できるまでやっているか?── 『どんな仕事も楽しくなる3つの物語』5分で読むビジネス書

今の仕事に行き詰まりを感じているなら、本書が贈る3つの物語がきっと打開策になるだろう。講演を聞くかのように筆者の熱意が染み入る一冊。

» 2008年06月04日 19時41分 公開
[大橋悦夫,ITmedia]
表紙

福島正伸 著 『どんな仕事も楽しくなる3つの物語』(きこ書房刊)

 たまに、「ありとあらゆることをやったけど、成果が出ない」「万策尽きて、行き詰まった」という人がいます。しかし、本当にそうでしょうか? 本当に「ありとあらゆることをやった」「万策尽きた」と言うことは、できるのでしょうか?

 残念ながら、ありとあらゆることをやった人、万策を尽くした人は、いないはずです。手法は無限にあるからです。どんなに万策を尽くしたとしても、新たな方法はいくらでも考え出すことができます。それらに取り組んでいるうちに、いつか目的を達成してしまうことでしょう。(p.88)


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 大学卒業後に就職した会社をわずか数日で退社、「働く意味」を求めてとにかく会社を作って走り始める。以来、のべ20万人以上に研修・講演を行い、「人生が変わった」という声を集めるようになるまでの過程で、著者が行動と実践を通して学んできたことを3つの物語に集成したのが本書だ。

 紹介されている3つの物語に登場する人物は、特別な能力や才能に恵まれているわけではない。それでも、著者のファインダー越しに眺めてみると、そこには業種や職種の枠を超えた学びと気づきにあふれている。

 その3人とは、毎日元気よくあいさつをしてくれる駐車場の管理人、次の機会のために会話の内容をメモするタクシーの運転手、人の心までをも塗り替えるペンキ屋、だ。それぞれの物語の詳細については本書に譲るとして、物語の後に著者は「仕事が感動に変わる5つの心構え」を示す。

  1. 仕事の意味を考える
  2. ものごとを前向きに受け止める
  3. 自己原因で考える
  4. 自分の可能性を信じて、自分らしくやる
  5. 目指すことを、あきらめない

 これらは、どんな仕事にかかわっている人にも当てはまり、仕事に対する考え方に関するものであり、1つでも実践できれば“仕事に対する意識が変わる”という。

 見ていただければ分かるとおり、どれもシンプルに表現されており、1つ1つ事例とともに掘り下げられているため、すぐにでも実践できそうだ。また、自分だけでなく部下や後輩にも読んでもらえば思いを共有しやすくなるはずだ。

 ちなみに冒頭の引用部分は「目指すことを、あきらめない」からの一節。

BOOK DATA
タイトル: どんな仕事も楽しくなる3つの物語
著者: 福島正伸
出版元: きこ書房
価格: 1050円
読書環境: ×書斎でじっくり
△カフェでまったり
◎通勤でさらっと
こんな人にお勧め: 仕事に行き詰まりを感じている人

 実は筆者は学生時代に著者の福島正伸氏の講演を聴かせていただいたことがある。すでに就職活動を終え、残りの学生生活を満喫している時期ではあったものの、社会人になることに対する漠然とした不安を抱える身であった。それだけに、予定時間を30分以上超過しながらも熱弁をふるい続ける著者の姿はそれだけで若者を鼓舞するに十分なものであり、学生1人1人の質問に真摯(しんし)に受け答えする姿勢は、12年たった今でも忘れられない思い出となっている。

 本書は、飾り気のない文体であるがゆえに、著者の熱意がダイレクトに伝わってくる。講演を聴いている状況に限りなく近い形で、著者の思いに触れることができるだろう。

 仕事に行き詰まりを感じている人はもちろん、その予備軍にも一読をおすすめしたい。読後は、いつもの仕事が少し違って見えるようになるはずだ。

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