz.ID読者に特にお勧めしたいのが、冒頭にも引用した「ブログを書く」という習慣だ。ブログを書くことを習慣にすることによって、情報に対する姿勢が変わる。「いつか人に伝えるという前提」が生まれるからだ。この前提があることによって、情報に接した時に自然とその要点に意識が向くようになる。

 中高校時代に教師から「ここはテストに出るぞ」と言われれば、一瞬にして暗記モードになったという経験があるだろう。これと同様に、何か情報に接した時に「あとでブログに取り上げよう」という気持ちが起これば、脳はブログモードに早変わりするはずだ。

 ブログを含め、本書で紹介されているさまざまな習慣の共通点を挙げるとすれば、「使っていれば錆びることはない」ということになる。

 ショッキングな例だが「人をボケさせる確実な方法」として「一日中椅子に縛りつけて、壁だけを見させる」という方法が紹介されているのだが、こうしておくと一週間と経たないうちにまともな思考力が失われるという。

 また、著者は「現代人は小さな平面を見ている時間が長すぎる」と指摘し、その影響について警鐘を鳴らす。「小さな平面」とはテレビやPCの画面、携帯電話の液晶ディスプレイなどを指す。近頃は、電車に乗っても車内に設置されたディスプレイもあるため、よほど注意しなければ、目に入ってくるのは「小さな平面」ばかりということになりかねない。

BOOK DATA
タイトル: 脳が冴える15の習慣
著者: 築山節著
出版元: 大和書房刊
価格: 735円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: 一日のうちの大半を「小さな平面」を見て過ごしている人。

 「小さな平面」の特徴は、何もしなくても情報が次々と入ってくること。「壁」ほどではないにしろ、受動的にならざるを得ない。そこで、著者が勧めるのが散歩だ。歩いていれば、人は安全を確保するために目をキョロキョロと動かそうとするから、自然と立体的な情報を取り込むことになる。ブログの題材を集めることにもなり、一石二鳥といえるだろう。

 散歩の時間が取れなければ、朝夕の通勤時間をこれに当てるといいだろう。「小さな平面」から離れて、極力立体的な風景に目を向けるようにする。ブログで紹介したくなるような何か面白い発見が得られるかもしれない。

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